【138日目】きしもと
July 12 2011, 8:43 AM by gowagowagorio
6月17日(金)
典型的な祖母と孫娘、そして母親の関係とはどんなものだろうか。孫娘のわがままをニコニコと何でも聞く祖母。そしてそれを咎める母親。
「もう、お母さん、そんなに甘やかさないでよ!」
そんな光景ではないだろうか。我が家では、少々様子が違うようである。
今朝、僕が慌ただしく朝の準備に追われていると、祖母の怒声が部屋中に響き渡った。
「アンタ、そんなわがままばっかり言ってるんだったらもう、そんなもん飲まなくていい!」
何事かと見に行くと、どうやらナツモがミロを飲みたいと言い(それ自体はいつものことだが)、ミロの缶を開けるのに、大胆にも祖母にフォークを取って来いと指示したらしいのである。飲みたいんだったら自分で取って来い、と祖母。ナツモはそれで愚図り出し、ミロの缶をテーブルにがんがんがんがん打ち付けていたために、祖母がキレたという訳だ。
今日に限らず、今までも何度かこのような場面があった。その度に、実の娘であるアキコ(と僕)が「あんたたち、甘やかし過ぎなのよ!」と叱られる羽目になる。
今日はアキコの両親はマラッカまで1日ツアーで不在だ。そしてアキコは休暇を取ったため、久々に夫婦水入らずでランチでもということになり、タンジョンパガーへ足を伸ばした。
ランチはマクスウェルのホーカーセンター内にある有名チキンライスとフィッシュポリッジ。さすが人気のホーカーだけあって、活気で満ちあふれている。この喧噪は、台湾の夜市に通ずるものがある。・・・まあ、台湾に行った事はないのだけれど。
昼食を堪能した後、せっかくなので僕としては初めて訪れたタンジョンパガーを散策することにする。チャイナタウンの極至近というロケーションと、その地名、先程のホーカーセンターのたたずまいから、僕は「もろ中国」っぽい街並をイメージしていたが、ちょっと歩いてみると、そこは、センスのよいショップやレストランが建ち並ぶクリエイティブな雰囲気の街だった。
東京で言えば青山っぽい雰囲気と言えなくもない。レオバーネットシンガポールのオフィスも此処にあるそうだ。子連れだとなかなかこういう散歩は楽しめないから、貴重な時間である。
まだまだ奥が深そうなタンジョンパガー、次の機会が会ったときのために、いくつか行きたい店に目星を付けておく。
しばし散策を楽しんだ後、PSカフェのアイスコーヒーで喉を潤し、大人時間を満喫して帰路に着く。
我々が帰宅したのとほぼ同時にナツモも帰宅する。ナツモは帰宅するなり、「はい、これ」と、ファザーズデーの手紙を僕に手渡してくれた。
色々と苦労や忍耐はあるけれども、こういう瞬間は心から顔がほころぶものである。ナツモは最近ひらがなを徐々に習得しつつある。この手紙にも何かを書き付けようと必死に頑張った後が伺える。
もしかしたら「おとうちゃん、だいすき」ぐらいのことが書いてある可能性もないとは言えない。
僕は期待に胸を膨らませて、ひらがならしき字の判別に取りかかる。・・・読める、ナツモの書いた字は、紛れも無くひらがなだ。いつのまにか成長しやがって。
涙腺が緩みそうになるのを堪えながら一文字一文字、目で追って行く。僕が捉えた単語は・・・「き、し、も、と」?
「ありお」でも「おとうちゃん」でも
「ありがとう」でも「だいすき」でもない。
「きしもと」である。
人物名なのだろうか?それとも・・・
父の日に関係しそうなあらゆる単語を素早く想像してみたが、ついに僕は「きしもと」と父の日との間に関連性を見出すことができなかった。
何故「きしもと」なのか。
ナツモに聞いた所で納得のいく答が帰って来るはずもない。
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ナツモは毎日味噌汁を飲む。味噌汁の具は毎回同じ、ほうれん草とえのき茸である。食事をしていると、いつの間にかナツモが隣にやって来て、つんつんと僕の腕をつつく。
見ると、ナツモはえのきの頭だけを唇から出して黙って突っ立っている。やれやれと思いつつも、僕はそれを「ぽち」とか言いながら押してやらねばならないのだ。
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