見出し画像

これからの本の話 その1

新刊書店でなるべく本を買うようにして、Amazon等にお金が流れないようにしています。Amazonに恨みがあるわけではありませんが、やはり買うのであれば存続して欲しい書店で買うのが真っ当だと思っています。
正直年間300冊以上読んでいると全部買うのはとても不可能。以前はブックオフに頼っていましたが、今は主に図書館と新刊書店がメインになっています。
月に¥5,000は本を買うと決めているので年間で¥60,000位だと思いますが、実際はそれ以上に買っています。
しかし、この「新刊書店で本を買う」という行為は意識的に行わないと無理な事ですし、より得な方法があるのにそれをせず自分の懐から支払うという事自体、普通の経済活動ではまずあり得ない事だと思います。

3年前迄の僕の読書量は年間200冊程でしたが、図書館を利用することによって300冊以上に増えました。これは読みたい本をリアルタイムに読むことが出来る(新刊はこの限りではない)という事が大きいと思います。また、興味外で関心がある本も積極的に読む事が出来るので、結果守備範囲が広がり読書量の増大につながったと自己分析しました。
以前は新古書店で目に付いた安価な本を買い込み、順番に読んでいく方式でしたが、時間が経つと興味が薄れ、いわゆる「積読」になるパターンが非常に多かったです。
本にも鮮度があります。これは出版年度の話ではなく、自分自身の興味が今どこにあるのかという事です。
5年前に買って読んでいない本を手に取る可能性は非常に低く、やはり今興味がある本を読むという動作が一番読書欲をそそられると思います。
これは100年前の本であっても、今読みたければ「鮮度の高い本」となります。
図書館を活用する事によって、自分にとって鮮度の高い本を手にする事が出来るので、結果、身の入った読書をすることが出来ます。

図書館が新刊を無料で貸出することによって、新刊購入冊数が大幅に減っているという事が取りざたされていますが、そうとも言えるし、そうでは無いとも言えます。
これは、図書館で試しに読んでみようと思っている人が、借りることが出来ない場合に、全てを新刊で買うのかという問題です。そもそも限られた財布中から、少し興味があるだけの新刊をどれだけ買うかと問われれば、殆どの人は買わないと答えるのではないでしょうか。
誰も手に取らなかった新人の新刊は、もしかしたら名作なのかもしれないのに読まれる機会が無くなるのではないでしょうか。
全国で3,000館程の図書館があります。半分の図書館がある新人の書籍を買ったとしたら1,500冊の売り上げが確保されるわけです。
そして、試しに新入荷の本を借りた人がその本の評価をすることが出来る。とても面白ければ次は買おうと思うかもしれない。誰かに勧めるかもしれない。

ただし、新刊を即座に貸し出すことには違和感を感じています。有名作家の新作の貸出予約件数が1,000人待ちを超えているのを見ると、図書館が無料貸本屋と言われるのも無理は無いと感じます。
「発行から1年未満の本は貸し出さない」これが一番真っ当な仕組みではないかと感じています。1年という猶予があることによって、読みたい人は買うと思います。特に今は本屋大賞もあるので対象の本を1年待てない人は沢山いるはずです。

図書館という仕組みはとても素晴らしく、これだけ恩恵を受けていることに対して感謝しかありません。末永く続いて欲しいと思っているのですが、現状の非正規雇用職員の不安定な雇用形態はひそかに問題になっています。
単年契約で薄給なので、未来に展望を持つ事が出来ない。完全に公共事業の為、利益を生み出すことが出来ない「図書館」という形態が生み出している公的なワーキングプアです。図書館職員には僕自身憧れているので、図書館に行く度に羨望の眼差しで見てしまうのですが、そんなに単純な問題ではないのでありました。
そこで、前述の新刊に関して数%の利用料を徴収することによって、作者への還元、図書館職員の待遇改善に使用するというのはどうでしょうか。
学生や高齢者への免除さえ考えれば荒唐無稽とは言えないのではないかと考えます。
図書館法という、素晴らしい法律の改正が必要になりますが、図書館も作家も書店も全てを保全していく為には、利用者がどこかで負担をするべきなのではないかと考えています。

わが町は小さな地方都市ですが年間で430,000冊前後の貸出があるそうです。それだけの冊数が一つの市で動いているという事は、全国で言えば途方もない冊数が利用されていることになります。
本好きであればこそ、作家、出版社、書店、図書館が皆健全な状態で維持されていることを願っていると思います。これからデジタルに移行していくことは避けられない時代になりました。特に書店と図書館の存在意義が問われていく事は明白です。
本の世界は他の商材に比べて「文化事業」の側面があまりにも大きすぎる為に、金銭の話をする事を避けがちです。しかし、個人の頭から産み出された文章を無償で提供してもらうのが当たり前という前提で動いていると、気が付いた時には図書館という存在が消え去っている可能性があるのではないかと危惧しています。

そもそも読書人口が減っているという事に対して、新古書店があるから、図書館が新刊を貸すからという事は関係はありません。そもそも漫画雑誌を読んでいる人すら電車では見なくなったではありませんか。しかも右肩上がりであったブックオフですら陰りが見えてきました。
僕らが愛する「本」というものに対して何を出来るのか、真剣に考えるべき時が来ているのではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?