【118日目】イーストコーストパークとトースト
June 24 2011, 7:35 PM by gowagowagorio
5月28日(土)
コーストラインにそって延々と伸びるサイクルロード。そこを行き交うサイクリスト、ランナー、ブレードランナーたち。ちょっとしたスペースでは太極拳に励む中高年がいる。フットサルコート、スケートパークもある。波打ち際には愛を語らうカップルももちろんいる。点在するカフェ。ヤシの木。潮風。カリフォルニアに行った事はないのだけれど、このビーチサイドの雰囲気は完全にカリフォルニアだ。
しかし、視線を水平線に向けるとそこは、このリゾート気分をぶち壊す、見渡す限りのタンカーで埋め尽くされている。
僕とアキコ、そしてナツモは、イーストコーストパークにブランチを摂りにやってきていた。ミノリは一応、病み上がりのため、可哀想だが留守番である。
「明日イーストコースト行こうよ」
滅多にイベントの提案をしない僕からの突然のリクエストに、アキコは敏感だった。
「これを聞き流すと、おとうちゃんのストレスが溜っちゃう」
と思ったそうだ。
イーストコーストに来るのは初めてではなかった。この、駐車場の車のようにタンカーが停泊している風景も知っていた。この風景さえなければ、ここは最高の雰囲気なのである。何しろ海がある。たとえ波がなくても、やっぱり海を見ると心が安らぐのだ。
しかし、育児休業を取ってからの4ヶ月、ここには来るチャンスがなかった。今日はキックボクシングの練習がオフの日で時間に余裕があったため、ふと行ってみようと思い立った。
今日は生憎の曇り空だ。だが、それが逆に功を奏し、暑くなりすぎず快適な気温となっている。
久しぶりに此処の砂浜を踏みしめた僕は、改めて波打ち際から水平線へ目を向けた。あいつらがウネリの妨害をしているのではないか、と思うほどおびただしい数のタンカーが浮いている。さすが、輸入大国。
それにしてももったいない。
地理的に、しっかりしたウネリは入ってこられない事は解っているが、波打ち際の浅い水深をキープしたまま、後50mほど水が内側に入って来られれば、サーフ可能な風波が割れそうな気がする。
今はオンショアだ。僕の目の前には、ウネリになりそうな水面のコブがいくつもある。しかし、それらのコブは水深が深い位置で消えてしまい、再び盛り上がった時にはもう、登り急斜面の波打ち際である。
実にもったいない。
どうにもならない大自然を相手にくよくよ考え込んでいると、「早くゴハン食べるよ!」とアキコに嗜められる。
コーヒービーンでトーストとチーズケーキ、コーヒーでブランチを済まし、しばらく海岸線を散歩することにする。
ナツモは、ビーチクリーンでもやるつもりなのか、ビーチに転がる空き缶、ペットボトル、マクドナルドの紙箱など、あらゆるゴミを拾おうと躍起になっている。
「これ、とっといてー」
イヤだよ、そんなもん。
ナツモから手渡されたゴミをそのまま放置するわけにもいかず、ゴミ箱を探してまとめて捨てる。結果的に軽いビーチクリーンである。
ビーチサイドにはカフェなどと共に沢山のレンタルサイクルショップが点在している。その軒先に、ひと際目立つマシンが大量に駐輪している。ピンクのフレームに付いている車輪は4つだ。
ペダルは2対搭載されており、2人で駆動させる仕様である。ハンドルもホイール型のものが2つ、ただし、生きているのは左側のハンドルのみ。そして屋根が付いている。一見、トゥクトゥクとか、ヴェロタクシーのようでもある。
「もっちゃん、あれうんてんしたい」
うん、俺もだ。1年ほど前に来た時には、あんなマシン、なかったはずだ。それが今日はどのショップの軒先にも大量に並んでいる。近頃のブームなのかも知れない。
ショップのスタッフに尋ねると、1時間30ドルだと言う。けっこう高い。車体が通常の自転車の3倍はあるから、値段も普通の自転車の3倍ぐらいなのではないだろうか。これはアキコのお許しが出ないな。
諦めかけたその時、アキコの声が響いた。
「OK!」
耳を疑った。それほどまでにアキコも乗りたかったと言うのか。珍妙なマシンに3人で乗り込み、漕ぎ出してみると、これが驚くほど快適だ。
多少のアップダウンはあるものの、ほぼ平地のコーストラインを、屋根付きのマシンで景色を楽しみながらクルーズする感覚は、TDLのアトラクションに乗っているようである。
ナツモはペダルに足が届かないくせに、マシンを漕ぎたがり、アキコの膝に座ってハンドルを握る。するとアキコの駆動力が死んでしまうため、僕が一人で漕ぐ事になる。
一人でこの重たいマシンと家族3人分の重量を担うのはかなりの重労働で、僕は間もなくロードレーサーを疾走させる輩に負けないぐらい汗だくになった。
それでも気分は爽快である。ナツモはもちろん、アキコまでが「これはいいね〜」とご機嫌だ。
今日はこの後も、ナツモを引き連れてバクテーを食べたり、グレートワールドシティで買い物ついでにソフトクリームを買ってやったりと、いつも以上に盛り沢山の日だった。ところがナツモは、ベッドに入ると
「きょうは、ばいくだけが、たのしかったねー!」
と悪びれもせず宣うのだった。確かにアレは、シンガポールに遊びに来る人にも自信を持ってお薦めできるアクティビティである。
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