【236日目】食べるとアレルギー?食べないと荒れるギー


December 19 2011, 4:48 AM by gowagowagorio

9月23日(金)

さすが晴れ男と晴れ女の夫婦。今日は朝からピーカンである。やはりこうでないと南国らしさは感じられない。せっかく赤道直下に来たのだから、汗の一つでもかかないと気分が出ないというものだ。

気温が上がりそうな空を見て僕はなんだかホッとしていた。制御不可能ではあるものの、天気もまた、ホストとして気を使う部分である。

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朝食後、アキコとナツモを送り出し、さて、今日は何処へ行こうかと思案していると、カズがチーボーをプールで泳がせたいと言う。チーボーもそろそろ水に慣らしたい年齢になってきたのだが、日本では何かと気を使い、この夏もあまりプールに連れて行ける機会がなかったようである。

そこで僕はサーフボードを持ってS家をコンドのプールに案内した。波乗り仲間のカズに、僕の日々のトレーニングを体感してもらおうと思ったのだ。

しかし残念な事に、プールは昨日の雨で水温が下がっていた。だからチーボーが子供用の浅いプールで遊んだのは、ほんの10分程度だっただろう。カズにパドルを勧めたが、カズはほんの1往復もせずにやめてしまった。プールでパドルをするのは少々小っ恥ずかしいのだろう。当然だ。僕の感覚が麻痺しているだけなのだ。

着替えを済ませた後、S家とミノリを連れて目指したのはイーストコーストパークである。

パークに到着した時のS家のリアクションは、僕が初めて此処を訪れた時のそれと酷似していた。雰囲気は最高、沖のタンカーがなければ・・・というものだ。

加えてカズに関しては波があればなお最高という感想まで、僕と一緒だった。一通り景色を眺めた後、カズとトモちゃんは、チーボーを被写体に写真を撮りまくる。二人のうち、どちらかがカメラマンなのではない。タンカーだらけの海をバックに、チーボーにポーズを付けて、二人で同時に撮りまくるのだ。親バカここに極まれり。

しかし人の事を言えた義理ではない。我々も何度同じ事をしたことか。今回はそれを客観的に見る事ができた気分だ。撮影会が一段落したところで、前回僕のお気に入りとなった、四輪屋根付きの人力マシンをレンタルして海沿いをドライブする。チーボーもマシン前部の籠に収まってご機嫌だ。

僕はミノリを抱えていたため、動力は完全にカズに頼り、前回の僕がそうであったように、ドライブが終わる頃にはカズは汗だくになっていた。それでも、僕オススメのこのアクティビティは大層気に入ってくれたようである。

マシンをレンタルショップに返却するとちょうどお昼時だったため、タクシーを飛ばしてマクスウェルのホーカーに向かう。このホーカーで食べるのはもちろん、行列のできる中華粥、英語すら通じないローカル中のローカル店である。

S家がその行列へと並ぶ役割を担い、ミノリを抱いた僕は空いているテーブルを確保するという任務に就いた。

平日のランチタイムに三人の大人と一人の子供、一人の赤ん坊が落ち着くための席を確保するのは至難の業である。

ホーカーの中を二周してようやく確保したテーブルにリュックやカメラを置いて自分も座っていると、通りすがりのおじさんに「盗まれるからやめろ」と諭される始末だ。

周りのテーブルを見ると、確かに手慣れた地元のサラリーマンやOL達はポケットティッシュやハンドタオルなど、盗まれても極めてダメージが少なそうな物で席を確保している。

僕はカメラをリュックにしまい、そのリュックを自分の傍に置くと、その後、このテーブルを狙って寄って来た客達にひたすら「オキュパイド」と繰り返す事になった。

20分後、カズが苦労して手に入れて来たお粥はつやつやと輝き、生姜の効いた、如何にも旨そうな薫りを湯気とともに漂わせていた。

僕は抱いていたミノリにまず食事を摂らせる事にした。ミノリには特別に弁当を持ってきている。旨そうなお粥がお預けになるのは空腹に堪えたが、なに、熱々のお粥が適温に冷めるための時間と思えばいい。

僕はリュックからエリサの包んでくれたタッパーを取り出した。ところが。ミノリがまったく弁当を受け付けない。

体調が悪いのだろうか?いや、そんなヤワなタマではない。確実にミノリは空腹の絶頂にいるはずである。それなのに、僕が口元に差し出したスプーンを、ミノリは顔ごと捻じ曲げて全力で拒否する。これはどうしたことか。

僕はすぐにその理由に思い至った。捻じ曲げた顔、ミノリの視線の先に、湯気を立てたお粥があるのは偶然ではないだろう。

ミノリは、みんなが買い食いでホカホカのお粥を堪能しようという中、自分だけ冷めた弁当を食べさせられるのが嫌なのだ。何という自己主張。

ミノリの口をスプーンで追いかけると、まるで同極の磁石のようにミノリの顔が上下左右に動き回る。絶対にお粥を食べてやるという気迫のディフェンスだ。

やっかいなことに、お粥には生卵が投入されている。ナツモが1歳に満たない頃、料理に入っていたほんの少しの卵が原因でアレルギーが発現し、全身を発疹で腫らした事がある。僕にはそれが気がかりだった。

妹のミノリが同じく卵アレルギーを持っている可能性は大いにあり得る。しかし、僕が悩んでいるうちにミノリはとうとう不快な声で喚き始めた。その声が、悩んでいた僕の背中をいとも簡単に押した。

最初は、お粥の温度で固まり始めた卵がなるべく入っていない部分を慎重にすくって与えていた。予想通り、ミノリはピタリと泣き止み、先ほどまでの態度が嘘のようにぱかっと大きな口を開けて粥を出迎える。よほど美味しかったのだろう、ほとんど雛鳥のように、ミノリは繰り返し口を開け続けた。

お粥が減るに連れて、当然卵がない部分はなくなる。その頃になると、卵アレルギーの事はなんだかどうでもよくなっていた。出たら出ただ。と言うより、ミノリの場合は問題ないという根拠のない自信、いや、自分に都合のいい自信が僕にはあった。

お椀がすっかり空になってもミノリは未練がましくお椀を覗き込んでいたが、もう癇癪を起こすことはなかった。

腹ごなしにタンジョンパガーの裏手を散策した後、スマップ効果により日本人で溢れかえるマリーナベイサンズの屋上に登ったのだが、昼間はドレスコードなどないらしく、サンダルで入場できた。

屋上のクラブで一杯18ドル相当(うち、チャージ料10ドル)のアイスコーヒーを飲んでいると、眼下から挑発的なエキゾーストノートが響いてきた。今日から開幕するF1シンガポールGPのプラクティスランが始まっているのだ。

唸りを上げるモンスターマシンの破壊的なエンジン音に混じって、グラスが破壊される音が店内に響き渡る。どうやらチーボーが飲み終わったアイスコーヒーのグラスを倒したようだ。

ここはひとまずおいとますることにしよう。

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今日の夕食はアイオンのフードコートで食べた。

本当はディンタイフォンに行こうと試みたのだが、店に着いた時には既に長蛇の列で、チーボーが空腹に耐えられないため、残念がるナツモをなだめすかして此処に来たのだ。

この頃になると、特別二人でたくさん遊んだという訳でもないのに、ナツモはチーボーに対し、やけに先輩風を吹かせるようになってきた。混雑した店内で僕が席を確保すると、ナツモは僕に向かって「こどものおいす、もってきてあげて」などと言うのだ。

チーボーもチーボーで、ナツモの行動をフォローし始め、ナツモがストローで水を飲めばチーボーもストローを使いたがったりする。まるでほんの少し前までのコノミちゃんとナツモを見ているようだ。

そのくせ、帰り道でナツモは、チーボーが抱っこされているのを見ると僕を見上げて「つかれちゃった」と言う。お姉さんなのはほんの一瞬である。

抱き上げてやるとナツモはそのまま眠ってしまい、帰宅してベッドに置けば一丁あがり、だ。

チーボーもトモちゃんに抱かれて眠っていたはずなのだが、あちらは着地に失敗したようで、昨夜に引き続き、寝かしつけるのに遅くまで苦労していたようである。

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