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オラファー・エリアソン展「相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」

今回は、麻布台ヒルズギャラリー開館記念 オラファー・エリアソン展 相互に繋がりあう瞬間が協和する周期 に行ってきた。

会期:2023年11月24日(金)-2024年3月31日(日)
会場:麻布台ヒルズギャラリー(麻布台ヒルズ ガーデンプラザA MB階)


オラファー・エリアソンはデンマーク生まれのアーティストで、彼の多様な作品と社会的課題へのアクティブな関与が国際的に注目されている。環境危機がアートシーンで重要なテーマとなる中、エリアソンは産業社会の在り方や人間以外の存在との関係を再考し、自然現象や要素を活用して新しい知覚体験を提供する。

彼の新作パブリックアート「相互に繋がりあう瞬間が協和する周期」(2023年)を含む新作インスタレーションや絵画、ドローイング、立体作品は、線や動きなどのモチーフを通じて、知覚に訴えかける要素が豊富である。これらの作品は自然現象から幾何学、物理学、動作パターン、色彩学に裏打ちされており、世界の在り方や私たちの周りの現実との関係に新しい視点を提供するだろう。

麻布台ヒルズの新しい展示では、エリアソンは宇宙と原子のスケールを同時に提示し、人々の感覚と知覚に働きかけることで、人間と自然、そして全ての存在との特別で本質的な繋がりを考えさせる機会を提供する。


麻布台ヒルズ森JPタワーに設置されたエリアソンのアート作品は、頭上に吊るされた4つの螺旋状構造で構成されている。これらの構造は物理的な運動や自由なダンスから生じたかのように見え、ゆっくりとした動きを持ち、時間の経過を示唆している。作品は遅さ、ディープ・タイム、および量子幾何学からインスピレーションを得ており、遠くから見ると単純な線にも見えるが、実際には水晶やサンゴ礁の成長を思わせる幾何学的なモジュールの反復からなる立体的な形状である。これらのモジュールは双対称十一面体として知られ、リサイクルされた金属を使用した実験的な技法が取り入れられている。この取り組みはデザイナーのような姿勢をも窺わせ、循環という点で今後のプロダクトにも応用できそうだなと感じた。


作品を見るには、下のフロアと上のバルコニーの再方から空間を多間も必要がある。そうすると異なるフォルムが次々と展講する様子に気づき、この動きこそが作品の醍醐味であることがわかる。

この作品では、初めてARグラスとソフトウェアを使用して作られたそうだ。このソフトウェアは、チームが開発したものではなく、既存の製品を利用している。テクノロジーの進化により、二次元のドローイングを立体的なフォルムに変換することが容易になり、このテクノロジーを使用することで、3Dレンダリングを制作中の部分に重ね合わせ、組み立て、接着することが可能である。ただし、構造体は工場のような場所では製造できないため、人の手によって特別な注意を払って作られており、手の感覚や身体感覚をとても重要視しているそうだ。

この作品のタイトルが、蛍の生物圏(マグマの流星)なのだが、括弧との関連性は何なのだろうか? オブジェクトとスペースの違いなのだろうか?

19世紀式のハーモノグラフを用いた空間と音の相関関係を探索する研究。アートだけではなく、研究者としての好奇心が垣間見られる。 どこからスタートしているのか、どうやって動かしたのか(力の掛け方)をリバースエンジニアリングのように想像するのか楽しい。

立体的かつ時間軸を含む動的な作品。さらにその2次元に投影する影はいろんな次元を積層している。

今回、やや残念だなと感じた点は、その作品の見せ方である。エリアソンの作品は何といってもそのプロセスである。アウトプットも視覚的に美しいと感じさせるインパクトを兼ね備えるが、そのプロセスや素材へのスタディこそ彼の作品の魅力であると感じる。しかし、今回の展示会ではそのプロセスは展示されていなかった。動画や写真で見せたら良いのにと考えたが、なぜ配布されたpdfやカタログの中でしか言及されていないのか。これも意図されていたのか。それとも時間がなかったのか。


個人的にはせっかく物理的な空間の中でエリアソンの作品を堪能できる機会があるのに、その奥深さを見せてくれなかったのはとても勿体無いと感じた。

アーティストのオラファー・エリアソンは、「アイス・ウォッチ」プロジェクト(2014年)を通じて、アートを抽象的でなく、直接的に体験できるものにし、人々に環境問題への関与を促そうとした。この作品では、クリーンランドの氷河水をヨーロッパの都市に持ち込み、氷床から遠く離れた場所や自然から切り離された生活を送る人々に溶けかかった氷を届けた。彼はアートを通じて直接的な体験を通じて環境問題に注意を喚起し、特に気候変動の現実を伝える手段としてアートの力を強調している。


水の流れるパイプをぐるんぐるん回している作品。そこに一定間隔の光を当てて、動的かつ視覚的にインパクトを与えている。


今回の展示会はやや作品数が少ないと感じた。30分ほどで見終わるぐらいだ。おそらく、水を用いた作品で場所を使ったのだろう。やや展示会として物足りなさを感じた。

エリアソンは、アートを通じて感覚的な認識を高め、私たちの環境や文化的相互作用に対する新しい視点を提供してくれる。そして、人間が構築した世界を見直すための重要なステップであると再認識させられる。


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