大車輪物語 ~俺たちの轍(わだち)~ ②

(前回のあらすじ)

なんやかんやで漫才コンビ“大車輪”を結成した大本と元島。ネタ見せではウケたもののライブでは滑り散らしてしまう。その一方で、有村が当時組んでいたコンビ“あかね荘”は『自分の髪の毛で作ったミサンガを自分で食う人』のコントした後、解散した。



あれから数か月。大車輪は漫才を作るも評価されない時期が続いた。ネタ帳の1ページ目に書いた『2人でM-1決勝!』の文字が虚しく見える。

大本「どうもー! “大車輪”です。お願いしまーす!」
元島「最近気づいたんやけど、何でもねじったら良うなるな
大本「何言うてんねん!」


ウケない。

車輪が、空回りしていた。


元島「なんでや。なんでワシらの笑いが通用せえへんのや!」

大本「焦ってもしゃあない。2人で出来ることやっていこうや」

焦っているのは大本も同じだった。一人残った稽古場でつぶやく。

大本「このままだと人力舎に所属できひん。嫌や、そんなの嫌や! 俺たちは大車輪で、“お笑い”という名の道を、走り抜けるんや!

車輪が軋むように大本が泣く。


そこに、誰かがやってきた。


???「何しょげた顔してんだよ」

大本「……そ、その声は!」

有村「そんな顔してたら、笑いの神様が逃げてっちゃうぜ?」

そう言って有村が大本に投げたのはキットカット。そこには「頑張れ!」とメッセージが添えてあった。

大本「有村、ホンマええ奴やなぁ」


4月。人力舎の所属発表の日。一斉メールで所属芸人の一覧が送られる。大本と元島は、ファミレスで2人でそれを見ていた。

元島「ここまで頑張ってきたんや。絶対に大丈夫や」

大本「せや、な」

所属芸人は五十音順で発表される。大車輪は『タ行』にあるはず。文面をスクロールする。

キャプテンバイソン……サービスエリア……SLEEZE BLACK……大車輪……ノーテクノロジー……

大車輪。大車輪だ。大車輪があった!

車輪が、ついに回りだした。


そうして2020年7月、大車輪はついにプロの舞台に走り出していったのだ。


――しかし、プロの世界は甘くなかった。――


今回はここで終わりです。

それでは次回予告です。


【次回予告】

お願い、解散しないで大車輪!  あんたが今ここで解散したら、マネージャーさんや養成所の講師との約束はどうなっちゃうの? 持ちネタはまだ残ってる。ここを耐えれば、M-1に勝てるんだから!

次回、「大車輪 解散」

デュエルスタンバイ!


またそのうちです。


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