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私の名を呼ぶ

私には名前が3つある。親がつけてくれた名前と自分がつけた名前だ。

今時、名前が複数あるのは珍しくない。ネットリテラシーと言う点でTwitterやInstagramなどのSNSでは、一部を除き大体が自分で名前をつける事は推奨されているからだ。ネットが広く普及する前から、テレビに出るタレントや、楽しい話を提供してくれる漫画家などは皆ペンネームだ。

私の第2の名前を初めて付けたのは、ゲームだ。いや、正確に言うと名付けたのは私ではないが。

小学生の頃に任天堂から発売されたゲームのハード「wii」。
ゲームで遊ぶ前に自分の分身である「Mii」を作るのだが、その時に母が付けたのだ。それは「ありんこ」という小さな黒い昆虫の渾名。その日から私の渾名ともなった。

しばらくは表に出ないオフラインのゲームのみでの、私の名前だった。
高校生になり、お小遣いをかき集めWiiUとスプラトゥーンを購入した。スプラトゥーンには、タッグマッチという友達と一緒にオンラインで遊べるモードがあった。1人で対戦することに飽きてきた私は、思い切ってTwitterのタッグマッチ募集に飛び込んでみた。
ありんこさん、と他人から初めて呼ばれたのはこの時だ。

最初、呼びかけられた時は気付かずにワンテンポ遅れて返答していた事もしばしばあった。今となっては、外で突然「ありんこさん!」と声を掛けられても、何の違和感もなく振り向くだろう。

もう1つ、自分の名前として使っているものがある。
私が自分の絵を、人様に公開する時に名乗っている。「ひびき」というTwitterアカウントも最近、設立した。漫画家やイラストレーターが使う、本名のようなハンドルネームに憧れを抱いていたのだ。この名前で呼ばれることは滅多にないが、まだ「ひびき」ということに気恥ずかしさを感じる。

名前の由来は、私の本名になるかもしれなかった候補のひとつだ。母から、
「結構気に入ってたんだけどね〜」
と言われたのが妙に耳に残っていた。その内、苗字も考えたい所だ。

私の親から授かった名ではなく、勝手に名乗っているだけの第2の名前。

しかし、周りからその名で認識され、呼ばれ、返事をする。最早、偽名というには他人行儀すぎる。

私は複数の名前を持つ。だが、どれも本当の名前なのだ。

おしまい

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