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「切り裂きジャックの告白」読了

「切り裂きジャックの告白 刑事犬飼隼人」
中山七里 著、角川文庫
紙の本での長さ:312ページ

中山七里さんの刑事犬飼隼人シリーズの1冊。

東京都内の公園で臓器をすべてくり抜かれた若い女性の死体が発見された。やがてテレビ局に“ジャック”と名乗る犯人から声明文が送りつけられる。その直後、今度は川越で会社帰りのOLが同じ手口で殺害された。被害者2人に接点は見当たらない。怨恨か、無差別殺人か。捜査一課のエース犬養刑事が捜査を進めると、被害者の共通点としてある人物の名前が浮上した――。ジャックと警察の息もつかせぬ熾烈な攻防がはじまる!

嬉しいのは、「魔女は蘇る」や「ヒポクラテスシリーズ」で登場した小手川刑事が登場したこと。もちろん、光崎検視官も。この本を読む前にはぜひ、上記2冊を先に読んでいて欲しい。それぞれがとても魅力的な人物なので、本の中で再開できて、なんだか久しぶりに友達に会えたような感覚があった。

事件の内容はショッキング。
しかも土地勘のある公園が舞台だからぞっとしない。それでも、追う刑事のキャラクターや心の動きがとても鮮やかに描かれていてよかった。彼らにも家族があり、人生があり、心がある。闇雲な追いかけっこをしているわけではなく、あるときは被害者に、ある時には被疑者に自分の心を添わせながら追求していく。

臓器移植、脳死を題材にした本は他にもあるけれど、この本もその危さと希望の両面を描いているところがよかった。

最後10%のページ内でのストーリー展開は、中山七里さんならでは。わかってはいるのにグッとくるものがあった。トリックやアリバイが中心になるミステリーではないけれど、とてもよい御本。

★★★★☆ 4.5


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