【114日目】親の都合で怒鳴らない


June 21 2011, 10:40 PM by gowagowagorio

5月24日(火)

可能性の羅列。

風邪?

発熱はあるものの、いわゆる上気道の炎症による咳や鼻水などの症状は見られない。

RSウィルス?

このウィルスに犯された場合、やはり上気道の炎症を伴って呼吸が苦しくなるはずだが、そう言った様子は見られない。

デング熱?

ボタニックガーデンに行った際、ウィルスを持った蚊に刺されたのだろうか。それにしては発症までの時間が短い。デング熱であれば、潜伏期間はもう少し長いはずである。

突発性発疹?

高熱のわりに比較的元気なのが突発性の特徴と言われているが、ミノリは昨日に比べてぐったりしており、とても元気とは言い難い状態になってきている。

原因が見極められないまま、ミノリの高熱は続く。以前病院で処方してもらった解熱剤をスポイトで吸わせると、一旦は37℃台まで下がる。しかし薬が切れた途端、体温はリバウンドするかのように上昇し、先程とうとう39.7℃を記録した。

40℃を超える事になるのではと、流石に心中穏やかではない。突発性の場合、熱が下がらないと判断材料の発疹が現れないため、その可能性はまだ捨てきれないが、それにしてはあまりにも元気がない。

寝かせても、抱いても、どんな体勢になっても苦しそうで、見ていると不憫になる。せめてもの救いは、食欲があるという事だ。

ミノリは、熱にうなされては泣き、腹が減っては泣くので、一日中泣いているような状態である。

氷で冷やした濡れタオルをミノリの頭にあてると、ものの2、3分で、温かい蒸しタオルができあがる。今してやれる事は、そのタオルをこまめに交換することぐらいだ。

ミノリの看病に追われていると、ナツモの相手が疎かになりがちである。それはそれで少々可哀想だな、と思う。せめて、看病疲れでイライラしてナツモを怒鳴ることのないようにしたい。

思えば最近、ナツモに対して怒鳴る事が増えたな、と思う。それも、叱るというよりは、僕の都合で、ナツモを思い通りに動かすために怒鳴ると言うことが。

子供の動きは無駄が多い。当然あらゆる事に時間がかかる。そのせいで何かに遅刻しそうになったり、物事がスムーズに進まなかったりすると、非常にイライラさせられる。僕が怒鳴るのは大抵、そう言う時だ。

「早くしろ」、「それを今やる必要はないだろう?」・・・

そこには、ナツモの言い分や心情を考慮する余裕はない。育児休業を取る前、僕が時々シンガポールに来る程度だった時は、ナツモに対してとにかく甘い顔をしていた。一緒に過ごす時間が短かったため、それでいいと思っていた。叱る役割はアキコに押しつけていたため、ナツモの我が儘にも笑顔で付き合えたものである。

しかし、一緒に生活するとなると、そうはいかない。僕が叱らなくてはならない場面は否応なくやってくるのだ。

当初、僕はナツモを叱る事に対してとても臆病だった。何て事はない。あんまり酷く怒鳴りつけるとナツモに嫌われるのではないかと言うだけの理由である。まったく稚拙な理由だなと、今でこそ思うけれども、それは親なら誰もが持つ素直な感情だろう。

しかし、時が経つにつれて叱る事にも徐々に慣れて来る。そして、なんだ、ある程度怒鳴っても大丈夫じゃん、と悟ったあたりから、僕は、ナツモを思い通りに動かすために怒鳴る事が増えたような気がする。

今日も夕食の時間がやってきた。

最近は、ちゃんと食べないナツモに対し、いつも圧迫面接さながらのディナータイムを強いている。そういうのも、もうやめだ。思えば子供の頃、僕の偏食だって相当酷かった。それでも190cmオーバーまで育ったのだ。食べなきゃ食べないで別にいいか、ぐらいの緩い気持ちでナツモに声をかける。不思議なもので、こちらの物腰が柔らかいと、ナツモの態度も柔軟になる。

「もっちゃん、他にも食べるものあるでしょ」

「きゃべつとか、にんじんとかでしょ?」

「うん」

「ちゅるちゅるだけじゃなくてでしょ?」

「そうそう、よくわかってるじゃん」

そうなのだ。

僕が思うにナツモは、しなくてはならないと言われている事を、すでに頭では完璧に理解している。ただそれを行動に移すのが難しい時があるだけなのだ。機嫌が良ければ実行するが、機嫌によってはどうしてもできない。それが3歳児というものなのだろう。成長するにつれ、そのようなムラがなくなると信じたい。

まあ、あれこれ悩んだところで、すべては相手と状況あっての事である。これからも僕の都合でナツモを怒鳴りつける場面は多々あるだろう。その時、僕の中で「今怒鳴ってるのは俺の都合だな」とクールに判断できていればいいのではないだろうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?