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【報道Check】法制審の要綱案をどう伝えたか? -共同親権問題

12月19日、法制審議会家族法制部会が開催され、離婚後共同親権の導入を含む「家族法制の見直しに関する要綱案(案)」が審議されました。
この記事では、各紙の報道の特徴と、その内容への疑問点についてお伝えします。



【時事通信】「選択的共同親権」「DVは例外」と印象付け

時事通信は、見出しに「選択可」を掲げており、あたかも、共同親権を自由に選択できるかのような印象を与えています。
今回、提案されている制度は、父母の合意がなくても、裁判所が共同親権を命じることができる「非合意・強制型」共同親権です。
協議離婚の場合は、父母の協議で単独親権か共同親権かを選択できるとしています。しかし、その選択が一方による強制等がない「真摯な合意」であったかを確認する術はなく、自由な選択を保証する制度ではありません。

また、時事通信は、現行法への批判として「一方から親権を奪い、親子の交流を断ち切る制度」「養育費不払い問題の要因となっている」との意見を掲載しています。
しかし、このような言説は現行法について誤った理解を広めるものであり、離婚後共同親権導入の立法事実となりません。

【産経新聞】「原則的共同親権」「DVは例外単独親権」と印象付け

産経新聞は、リード文で、「離婚後に父母双方に親権を認める『共同親権』を原則とする要綱案」と記載。本文でも、「裁判所に判断を委ねる場合は原則、共同親権とする」と書いています。
しかし、要綱案(案)では、「父母の双方又は一方を親権者と定める」とされており、「原則共同親権」とは示されていません。

また、「DVなら単独親権」との見出しも誤解を招くものです。
協議離婚でDV加害者が共同親権を強制することを防止する仕組みはありません。また、裁判離婚でも、被害者がDVを立証できなければ、裁判所が共同親権を命じるおそれがあります。

【NHK】試行面会は「虐待やDVのおそれがある場合は認めない」??

全般にテレビ向けのわかりやすい表現になっているためか、言葉足らず(不正確)な箇所が散見されます。
「DVや虐待があった場合は、単独親権を維持するとしています」と述べていますが、前述の通り、DV・虐待事案を排除する仕組みは明確になっていません。

また、試行的面会交流について、「虐待やDVのおそれがある場合は認めないとしています」と述べています。しかし、要綱案(案)では、「子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がなく」と記載されているに過ぎません。
「面会交流原則実施」運用(2012~2020年頃)では、DV・虐待事案でも面会交流が命じられてきており、DV・虐待事案が除外されるかは極めて疑問です。

【日経新聞】「子に虐待あれば単独親権に」??

日経は、「子への虐待などの恐れがあるケースは単独親権と定めるようにする」と報じています。しかし、協議離婚でも裁判離婚でも、虐待事案を除外できないおそれが強いことは、前述のDVと同様です。

また、離婚後共同親権のもとでも、単独で親権を行使できる場合として、「子どもの緊急の手術や入学手続き」を例示しています。
しかし、法制審議会では、「子の利益のために急迫の事情があるとき」とは何を指すのか、いまだ不明確なままであり議論が続いている状況です。

【共同通信】「家裁判断基準を明示」は言い過ぎ?

家庭裁判所の判断基準を明示したとの見出しは言い過ぎの感があります。
とはいえ、本文では、DV・虐待について、以下のように「大きな課題」として指摘しています。
「被害者側は『密室の出来事で、裁判所が訴えを認めないケースもある』としており、家裁が事情を適切に判断できるかどうかは大きな課題になる。」

【毎日新聞】共同親権より、祖父母の面会交流を優先する特異な報道

面会交流について「祖父母らも申立て可能に」との見出しは、関係者に大きな誤解を与えるものです。
祖父母による申立てについて、要綱案(案)では、「他に適当な方法がないときに限る」とされており、無条件に自由に申立てできるものではありません。
飯田記者は、「父母による面会交流の協議や申し立てが期待できず、他に手段がない場面での活用が想定される」と書いていますが、申し立てが広がればリーガルハラスメントの温床となることが懸念されます。

要綱案(案)の補足説明資料(資料35-2)では、「父母の一方の死亡や行方不明等の事情によって父母間の協議や父母による申立てが期待し難い場合に限定する趣旨」と説明されています。

なお、毎日新聞は、共同親権に関して疑義のある記事を一面トップに掲載するなど、この間、特異な姿勢が目立っています。
今回の飯田記者の記事も、共同親権については最後の一文で触れるにとどめ、祖父母の面会交流にスポットを当てる特異な記事です。


ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
法制審の要綱案(案)や、各紙報道については、こちらもご覧ください。


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