誕生2(長女の場合)

ふたたび病院に入ったgorio。 例によって分娩室で、疑いの目たっぷりにモニターされる。

しかし、今度ばかりは陣痛を示すグラフの曲線が 美しい山形を描き出す。

「ベッド足りないんだけどな~」 という気持ちがにじみ出ている助産師、しぶしぶという感じで

「それじゃあ、まあ入院ということで」

なんでもいいさ!どこでもいいさ!

だって、いきなりこんな苦しむとは思ってなかったから。 想像の中では、最初はちょっとずつ強くなる陣痛を感じながら 「いよいよだね~」なんてうなずき合いながら 助産師さんにも「いよいよですね!がんばりましょう!」 なんて励まされながら準備万端で入院、って感じだったもの。 今のgorioはフロ上がりでバスタオル首から下げたまんま。 このまま家に帰る気力なんてないからね。

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小一時間ほどすると、 先輩ママが分娩へ旅立ってベッドがひとつ空いたので、 いよいよ陣痛室、別名「苦しみ部屋」へ移動(順番逆ですけどね)。

しかし、そこはナースコールの装置もなく、 モニターする機械も壊れているのか付けてくれないというベッド。

なんでもいいさ・・・どこでもいいさ・・・

gorioはなんだか意識もうろう。 うわごとのように何かつぶやいている。

この姿、何かに似てるなあと思ったら、そうだ。 手に負えない酔っぱらいにそっくりだ。 つぶれちゃって動けないヤツ。

なんでも後でgorioに聞いたところによると、 陣痛は三つの痛みから構成されているらしい。 「骨盤が割れそうな痛み」「大事なとこが裂ける痛み」 「ひどい下痢のときのような下腹部の痛み」、それがいっぺんに襲ってくるって言うのだから 男子には想像を絶する。下痢だけは激しく共感できるけど。 とりあえず腰をものすごい力で押してあげると楽になるらしい。

すでに5分おきになっている陣痛がgorioを襲うたび、 無我夢中で腰を押す。

陣痛が来ると、gorioの腰が「ミシミシっ」と音を立てる感じで 硬直する。すげ~、なんだこれ!

旦那は「がんばれよ」と背中をさするぐらいで 何にもできないというイメージだったけど、 こりゃ、こっちもかなりの体力勝負っぽいぞ。 すでに手首はパンパンだ。

ふと気づくと、カーテン越しに、 同じような状況であろう妊婦さんの「スーっ、フーっ」 という、痛みに耐える息づかいが聞こえてくる。

あれ、最初は荒い寝息かと思ってました。ごめんなさい。 違うのね。そりゃそうだよね。

中にひとり、言葉にならない「雄叫び」(本当に雄叫び)を あげていらっしゃる方がいて、なんだか忍びない。 唯一意味がわかるのが「痛い」という単語だけ。 痛がり屋の僕は相当ビビりました。

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途中、助産師さんの内診が二回。

一回目は子宮口3.5cm。 二回目は子宮口6cm。

「ここからは早いから。破水したら叫んで呼んでね。 どっかにいるから。今日は混んでてねえ。」

って、おい。そういう場面はナースコールじゃないの?

そうか、ここはナースコール付いてないベッドだった。 まあ、なんでもいいっす。それどこじゃないっす。

そんなとき、gorioの母親が、腰を抑えている僕のために 「餃子」を買ってきてくれました。しかもホカホカのヤツ。

ここ、陣痛室。みんなゴハンが食べられず、 吐いちゃう人もいるところ。 そこへギョーザ (;゚д゚) ……

gorioは苦しみながらも心で母親に突っ込んでいたらしい。

隣を診ていた助産師さん、「ん?ニラの臭いが・・・」

急いで食うべし! みなさんごめんなさい!

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そんなこんなで三回目の内診でついに「子宮口全開大」!

ここまで来るとgorioとしては もう出したくてしょうがないらしい。 まさしく「ウ×コさん」のビックウェーブを耐え忍ぶのに そっくりの感覚なのだそうである! そうか、それは俺にもわかってあげられるぞ、gorio! ついさっき、キミをここへ担ぎ込んだとき 俺を襲ったあの痛みだな!?

そう思うと、俄然いっしょに闘っている気がしてくる。

すると助産師さんが、

「それじゃ、行きましょうか」

え?どこへ?分娩室?もう行くの? だってまだ前に並んでた人、たくさんいるよ?

22時、意外なほどあっさりと 妊婦にとっての「天国の扉」、分娩室へ。 ノンノン・ノッキノン・ヘヴンズドアー!

いよいよ、もつおとご対面間近!

(続く)

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