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わたしの旅暮らしをつくる #8|5/27-6/2

5/27

もう暑いから敢えて辛いものが食べたくなって、チェーンのインドカレー屋さんに行った。言葉の最後に「どうぞ〜」をつける店員さんは今日もいて嬉しくなった。こないだは店から出てすぐに忘れていた傘に気づいて持ってきてくれた、お姉さん。6月末までのクーポンを使おうと出したらそれと引き換えに、こちら7月まで使えるクーポンです〜と新しいものを渡された。また通わなきゃだな。

野菜たくさん。でかい茄子と赤すぎるトマト買った。


5/28

甘いものは控えめにしようと昨日決意したばかりなのに、Kちゃんの食べる大判焼きの匂いにつられて結局買いに行っちゃった。美味しいものは食べれるときに食べれるだけ食べとけ、と自分に言い聞かせてみる。5月末で今季は終わりって言ってたな、時間の流れは早すぎてこわい。気づいたら一日が終わっていることばかり。キッチンにある回すタイプのカレンダーの日付がもう少しで31になるから、またくるくると1まで戻すのか、その繰り返しなのか、とか考えて虚しくなる。

「名前つけたげなよ」「ケロちゃんはどう?」
安直すぎるね、と却下された。前よりでかくなった気がする。


5/29

散歩に出た。歩くか自転車か悩んだ結果歩いて海まで行った。涼しいと思っていたら暑くて、キヌヤでアイス買って菊ヶ浜に出たら海風が冷たくて、凍えながら食べた。
頭痛がするから薬を飲む。驚くほどぴたりと治るから不思議だ。自分の身体がロボットみたいに機械であることを時々想像する。バッテリーが減ったら切れる前に充電して、壊れたら修理する。パーツは取り換えられるけれど完全にもとには戻らないし、だんだん消耗していく。そのうちに動かなくなって、終わり。とりあえず騙し騙し生きてる。

お弁当屋さんのじゃないお弁当のテイクアウト、
なんて贅沢で幸せなんだろう…


5/30

5月の末で今シーズンの大判焼きは終了のつもりと言ってたから、最後はしっかり通おうと決めて今日も行く。ほんとに明日ぴったりで終わっちゃうのか聞いてみる。
 - 明日で終わりってことですか?
 いや、もう少しやる予定。
 - いつぐらいまでやってますか?
 6月の半ばぐらいまではやるつもり。やめられない事情ができてね…。
しめた、と思った。やめられない事情って何だろうね、材料発注しすぎて余ったのかな、来月半ばに大判焼きの予約が入ったのかな、とかKちゃんと考えてカスタードを食べた。


5/31

夕日が綺麗に見えそうなくらい綺麗に晴れている。海まで歩くには少しだけ遠いから、スタッフ共用のチャリがあったら夕日を見に行こうと思う。カギがないって一騒ぎしたけどバッグに入れたままだった。お騒がせしました。
今まで夕焼けだと思っていたのはほんとの夕焼けじゃなかったのだなとつくづく思う。わたしの知っていた、建物に照らされるオレンジ色はまだ本気を出す前の夕日で、沈む直前のひかりは赤かぶの漬物くらい赤い。光の加減で海の表情も変化していくのがおもしろい。

何度見ても惚れ惚れする、海のある風景。
まるまるとしたにゃんが気持ちよさそうに落ちてた。


6/1

隣の隣、くらいの町から友人が遊びにきてくれた。萩案内は大してできなかったけれど、運転する車の中、海を見下ろす展望台、わたしのお気に入りの船乗り場の堤防で、ひたすらに話した。ぐるぐると潜りながら思考するところが似ているしそれを聞きたいと思ってくれるから、内面にあるいろんなことがするすると、自分でもびっくりするくらいに出てくる。嬉しい。
ずっと、心の奥からうわぁーーーっと湧き上がってくるなにかがある。高揚感というか、なんだろう、ひとことでまとめてしまえばエネルギーのようなもの。魂をしっかり掴んで揺さぶってくる。瞬間的に発生するものじゃなくて深いところでふつふつと、でもたしかにある感じ。自分の内にある、輪郭を持たないそれに初めて少しだけ触れた気がする。
わたしにとって革命の日なんだろうなと思う。話し足りなくて最後に行ったジョイフルでとっくに冷めたポテトをつまんだことを、きっと忘れられない。

溶けている。白いひかりがあまりにも眩しい。
芋ってさぁ、冷めたら喉につっかえるよね、と笑った。


6/2

暑い日にアイスコーヒーを飲みに行こうと決めていた喫茶店にやっと行った。涼しげな見た目のレアチーズケーキが美味しくて嬉しくなる。お絵描きしながらゆっくりと過ごした。閉店間際でお会計をする。店内にはもう誰もいない。
「お勉強?」
「あ、さっきですか? イラスト描いてたんですー」
「わぁすごい、お仕事をされてるの?」
「いやいや、趣味ですけど…!」
見せたノートをマスターが手に取って、その斜め横から奥さんが覗き込む。わたしの絵をじっと見つめながらそのほころぶ笑顔と雰囲気がほんとに素敵で、写真撮らせてください、と思わず口にした。
快く撮らせてくださった。わたしのフィルター越しに見えたふたりはわたしにしか撮れなくて、今まで撮ったどれよりもきっと想いがのっている一枚で嬉しい。こんな写真を撮りたかったのだな、と思う。現像とプリントしてまた持っていこうって決めた。

おふたりの写真は載せないかわりにケーキを。
夏みかんのゼリーの層がぷるんぷるん。


あと10日ほどで萩を離れる。早い、もうすぐ。このまま何もしないで終わってしまうのが怖い。残された時間が明確な数字となって浮かび上がった途端、いろんなところに行かなきゃやらなきゃ、と思ってしまう。また帰ってくればいいからと自分に言い聞かせることで、やり残すことへの恐れをなんとか隠そうとしている。旅を続けている限り「一旦おわり」はおそらくやってくるから、そのうちに怖いとも思わなくなるのかな。

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