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魔法の乗り物

・・・✈︎・・・✈︎・・・
飛行機。
それはどこにでも連れて行ってくれる魔法の乗り物。

でも初めて乗ったときは、恐怖の乗り物だった。
結構揺れる?
耳キーンってなる?
ポテチ爆発する?
飛行機デビューは学生時代の修学旅行。
席につくとそわそわしながら周りを観察し、前に座る子の真似をしてイヤホンをしてみた。
「ありさ、音楽聴いてるの?」
「え?ううん、これで耳を保護するんじゃないの?」
爆笑されたのはいうまでもない。

だけど慣れてしまえばこっちのもの。
わたしにとっても、飛行機はどこへでも行ける夢の乗り物になった。

・・・✈︎・・・✈︎・・・
北海道に住むわたしは、道外へ行くときは基本、飛行機を利用しなければならない。
東京で開催されるイベントに参加するため、飛行機に乗ったときのことだ。

北海道は晴れ。だけど東京は雨予報。
着いたら天気が変わっているなんて、ちょっと不思議。そんなことを考えながら席へと向かう。
座席指定をせずチケットを買ったら、たまたま窓際の席だった。せっかくだからと、離陸を始めた飛行機の窓から外を見下ろしてみる。

道路を走る車がどんどん小さくなっていく。
意地悪言ってきたあの上司も、このミニカーを運転しているのかな。
どんな乗り物よりも、わたしは高く高くのぼっていく。
蔑んできたどの人よりも、わたしは上にいるんだ。
「おーい!みんなのこと上から見てるんだよー!」
操縦しているのは自分じゃないのに、得意気に心の中でつぶやく。

・・・✈︎・・・✈︎・・・
雲を突き抜けて綿をすべる。まぶしくてあたたかい。
そうか。当たり前だけど、雲の上では天気を感じないのか。ふかふかの白い綿を横目で眺めて目を閉じる。
うとうとしていたとき、ふと思った。
そういえば、わたしたちが元々いた場所は空の上って聞いたことがあるな。
そこは、あたたかくて不自由のないところ。
でもわたしたちはいろんな経験をしたくて生まれてくるらしい。酸いも甘いも味わいたくて、地球に降りてくるらしい。
ということは、嫌味な人間にも、意地悪な子にも、出会いたかったってことなのかな。苦しい悲しい気持ちさえも味わいたくて降りてきたのかな。
心が疲弊した分、目標にしたい人が見つかったり、大事な友達がいることの喜びに気づいたりしたもんな。

きいろい光に包まれる。あたたかな心で眠る。

・・・✈︎・・・✈︎・・・
飛行機。
それはどこにでも連れて行ってくれる魔法の乗り物。
わたしたちが元々いた場所にだって近づける。

着陸すると雨が降っていた。
どんより暗い、こんな雨の日も体験したかったんだな、自分。
この先も、地上での出来事をとことん味わってみようか。せっかく生まれてきたのだから。

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