開講!方言講座

ニュースキャスターは標準語。お笑い芸人は関西弁。そして私は、阿波弁を話す。

阿波弁と言われて皆様はどこの県の言葉だと思うだろうか。全く分からない方が大半だと私は推測する。
出身の話になった時に大抵の人は首を傾げるためだ。

県の名前では無く地方の名前を上げると
「あのうどんの有名な。」
「ああ、讃岐うどん食べに言った時に通ったよ。」

圧倒的強さだ、うどん県。
四国の印象は全てうどんの中に飲み込まれてしまうのだ。勝負しては居ないのに漂う敗北感、完敗だ。

私の故郷は四国地方の徳島県だ。四つある国の内、インパンクトの弱さでは1番を取れるだろう。行ったことない県ランキングで堂々の2位。1位はお隣の高知県である。ああ、悲しきかな四国。

徳島県について存在すら視認していなかった方が大多数と思うので簡単に紹介しておく。

人口は約72万人。ご近所さんの香川より面積は広いが、あちらは94万人。徳島の人口は年々減少傾向にある。

シャッター街が立ち並び、買い物は大抵車で移動だ。電車がないのだ、徳島は。代わりに電気で走らない汽車がある。電車が走っていないのはもう、ここだけだろう。

特産品は、すだち、ワカメ、鯛、さつまいもにレンコン、後は梨。

徳島県のご当地キャラはすだちくんだ。すだちモチーフの濃い緑の丸い顔。にっこり糸目で青のヒーロースーツに赤いマントを靡かせている。ゆるキャラらしい頭身低めな2頭身だ。

鯛やワカメが捕れるのは渦潮のお陰だ。黒潮の影響で新鮮な天然鯛や生ワカメがたくさんある。海沿いを車で走れば、ワカメ直売所が点在している。

徳島の鳴門(ナルト)市は世界でも有数の渦潮が見れる珍しいスポットである。大鳴門橋の下にはどうどう、と激しく音を立てながら荒れ狂う波が渦を巻く。その姿は圧巻の一言だ。だが、あまり有名では無いのが難点だ。他にも大自然を感じられる景色が美しい所が多数存在する。

大塚国際美術館では2019年紅白歌合戦の際に、米津玄師が大聖堂の絵画の前で歌っていた。これにより大塚国際美術館は収益が黒字になったらしい。
何故、年末の特別な番組で米津玄師が来たのか。米津玄師は徳島県出身なのだ。

珍しく大勢の人が集まり、賑わう一大イベントがある。真夏の夜の蒸し暑い中、太鼓や笛の音が鳴り響き人々は踊り狂う。笠を被った女とうちわを巧みに扱う男が入り乱れ、観客も思わず踊り出す。徳島県民のDNAに組み込まれた踊り、阿波踊りだ。
「踊る阿呆に、見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損!損!」
両手を上げて上下に振ればあなたも立派な阿波踊りが舞える事だろう。


ついつい長くなってしまったが徳島の紹介は以上だ。こうして書き連ねて見ると、自分が思ったより地元について知っており驚いた。

阿波弁、阿波。江戸時代、藩主がいた頃はそう呼ばれていた。そのためか、徳島弁とは言わず阿波弁と言う。

阿波弁にも地域差、というものがある。北と西で少し使う言葉が違うのだ。背のまるまったご老人達は会話を少し混じえるだけで、
「ああ、あんた西のもんかえ」
とどこの地区に住んでいるか分かるようだ。私はそこまでの領域には達して居ないので、阿波弁の一部をお伝えする事になるがそれはご了承願いたい。

さて、タイトルにもある通り今回は私の知る「阿波弁」を皆様に伝授しようと思う。昨今では方言をテーマにした漫画なども存在し、人気を誇っている。標準語圏に住んでいる方の憧れが周知されてきているのだ。

方言は「KAWAII」。方言を使わない方からすれば素敵な響きに聞こえる物もあるのだろう。

そんな需要にお答えして講釈垂れようという訳である。文章の為イントネーションまでは伝えられないが、これを読めばあなたも立派な阿波弁ビギナーになれる事だろう。

まずは例として会話文を見てみよう。

「あ!そんなまけまけいっぱい、コップに水入れたらまけるよ!」
「喉乾いとったけん、ようけ入れたんよ。あっ」
「ほなけんゆったで!あ〜あ、こんなにまいて…はようこれで拭き!」

この2人の会話を標準語に翻訳してみる。

「あ!そんなにギリギリいっぱいまで、コップに水を入れたら零してしまいますよ。」
「喉が乾いていたので、沢山入れたのです。あっ」
「だから言ったではないですか!あ〜あ、こんなに零して…これで拭いてください。」

まけまけいっぱいを使うときに、気をつけて貰いたいのは段階があるということだ。どういうことかというと、

「まけまけ」→コップの縁まで水が入っている状態
「まけまけいっぱい」→表面張力が張るほどコップに水を入れた状態。
「まける」→コップから水が溢れてる状態

まけまけいっぱいでは無いのにまけまけいっぱいを使ってしまうと
「まけまけいっぱいちゃうやん」
と不思議がられてしまうため注意して頂きたい。

まけまけいっぱいと同じような言葉も紹介しよう。

「とんぎってる」
尖ってるの最上級の言葉である。
三角定規を頭に思い浮かべて貰いたい。30°、60°、90°の1番刺さりそうな30°の部分である。
「あの人とんぎってるな〜!」
と言われれば相当なトンガリ具合だと言うことだ。基本的に人には使わないが。

阿波弁の接続詞は「けん」を使用する場合が多い。
私と会話した事がある方からは
「けんけん言ってる〜」
と指摘される程なので活用する回数が多いことは間違いない。

「だから言ったでしょ」は「ほなけん、言ったやろ」
「お腹空いてないからいらない」は「お腹空いてないけんいらん」
「いいから!いいから!取っておきな!」は「いいけん!いいけん!取っとき!」だ。

「〜だから」のような理由を文章の前に付ける場合、「〜やけん」「〜けん」になるのだ。

怒ってる時や文句を言う際に強調する表現もある。

「〜ちょっんで」
例えばいらない商品を勧めてくるセールスマンがいるとする。何度も何度も断ってもしつこく勧めてくる。
「それ、要らんっちょっんで!!!」
怒りの一言である。この一言には、
「それ、何回もいらないって言ってますよね、しつこいですよ。キレそうです。」
ぐらいの意味が込められてると見てもいいだろう。
「〜って言ってるでしょう」は「〜ちょっんで」だ。

もっと細かく分けると
「言ってる」は「ちょっ」
「でしょう」は「んで」

大阪人の「どつきまわしたろか」と少し近いものを感じる。

私が普段から喋っている特徴的なものを解説してみたが如何だったろうか。もっと詳しく知りたい!興味湧いた!という方はこちらの方言リストを閲覧するといいかも知れない。
https://dictionary.goo.ne.jp/srch/dialect/徳島/

私が使わない単語も出てくるが、徳島県民には軒並み通用すると思うので安心して欲しい。

私が方言で話していると真似してくる方も居て、とても愉快な気持ちで見ている。きっと他県の方言マスター達も訂正しつつ、温かく見守ることだろう。

標準語と阿波弁のバイリンガルな文化人を目指して行くのも一興だ。関西弁も使いこなせるトリリンガルでも良い。
「俺、阿波弁使えるんだ。」
と目を見開く周りに胸を張って挨拶をするのだ。
とんぎった人間になれること間違いなし。

楽しみにしとるけん。
待っとるよ。

おしまい

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