【140日目】父の日、祖父母の最終日


July 13 2011, 8:31 AM by gowagowagorio

6月19日(日)

ミノリのウンチの回数が半端じゃない。

オムツの中を覗くたびにウンチがある印象だ。食べる量に比例して出て行く量も多いのだろうが、1日5回も6回もするので呆れてしまう。ただ、下痢ということはなく、毎回健康的なよいウンチが出るので心配はしていない。

ミノリの食事は食物繊維が豊富なので、余計に排便を助長するのだろう。特に、メインの食材となっている紫芋などは、入って行くときと出て来る時がほぼ同じ状態である。紫芋が好物でオムツを開けるたびに紫色のウンチをするミノリは、偶然にも紫色の洋服がよく似合っている。故に、我が家では自然な成り行きで「ミノリのカラーは紫」という事になっている。

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今日はアキコの両親がシンガポール最終日ということで、二人がナツモを思う存分可愛がれるように、なるべく祖父母にナツモの世話を託す。

そう、決して、僕らが子供の世話をサボりたかった訳ではない。

手始めに、午前中は、ジイジとバビーとナツモの三人でタングリンモールへショッピングへと出かけて行った。ナツモはそこでステッカーを買ってもらい、更に、いつもは決して動かない、1ドルの車を動かしてもらたようだ。

三人が帰宅した時の幸せそうな顔を見ていると、何もしていないくせに、いい事をしたな、と勘違いするのである。

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今日は父の日ということで、僕のリクエストを聞いてもらい、穴場イタリアンのラ・フォルケッタへランチに向かった。

ところが、ナツモはその店が気に入らなかった。テーブルに着くや否や「ここやだー!」と駄々をこね出し、ナプキンを放り投げ、スプーンをテーブルに叩き付け始めた。アキコが辛抱強くナツモを諭す。

「もっちゃんは何が食べたかったの?」

「ちきんらいす」

ナツモとしては、先程、ジイジとバビーがタングリンモールのフードコートでチキンライスを食べさせてくれるものとばかり思っていたらしい。しかし、ステッカーを買ってもらい、1ドルの車に乗って喜んでいるうちにすっかりそれを忘れてしまっていたようだ。それをここへ来て急に思い出し、悲しくなったのだ。

その気持ちはよく解る。僕も子供の頃、母親が僕の知らないうちにデパートなんかに行ってしまっていると、無性に悲しくて母親が帰宅した時に駄々をこねたものだ。

「もういちどいく!いってよ!」・・・

それと同じような気持ちに違いない。もう(その日は)二度と其処に行けないと分かった時の寂しさ、悲しさ。子供にとって「またそのうち行くから」は全く理解できない戯れ言でしかない。子供にとっては、大人以上に「今こそがすべて」なのだ。

タングリンモールはラ・フォルケッタからさほど離れていない。仕方なく、ピザを食べた後、ナツモのためだけにタングリンモールのフードコートを目指す事にした。それにしても1枚25ドルのピザよりも1皿3ドルのチキンライスをご所望とは安上がりな娘である。

チキンライスを食べてすっかりご機嫌のナツモはさらに、帰宅した直後、ジイジとバビーにプールへ連れて行ってもらう。実に、いい事だ。

僕とアキコはその間、昼寝を決め込む。もう一度言うが、これはあくまでもジイジとバビーのためを思っての行動だ。祖父母孫水入らずの時間を提供しているまでである。

こうして最終日、ナツモはあらゆる我が儘を許してもらい、誰からも叱られる事無く満足の1日を過ごした。夕食後、ジイジとバビーを乗せたタクシーを見送ると、ある種の安堵感が僕を包む。よく知った仲とは言え、やはり、何処かで常に緊張していたのだろう。我々だけのリビングがやたらと静かに感じられる。

僕と同様に緊張が解けたためか、アキコが発熱した。恐らく昨日、エアコンが効き過ぎた寒いホテル内でずっとタヒチアンダンスの衣装だけで過ごしたからに違いない。タヒチアンダンスで上半身に纏うのはココナッツブラだけなのだ。

母親の具合が悪いと知ったナツモは、ご機嫌でアキコのお世話に励む。その行動が純粋な優しさから来ているのか、それとも、いつもと違うシチュエーションを楽しんでいるだけなのかは分からない。(限りなく後者だと思うが)

ナツモは、今までジイジとバビーが寝ていた子供部屋に布団を敷き、お茶を水筒に入れて持って来る。そしてアキコが先に寝入ってしまうと、ナツモは僕にポリポリを強要しながら、疲れた労働者のような溜め息混じりに呟くのだった。

「きょうはたいへんだったね、もっちゃんと、おとうちゃんとね。マミーのおせわしないといけなかったからね」

苦笑混じりに僕が答える。

「そうだね、マミーすぐよくなるといいね」

「うん、いっぱいねればいいんだよねー」

「むにーが夜中起きないといいけどね」

「そしたらさ、おとうちゃんがだっこすればいいじゃん。むにーがおきちゃったら」

上から目線でクソ生意気だが、一応は、母親想いなところを見せるナツモであった。  

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