【120日目】Moony
June 28 2011, 10:03 PM by gowagowagorio
5月30日(月)
ミノリのニックネームが「むにー」に定着しつつある。アクセントは最初の「む」にある。
これは、ミノリの豊満なほっぺたの感触を表現したコトバだが、最初は決してニックネームではなかった。ミノリのほっぺたを親指と人差し指ではさみ、「みのちゃん、むにー!」と言いながら、文字通り、むにっとつまむ。すると、ピノコが「アッチョンブリケ」と言う時の顔そっくりになる。
客観的に見れば、ほとんどいじめっ子のようなコミュニケーションの取り方だが、やられている本人は満更でもなさそうで、指を離すと埴輪のような顔で笑っている。ミノリが嫌がらないうちは立派な愛情表現である。
「みのちゃん、むにー!」を連発するうち、それがアキコやナツモに伝染した。代わる代わるミノリのほっぺたや腕や脚の肉をつまみながら、「みのちゃん、むにー!」の大合唱である。
こうなると、なんだか顔を見ているだけで「むにー」と呼びたくなってくる。こうして、名前に「む」も「に」もつかないのに、「むにー」がニックネームとなったのである。
グーグル翻訳の音声機能で近い発音の綴りを調べると、「mooney」がいいセンを行っていた。顔がまんまるでお月様みたいだから、ちょうど良いかも知れない。
ちなみに同じ発音で「moony」と綴るとオムツの商品名。辞書で調べると「事も無げ」と言う意味だそうだ。
ニックネームが「むにー」なのに、愛用のオムツがパンパースというのが少々心苦しい今日この頃である。
ナツモの、ミノリに対する愛情表現がいささか乱暴でありすぎる。
抱きつくだけならまだいい。ナツモはそこからヘッドロックに移行したり、チョークスリーパー気味に抱いた腕に力を込めたりする。腕を極めてるんじゃないかと思う事もある。
「ぱにぱにぽーん!」と意味不明な奇声を発しながらミノリに突進していくナツモは、もう質の悪い酔っぱらいにしか見えない。これは、ミノリに対するヤキモチの現れなのだろうか?
ミノリは日々行動範囲が広がって、手がかかるようになっている。それに従って、姉であるナツモは、待たされたり、独ぼっちで我慢させられたりする場面が増えて来た。それがストレスになっているのではないだろうか。
今日はそう思わせるのに充分な出来事があった。
それは夕食後の事だった。
ナツモは、床を這いずり回っているミノリめがけて突進したかと思うと、戯れているように見せかけて、ミノリの近くにあったバスタオルを蹴り上げ、ミノリの顔面に思い切りヒットさせた。僕はその瞬間を目撃した。どう考えても故意である。
ミノリの泣き声が響き渡る。まだ食卓にいた僕は当然ナツモを呼びつける。
「おい、ちょっと来い!」
僕の声が聞こえているにも関わらず、無視を決め込むナツモ。
「おい!今何した?オマエわざとやっただろ!」
ナツモと目が合う。僕を睨むその目は、軽い憎しみと悲しみが入り交じったようななんとも言えない色を宿していた。
だからと言って、故意にタオルをぶつけた事を許す訳にはいくまい。
「あれがどんだけ痛いか知ってるか?ナツモも同じ事されたいか?」
いつもよりキツい叱り方になったのがまた、ナツモにとっては大きなストレスになったのだろうか。寝る時間となり、下に置くと泣き出してしまうミノリを仕方なく腹に乗せたままナツモに本を読んでやろうとしていた時である。先程僕にこっぴどく叱られたにも関わらず、ナツモはミノリの脚を「ぱんちぱんち!」と言いながらグーで叩きだしたのだ。
僕はナツモの、半ば自棄クソにも見える行動にちょっと驚いてしまい、叱る事ができなかった。僕らは知らず知らずのうちにナツモの事を追い込んでいるのか?
「むにー、むにー」と言いながら、ミノリばかりを可愛がっていると思われているのか?ナツモが奇声を張り上げるのは、もっと自分に注目して欲しいが故の行動なのか?
自問自答しながらもナツモに本を読み聞かせる。今日は「しまじろう」の絵本である。その中で、色々な虫の幼虫と成虫の違いを学ぶコーナーがあった。
「なんでむしはこどもとおとなで、ちがうの?」
先程までの狂乱ぶりを微塵も感じさせず、ナツモが子供らしい好奇心を発揮する。
「虫だけじゃないよ、人間も大人と子供で違うよ。もっちゃんとおとうちゃんだって、全然違うだろ?」
「でも、おめめは、いっしょだよ」
こっぴどく叱った直後だけに、愛おしい一言だった。あれだけ言えば、憎まれてもしょうがないと思っていたのだ。厳密に言えばナツモは二重、僕は一重で、明らかに見た目は違うのだが、なかなか可愛い事を言ってくれるではないか。
多感な時期のナツモ、その言動に要注目の日々が続く。
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