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ボードゲームのすゝめ

ボードゲームの歴史は、遺跡の発掘品によって、少なくとも紀元前3000年以前まで遡ると推定されている。(Wikipediaより参照)

古今東西に渡り、昔から人が遊びに掛ける情熱は変わらない。深い歴史を持つボードゲーム。私が人生を100回繰り返したとしても、残念なことに世界全てのボードゲームを遊ぶ事は不可能だろう。世界全土に広がる底なし沼である。

そんな広大な沼地に、何も知らず片足を突っ込んだのは大学2年生の時。
地元で遊ぶ場所と言えばカラオケぐらいしかなく、友達同士で集まれば、何をするかいつも頭を悩ませていた。Google先生に「暇 遊び」と検索するくらいには、遊ぶことに飢えていた。

Google先生が返してくれた答えは沢山あった。暇つぶしまとめサイト、のようなホームページだったように思う。スマホの画面を下から上に指を滑らせる。私はピタリ、と指を止めた。流れる文字の中、目につくものがあったのだ。

そう、「ボードゲーム」である。元々私はゲームが大好きだ。ゲーム、という言葉に心を惹かれるくらいには。

ホームページの少々短い説明文を読むと、「アナログでみんなで遊んで盛り上がれる」と書かれていた。皆で遊べるならちょうど良さそうだ。私はボードゲームを試したいという好奇心に突き動かされた。しかし、ここである不安に動きが止まる。
「果たしてこんな何も無い所に、ボードゲームが売っている店はあるのか?」
と。結果から言うと不要な心配だった。1軒だけだが、奇跡的にボードゲームを売っている店が見つかったのだ。

その日は授業と授業の合間が、買い物に行くには丁度良いくらいに空いていた。
私は思い立ったが吉日と、自転車で大学を飛び出した。

自転車を漕いで10分程度。意外と近い場所に私の求めている店はあった。どうやら、子供のおもちゃを売っている店のようだ。
私は気恥ずかしく、どこか落ち着かない心地だった。おもちゃで喜ぶ大人など、店員さんに怪しまれないだろうか。
いや、我が子のおもちゃは大抵、親が買いに来るものだ。と、気合いを入れ直した。さも自分の子供にプレゼントする用ですよ、と私は何でもない体を装った。

目当てのモノはどこだ。棚の間を目で忙しなく探す。ズンズンと、店の1番奥に足を運ぶ。
すみっコの一角に求めていたボードゲームは飾られていた。逸る気持ちを抑え、私は近いた。宝探しのスタートだ。数少ないお宝を1つ1つ手に取り吟味する。何せ初めて買うものなのだ、なるべく失敗したくない。

長い時間悩んだ末に、私が選んだのは「ニムト」というゲームだった。手のひらくらいの黄色い箱の表面には、青い角の生えた牛のシルエットが踊るように印刷されている。

もうすぐコレで遊べるかと思うと興奮が収まらない。スキップするような軽い動きで、レジまで持っていく。会計をしてくれた店員さんは
「保育士さんですか?」
と営業スマイルを浮かべてきた。
「え、違います。自分用で…。」
しまった、と口を噤んだがもう遅い。口から出た言葉は戻らない。店員さんは妙な顔をしていた。急に顔が熱くなって来た私は曖昧な笑顔を浮かべ、そそくさとその店から逃げた。

逃げ帰った先は、そこから徒歩3分程度の友達の家だ。ボードゲームを買ってくると予め伝えていた。

「お邪魔します」もそこそこに、黄色い箱を2人で囲みながら開封する。中には薄い説明書と、牛と数字が書かれたカードが104枚。

説明書片手にカードを並べていく。2人とも初めてだったので、こういうルールではないか?など会話しながら手探りでゲームを進めて行く。どうやら、列の6枚目のカードを置いてしまった時にペナルティとして自分が置いたカード以外取らなければ行けないらしい。最終的にカードに描かれた牛の数が少ない方が勝ちなので、これは手痛い。

ちなみに「ニムト」はドイツ語で「6枚とれ!」という意味らしい。いや、取ってはダメなんだよ。

ルールも分かり、段々とこのゲームの楽しさが分かってきた。これはもっと人数がいた方が面白い。LINEでもう2人呼び出し、ゲーム開始。

ニムトは1枚カードを伏せて出し、みんなで一斉に開示する。これが大変盛り上がり、カードを表にする度に「キャーっ」やら「ワーッ」やら悲鳴と拍手が挙がる。終わった頃には、脳からドーパミンやらセロトニンやらがドパドパ大量放出されていた。その余韻に浸り、思わず天井を見つめ放心してしまった。
私にボードゲームブームが訪れたのはこの時だ。

たった1つだったボードゲームは、本棚の一角から溢れるほど増殖した。友達とボードゲームを貸し出してくれる「ボードゲームカフェ」に行ったり、東京に行った時には専門店でボードゲームを漁ったりした。

私は瞬く間にボードゲームライトユーザーから、ミドルユーザーに進化した。

沼に片足所か、身の半分程持って行かれた。

最近の悩みは、大学の友達が皆県外に行ってしまい私の可愛いボードゲーム達が寂しそうにしている事だ。
ボードゲームは1人で遊べないのだ。

星数ほどあるボードゲームの中からお気に入りを1つ見つけて欲しい。

友人が家に遊びに来た時、待ち時間が暇な時。懐からボードゲームを取り出すと大いに盛り上がる事間違いなし。

目の前の空席に何時でもどうぞ。
私と盤上遊戯はいかがでしょうか。

おしまい

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