原稿即興曲「駄菓子の海の果てへ」

原稿即興曲「駄菓子の海の果てへ」

作:黒井羊太様&壱宮凪様 朗読:魚住アリナ
00:00 | 00:00
10月某日、都内にてオフ会ツイキャスの際に出来上がった即興リレー小説&即興朗読その➁です。
著者:黒井羊太様(Twitter: @kurohitsuji2015 )
   壱宮凪様(Twitter: @khX5299dPsWmO6E)
朗読:魚住アリナ(Twitter: @arina_telote)

~・*・~・*・~・*・~・*・~

「駄菓子の海の果てへ」

ラムネの海を泳いでいます。
僕はハッピーターンのボートに乗って、ポッキーを櫂(かい)にして進んでいます。
せっせせっせと漕ぐけども、どこまで行ったらいいものでしょうか。
夜空を彩(いろど)るベビースターの星々が、孤独な心を慰めてくれています。

目が覚めた時は粉末ジュースの砂浜でした。
呆然としていたけども、ここにはずっといられないことはすぐに分かりました。
だってラムネの海にあっという間に溶け出してしまうから。
手近にあったハッピーターンでこぎ出すしかなかったのです。


ベビースターが流星群となって
ラムネの海にふりそそぐと
ボートをコーティングする魔法の粉が
キラキラとかがやいて
ふわっと浮き上がり、ラムネの波しぶきを
足下にしきながら
ソース味の流れ星をつまみながらね


時々降ってくる酸っぱいほしうめを避けながら
進んで、進んで、進んでいきます。
時々降りしきる酸っぱい練り梅は避けられないので
口を閉じたままグッと耐え続けます。

もうどこにも辿(たど)り着かないんじゃないのかな
不安が心の中に、わたあめのようにフワリと降りてきた頃
遠くに小さく、しかし確実に長ーい
麩菓子(ふがし)の島が見えてきました


ハッピーターンのボートでたーん!と麩菓子島に降り立つと
ボートはパリンと割れてしまいました。

黒糖の土を踏みしめながらポッキーの櫂を杖にして
長い大地を歩いていくと
ポッカリと大きな穴があいていて

そこから声が聞こえてきます

楽しそうで
優しそうで

金平糖みたいなたくさんの素敵な声に導かれるまま
穴のなかへヒューっと落ちていきます

揺り籠みたいな暗闇に身を任せながら落ちていると
暗闇がバリバリと開いて
小さなプクプクの柔らかい手に抱きしめられて

ようやく旅の意味が分かりました

ラムネもポッキーもベビースターもなにもかも
美味しくなるための歴史探報

これからの時代を生きる
きみと出会うために生まれてきた

初めまして、袋の外の君
僕は
新作の駄菓子
どうぞ末永く、楽しく食べてね

~・*・~・*・~・*・~・*・~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?