【145日目】育休中でもカンヌにゃ関心あるかんぬ


July 15 2011, 8:24 AM by gowagowagorio

6月23日(金)

アキコの会社の取引先であるレオ・バーネットが、「カンヌ・プリディクション・パーティ」なるイベントをやると言うので、無理を言って参加させてもらうことになった。詳細はよくわからないが、カンヌに出品されたリールを見る事は間違いないだろう。場所はデンプシー、スタートは19時となっている。

ミノリの世話はエリサに見てもらえばいいとして、問題はナツモだ。今日はお留守番ね、と言い聞かせても良かったのだが、絶対にごねるだろうと思い、実は昨日のうちに、STK家に預かってもらうようお願いした。エリサの存在といい、STK家の存在と言い、夜、夫婦で出かけられる環境がある事に感謝である。ナツモは完全にSTK家に馴染んでいるので安心だ。

17時、我が家の隣の幼稚園、チェリーハーツへカズマとキコを迎えに来たクミコさんに5階の窓から手を振る。

「おーい、今行くねー」

「いまいくねー」

ナツモはSTK家に行けることがやはり嬉しいようだ。張り切ってお出かけの準備をする。STK家にも豊富におもちゃはあると言うのに、せっせと自分のおもちゃをカバンに詰め込み、やや興奮気味に家を出る。

「ハイ、おててつないでー!」

我が家のコンドのエントランスからチェリーハーツまで、移動するのは僅か20mほどの距離だが、ナツモが所望するので手を繋いで歩く。駐車場ではクミコさんが、既に子供たちのピックアップを済ませて待っていた。

「なんか悪いね。あんまり遅くならないようにするから」

「いいのいいの、何なら夫婦で飲んで来れば?」

ナツモは自分がSTK家の車の、どのポジションに乗り込めばいいかさえも既に熟知している。僕らが会話をしている間に、自分からさっさと乗り込んでしまった。

ナツモを送り出した後は、僕が張り切ってお出かけの準備である。久々に整髪料を使い、久々にジーンズを履いて、久々にサンダル以外の靴も履いた。オフィスから来るアキコとは現地で合流である。

会場はデンプシーのHOUSE、フライデーナイトによく似合う、奥行き100mという広大なスペースを持つレストランバーだ。パーティはその一番奥にあるイベントスペースで開催されている。

会場に入ると、まずはゴージャスなビュッフェが目に入る。この会場の賃料だって相当なものだろう。最初に浮かんだ感想が「レオ・バーネット、潤ってるな」という下衆なものだったことに我ながらうんざりする。

ビュッフェをつつき、アキコの同僚と雑談をしつつ、スタートを待つ。目の前には巨大なスクリーン。プロジェクターの奥には、如何にもCDと言った雰囲気の、ダンディなメガネ銀髪ヨーロピアン。その推定ダンディCDとパーティの打ち合わせをする、推定コピーライターの、小太りなガンジー風メガネインド人。

広告制作の空気に触れること自体が、なんだかとても新鮮である。会場が85%程度の入りになった段階で、全員にリストが配られ、ガンジーコピーライターがマイクを取った。

軽い挨拶の後、パーティの趣旨およびルールの説明が加えられたが、僕が見る限り、彼はあまりプレゼンが上手なタイプではなかった。

ガンジーの言う所によると、

毎年恒例のこのパーティの趣旨はもう皆さんご存知でしょう。ルールは簡単。今年のカンヌにエントリーされた作品の中から40のリールを見て、より高い賞を獲得すると思われる作品を各自15個選ぶ。ブロンズの作品には25点、シルバーには50点、ゴールドには70点、グランプリには100点(正確なポイントは忘れたけれど)が与えられ、選んだ15個の作品の合計得点が一番高かった人が勝ち、

というものだった。優勝者にはiPad2が贈呈されるらしい。配られた上映作品のリストに目を走らせる。

これは・・・いいのだろうか。カンヌは既に各賞が続々と発表されている。僕はSNSを通して皆さんがシェアしてくれる情報によって、リストの中のいくつかが、既にゴールド以上を獲得しているのを知っていた。カンヌに関心が高い人ならそれらの情報を手に入れることは容易いはずだ。

しかし・・・そうか、今日招待されているゲストは、アキコのように、レオバーネットからすればクライアントの人々だ。皆が皆、そんなにカンヌに関心が高いとは限らない。

これは、スタートラインからアドバンテージを貰ったようなものである。目の前におぼろげながらiPad2がチラつく。いやいや、何はともあれ、邪念を振り払い、純粋にリールの上映を楽しむ事にしよう。

カンヌの作品を上映という形で観た事は日本でもあるが、ここまで盛り上がったことはまずない。爆笑、罵声、歓声、拍手。外国人という言い方はあまり好きではないが、彼らは、スクリーンに対していちいちリアクションがある。これは、どうしたってお国柄の違いと言うものを実感せざるを得ない。

おかげで想像以上に楽しめた上に、ほんの少しではあるが、久しぶりに仕事がしたくなった。40作品の上映を終えると、既に時計は22時を回っていた。本当はここからダンディCDやガンジーコピーライターとのネットワーキングを決め込みたいところだったが、我々はナツモを迎えに行かねばなるまい。

STK家に到着すると、子供たちは、コノミちゃん以外まだ起きていた。ナツモがいる事で自宅が非日常となり、興奮しているのだろう。逆にゲストのナツモは、もう眠さの限界だったようで、我々が到着して程なくリビングの床に突っ伏し、行き倒れのように眠ってしまった。

ナツモに着替えを持たせるのを忘れたが、コノミちゃんのパンツにワンピースを着ている。親子共々、フライデーナイトを満喫させてもらった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?