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1ページの絵本

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たった一枚の絵。 絵本のページを一つ切り取り物語を書いています。 物語の結末は読み手が想像して欲ください。 いく通りもストーリーが生まれる 世界一短い絵本です。
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記事一覧

1ページの絵本(卒業の頃)

卒業の頃 卒業式の練習があって 音楽室でお別れの歌なんか歌うと もうそれだけで涙があふれちゃう。 気持ちをそらすために どうでもいいようなことを考えたり 眠くもないのに大あくびをして 「春は眠くなるよね〜」って 涙目をごまかしたりした。 大人になっても この季節はやっぱり嫌い。 何かがリニューアルされ 「新、なになに」っていう言葉が苦手だ。 新人、新入、新商品、新規・・・ 新しくしなくてもいいものや なじみの環境があって そこが居心地のよい私にとっては 追いやられ

1ページの絵本(暇なレストラン)

暇なレストラン ランチを食べたお客が帰って Missパセの仕事もひといき といっても朝からやってきたのは 鍛冶屋のジョンとリチャードだけ たった二人 やる気が無いのは Missパセだけじゃない コックのボブなんて この頃エプロンも着けやしない タバコをくわえてクロスワードに夢中 オニオンのスープや仔牛の煮込みなんて とびきりうまいのに どうしてこう暇なんだろう みんな考えるのもめんどくさい 塩パン4つと とびきりのスープで まかないを食べたMissパセ さあ い

1ページの絵本(草の波)

草の波に乗って サラサラとサラサラと 静かに 草の波に乗って船が進みます もの言えぬ子のもとに そっと そっと 行くのです 動物園の隅っこで泣いているバク 爪が痛むので眠れません 薬草を煎じた薬 じょうずに飲ませなくては ごみ箱をあさったカラス 街路樹の下 喉に何かがつまって泣いています やさしく やさしく とりましょう そして 今夜 虹の橋を渡る子 母さんとはぐれた子猫 もう動けません もう大丈夫 もう大丈夫 この船に乗って虹を渡りましょう みんな みんな おだや

1ページの絵本(ハッサムの笛)

ハッサムの笛 今夜も10時きっかりに鳴りはじめる 低く切ない笛の音 リンバルの木で作ったその笛は やさしくかすれた音を出す ハッサムの家の前には 時折足を止める村人がいる ドアの前にコインを置いていく人 ドアに背をあずけ夜通し聞いていく人 その笛を譲ってくれと言う人まで 村ではこの音色を知らない人はいない コンコンコン お客が来たようだ ハッサムは笛を置き ゆっくりと立ち上がりドアを開けた やあリドル 元気だったかい? リドルは森に住むきこり とても背の低い小さな

1ページの絵本(魔法)

魔法 このデカいカボチャで100人分のスープを作ったら 僕にかけられた魔法を解いてくれるって あの魔女が言うことを信じる? この姿にも慣れてきたし ここの暮らしもそう悪くない じゃあ ほかの望み考えても いくつもでてこない 僕の望みってなんだろう もしかしたら このカボチャを切る大きなナイフ? そんな望みしかでてこないなんて とりあえず作りながら考えよう

1ページの絵本(ためいき)

ためいき 今日は帰りが遅くなるって言う電話があって やりかけの夕食の支度も途中でやめた 段ボールに入っていたミカンを一つ こたつで通販番組を見ることにした 通販番組はおもしろい 繰り返し商品のアピールをして その良さを自画自讃して・・・ 私はそこに欠点を見つけるのが好きだ これ 結構重いんじゃない? 消耗品が結構高いじゃん! 安くてもこんなに沢山いらないわ みたいにね それでも時々ツボにはまって 買ってしまう 今日の商品は 「ピーリングジェル」 ぽろぽろお肌の角質が

再生

絵本「とうめいなたからもの」

心に余裕がないときがある どうしようもなく悲しいときがある でもね、ちょっと時間が過ぎたら 見えてくるものがある 心から人を大切に思うことは その人が笑ってくれること そしたら自分も幸せだった この本には1ページだけ 自分で好きなメッセージを書くことができます。 思いを込めて世界に一つの絵本にしてください。 楽天にて販売しております。

1ページの絵本(さわがしい午後)

さわがしい午後日曜日の午後は いつものように まんまるを横に ゴロゴロしながら小説を読む でも今日は違う 山梨の姉さんの子どもが遊びにきた どんな人も「子どもが好き」っていうのはないし 猫はおとなしく撫でられるなんていうのもない ほらほら始まったよ ムダに派手な猫じゃらしを持参 猫用のコスプレ服まである 座敷に逃げたいまんまるをしっかり抱いて 不精に笑う私 のんびりはオアヅケ