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離婚後共同親権の導入について是非の判断も含め、慎重かつ十分に国会審議を尽くすことを求める意見書(日本ペンクラブ女性作家委員会)

5月9日、日本ペンクラブ女性作家委員会「離婚後共同親権の導入について是非の判断も含め、慎重かつ十分に国会審議を尽くすことを求める意見書」の衆議院可決に強く抗議します。」を発表しました。

"DV被害者保護制度、あるいは養育費不払いへの罰則規定などが不十分な中、話し合われるべき順序は逆であり、DV被害者を追い詰める「共同親権」を拙速に成立させてはならないと私たちは考えます。"

日本ペンクラブ声明「国会の空洞化に抗議します」(2024.5.9)に関する意見書等 │ 日本ペンクラブ (japanpen.or.jp)


離婚後共同親権の導入について是非の判断も含め、慎重かつ十分に国会審議を尽くすことを求める意見書

 女性作家委員会では、ジェンダーの視点からイベントを重ね、今国会で審議されている「共同親権」についても太田啓子弁護士を勉強会の講師としてお招きし、学んできました。
「共同」という言葉が、良き面を印象づけ誤解されていますが、そうではなく、DV被害者の命すら危ぶむ法案だと考えています。それは、声明の通り、国会議論が拙速なためです。

 この民法改正の審議は、通常、家族法制の法制審議会では全会一致で採決されるところ、委員21人中3人が反対する異例のスタートでした。これまでに多くの当事者・支援者・弁護士・学校関係者・医師らが、反対しています。また、署名も23万筆集まっています。特に、423人の弁護士が「国民の行為規範としては極めて不適切であり、誤導により現場を混乱させることは明白」と反対を表明したことや、日弁連をはじめ全国各地の弁護士会も反対の意見書を続々と発表していることについては、つまり離婚の実態をよく知る人々が反対しているということだと理解します。

 仮に法案が可決し、施行された後の可能性として、離婚後のアビューズ(ポストセパレーションアビューズ post-separation abuse:元配偶者や親という立場からの付きまといや嫌がらせ)の増加が懸念されています。つまり「望まない親子関係を子に強いる」「子の意思が尊重されない」ということが起こり得ます。それ以外にも、「単独親権を行使できる要件の『急迫の事情』『日常行為』が不明確」「DV被害者の子連れ避難が難しくなる」「経済的・精神的DVなど第三者から見えにくいDVを証明できずに共同親権になる」「高校無償化、児童扶養手当、奨学金など、父母双方の収入合算により受けとれなくなる」などの問題があり、具体的な窮地に追い込まれる親子が出ることも予想されています。

 また、離婚後の親権について父母の協議で合意できない場合は家庭裁判所が「子の利益」の観点で決めることになっていますが、すでに人的・物的に不足している家裁での紛争が多発し、パンクする懸念も示されています。
衆議院法務委員会の参考人として意見を述べた岡村晴美弁護士も「権力の強い側しか利さない」「相談して決めることができる人には必要がなく、対立関係にある人ほど強く欲する制度」と指摘しています。本来、親にあるのは「権利」ではなく「義務」や「責任」であり、ましてや、元配偶者や子どもは所有物ではありません。

 離婚しても話し合いが成立する父母はすでにそうしているし、できない場合、その原因を第三者が正確に判断するのが難しいことは、素人でもわかります。そこに国の法律が介入すること自体が、前時代的であり、憲法24条との抵触も懸念されています。

 DV被害者保護制度、あるいは養育費不払いへの罰則規定などが不十分な中、話し合われるべき順序は逆であり、DV被害者を追い詰める「共同親権」を拙速に成立させてはならないと私たちは考えます。廃案を含め、慎重かつ十分な国会審議を求めます。

2024年5月9日
日本ペンクラブ女性作家委員会


なお、離婚後共同親権に関する声明などは、こちらにまとめています。


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