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ハセル書店(ようやく)始動のお知らせ。

はじめに

みなさんはじめまして。
ハセル書店の有馬慶太と申します。

以前からやると言い続けていたのに、ずっと進めずにいた個人書店としての活動を始めます。

先日、「余白者」として出店させていただいた、5月19日の文学フリマ東京38の振り返りを書かせていただきました。
正直なところ、初めての文フリは自分にとって苦い思い出になりました。
結果がどうだった、というわけではなく、あくまで自分の中の話。

書いては消して、書いては消してを繰り返して、苦しさに溺れそうになりながら投稿した振り返りの後、改めて「余白者」として、一人の人間として、なにがしたくてこの活動をスタートしたのか、今の自分にできるのはなにかを見つめ直した結果、ハセル書店としてより多くの方に「余白」を届けることが自分の意義なんじゃないかって結論にたどり着きました。

現時点では、まだ人に余白を届けられるコンテンツを創ることができていない、そのことがずっと自分の中で重くのしかかっていました。
僕には、自分で創った本を自分で多くの方に届けて、その本に触れて余白ができた方が、さらに身の周りの方に本を通して余白を提供していく、自分の見えないところ、関わっていないところでも余白が伝播していけるような環境を作りたいという夢があり、そのために「ハセル書店」をスタートさせました。
その夢の実現に沿っていくならば、まずはコンテンツを産み出すことから始めないといけない、ましてや「余白者」として一緒に活動してくれている人がしっかりとカタチにしていたこともあって、より自分にプレッシャーをかけて苦しくなっていたように思います。

でも文フリに参加して、改めてコンテンツを産み出せる人を尊敬して、羨んで、嫉妬して、自己嫌悪に陥って。いろんな感情でいっぱいになって、改めて自分の足元を見つめ直すことができました。

コンテンツを産み出す自信のない今の自分にできることはなにか。
それは、人に会いに行くこと。

極端な話、本を介さなくていい。ただその人と会って、話をして、その結果少しでも、一時的でも余白ができたらそれでいいってそう考えられるようになりました。

僕自身、紙の本がとっても好きで、その存在に救われた経験が何度もあります。でも、紙の本と同じくらい人と話すことが大好きです。
だから、大好きな紙の本を通して、人と話して「余白」を見つけるお手伝いをする。好き×好きで人を救えるって最高じゃないかという、シンプルな発想から一連の活動はスタートしました。
人生観もまんま引っ張られていて、学生時代を含めるとこれまで書店員→出版社の営業を経て、現在は取次会社で働いています。
でも、どれも少しずつ物足りない。
なので、全部自分で完結できる個人書店にずっと憧れていました。

そこに対する憧れが強いからこそ、うまくできない自分への苛立ちともどかしさと、悔しさをより強く感じていたのだと思います。
でも、文フリ東京での出店を終え、様々な刺激をもらって、焦らずやっていこうと思えるようになりました。

まだ他の人が産み出してくれたコンテンツに頼りながらな僕ですが、ゆっくりと一歩ずつ進んでいきますので、どうかよろしくお願いいたします。


そもそも「ハセル書店」とは。

というわけで、この屋号にした意味や思いを説明させていただきます。

店名の意味は「本を読んだときに、誰かに想いを馳せられるような本を届けたい」、「自分はこの本が好きだと自由に発せるようにいてほしい」という思いを込めて決めました。

1つ目の「本を読んだときに、誰かに想いを馳せられるような本を届けたい」というものについて。
僕は、自分以外の人を気にかけるという行為は「余白」がないとできないことだと思っています。
例えば小説を読み終えて、昔仲の良かった友人がその作家さんのファンだったことを思い出す、とか。
詩集を読んで、この詩は今のあの人にぴったりの内容だから読んでもらいたいな、とか。
ふとしたことで、違う場所にいる人のことを思い出して、想いを馳せてもらえるような本をお届けしていきたい。更にその本をきっかけに実際に連絡をとってみる、なんてことに繋がってくれたら本当に幸せだなあって思います。

そして、2つ目の「自分はこの本が好きだと自由に発せるようにいてほしい」というものは、僕が学生時代、ビブリオバトルという本のプレゼン大会で、実際に他の学校の先生にかけられた言葉の経験から、大事にしている想いでもあります。

そこで僕は、今でいうライト文芸にあたるジャンルの本を紹介しました。
友情、恋愛、死生観といったテーマを扱っており、登場人物たちも同世代だったこともあり、感情移入しやすく、読んでいるとその世界観に没入してしまうほど、とても好きな作品でした。
その作品だけに限らず作家さんの文体や雰囲気も好きで、他の作品も含め紹介したいほどでした。
しかしプレゼン後、他の出場校の先生から「若い人が読むような内容だから、自分が読みたいと思わなかった」という感想をもらい、うまく魅力が伝えきれなかった虚しさと、自分の好きな本が純粋な内容ではなく、想定読者の年齢層のみでソートをして、あまつさえ好きだと伝えている本人に対して、読みたくないとまで言えてしまう考え方があまりにもショックで、腹立たしくて、今でもコンプレックスのように心の中に残り続けています。

僕は、本の強みを性別や年齢を選ばないことだと考えています。
なので、なにが面白くて、なにが刺さるのか。そんなの食べ物の好き嫌いと一緒で、本当に人それぞれで違ってくるものであって、性別や年齢でソートしてはいけないものだと思っています。
子どもが小難しい本を読んだっていいし、大人が絵本を読んだっていい。面白いと思えるものを読めばいいって考え方なので、そもそも僕が体験したことがレアケースなのかもしれませんが、僕はあなたの好きを肯定したい。
だから思いっきり、この本が好きだってみんなに表現できるような環境、空気感を作っていきたいなって思っています。
※ちなみに、プレゼンした作品はのちにコミカライズや映画化もされるほど大人気になりました。

以上の2つが、大きな意味になります。
もちろん枝葉にあたるような小さい意味もたくさんあるのですが、根幹の部分で共通しているのは、自分が大事にしていること。考え方。価値観です。
それを自分自身が見失わないように、言い聞かせるように、という思いがそのまま屋号になったような感じです。
ですので、これからもどんどん増えていくかもしれませんし、もしかしたら皆さんからは、僕の意図していない他の意味も見えてくるかもしれません。
その思いや考え方も全部肯定して付け足して、どんどん「ハセル書店」という屋号の意味に肉付けしていければと思っています。

だいぶ遅くなってしまいましたが、自分なりに定めた(追加予定あり)ルールと、スタートラインナップのご紹介です。
※各商品に関しては後日、それぞれご紹介の記事をアップします。


「ハセル書店」のルール。

・取り扱う本はお会いしたことがある人がいる出版社のみ。
・一都三県(埼玉、神奈川、千葉)のお客様からは送料をいただきません。
 その代わり、どうか手渡しでお渡しさせてください。

変なこだわりというか、現状思いつくルールはこの2つだけです。そのうちたぶん増えていくと思います。

取り扱う本はお会いしたことがある人がいる出版社のみ。
これは思い入れと理解度が関係しています。
お会いしたことのない著者様や編集者様よりも、お会いしてお話させていただいた方の方が人間性や考え方が伝わってくるので、より作品の理解度が上がります。
その方がより魅力的な部分をお伝えすることができるし、なにより本を直接お届けする以上、中途半端な理解度で取り扱うことは著者様や編集者様、もちろんお客様にも失礼になってしまうと思いますので、責任をもってお届けしたいという思いからこんなルールにしました。

・一都三県(埼玉、神奈川、千葉)のお客様からは送料をいただきません。
 その代わり、どうか直接お渡しさせてください。
これは自分の中のこだわりです。
もちろん店舗を持っているわけでも、定期的に遠方に行けるような仕事もしていないので、あくまで自分の手の届く範囲になりますが、やはり直接お渡ししたい、お話ししたいという思いがあるので、一旦はこんなルールにしようと思います。
もちろん都合をつけるのが難しい方、直接はちょっと……という方でももちろん問題ありませんので、遠慮なくご相談ください。その場合でも一都三県の方であれば送料はいただきません。

取り扱う商品の特性上、一般流通していない、書店様に置いていない場合があります。(スタートラインナップの3冊は全部そうです。)
実際に中を見てから購入を検討したいお客様もいらっしゃるかと思いますが、その場合も同様にご連絡いただければ見本をお持ちします。
その場合でももちろん伺いますので、お気軽にご連絡ください。

ただ、遠方の方は申し訳ないのですが、僕がそっちに行く用事がない限りは送料をご負担いただくかたちになるかと思います。
もし一都三県に行く用事があるよーっていう場合は数か月先であっても取り置きもしますのでご相談ください。


お客様に1つだけお願い。

その中で1つだけお願いがあります。
それは、遠慮をしないでほしいということ。
例えば実際にご指定の場所に見本を持ってお邪魔した場合。
内容がどうというよりも、せっかく来てもらったから、って無理して購入していただいたりしなくて大丈夫です。
もちろん購入していただけるのは嬉しいですし、応援したいと思っていただけることは本当にありがたいです。ですが、正直、内容が刺さる刺さらないはあると思います。万人に受けるものがないのと同じで。
ただ、それを加味しても本当に良いと思った本だけを仕入れていますので、手元に置いておきたい、他の人にプレゼントしたいって思っていただける自信があります。
それでももし、思うところがあるのならば、美味しいご飯屋さんを教えてください。(笑)
それで本当に十分ですので、ぜひ遠慮せず、お気軽にご連絡いただければと思います。
最初からお客様にお願いをするという、変で面白い書店をこれからもやっていくつもりです。

なお、送料無料や直接のお届けは、僕がしんどくなったら予告なく変更する場合があります。そのあたりは僕も遠慮しませんので、お気になさらず。対等でいきましょう。


「ハセル書店」のラインナップ

いよいよ商品のラインナップのご紹介です。
先ほども少し触れましたが、一般流通していない特殊な本たちばっかりなので後日それぞれのご紹介記事をアップします。
そちらをご覧になってからでももちろん大丈夫ですので、気になったタイトルがあればご連絡ください。

①「タイトルなし」 撮影:佐伯昭宏

 これはただの写真集ではない。美しい写真の数々はまるで画集でもあり、
 いくつも隠されている、本を読んでいるあなたへのメッセージを探す謎解
 きであり、読んだ人のココロを揺さぶる詩集でもあり、また、佐伯昭宏
 という人間のエッセイでもある。

 この本を初めて読んだときに衝撃を受けました。人に紹介をするうえで
 こんなに困る本があるのかと。それと同時に、写真集というジャンルなん
 かで縛ってはいけない本なのだとも思いました。

 この本は開くたびに新しい顔を見せてくれて、それだけ佐伯さんや編集者
 が細かい部分にエッセンスをちりばめたり、仕掛けをしている「面白い」
 本です。
 何周も、何周もして、なんで季節の始まりが秋からなのか、この写真を使
 ったのか、このメッセージを選んだのかって疑問を育てて、自分なりの答
 えをもってほしい。
 そしていつか、表紙が真っ黒で、タイトルのないこの本に、あなた自身で
 名前をつけてあげてほしい。
 そうしていいと思える優しさ、余白がこの本にはあると思っています。
 まるで家族のように、読んでくれたあなたに寄り添ってくれる本になって
 くれれば、とても嬉しく思います。

②「余白」 著:やまざき 想太

 読んでいると、まるで自分の弱いところをそのまま見られたのかと思うく
 らい、痛くて、むずがゆくて、苦しい。
 それでも、そんな自分を愛せなくても、ほんのすこしココロが軽くなる。
 きっと独りぼっちなんかじゃないんだって。

 僕たち「余白者」が文学フリマ東京38で初めて創った本。
 僕たちはあまりにもちっぽけで弱くて、悩んでいる人を救うだなんておこ
 がましいことは口が裂けても言えない。それでも、言葉を通して、少しの
 間だけでも寄り添うことができるかもしれない。そんな祈りをこめて創っ
 た本です。

 世の中には直線的なルートをなぞって、すぐに結果が出るハウツー本がた
 くさんあるなかで、この本はあなたのことを否定も肯定もしませんし、答
 えも解釈もありません。
 本当に寄り添うだけで、少しだけあなたにとっての「余白」を見つけるお
 手伝いをする本です。ある種、優しそうに見えて優しくないですが、それ
 でもきっと、自分自身も認知していなかった、あなたにとっての大切なモ
 ノに気付いてもらえる。そんな力がこの本にはあると思っています。
 言葉にならないモヤモヤや、漠然とした悩みがある方にぜひ手に取ってい
 ただいて、あなたなりの「余白」を見つけてほしいです。

③「僕があなたに最期に伝えたいこと」 著:やまざき 想太

 人は誰しも1人で生きることはできなくて。かといって、いつまでも隣に
 大切な誰かがいることはなくて。
 いつも失ってから気付くことの方が多い。人は後悔する生き物だから。
 それでも。今伝えられることがあるのなら。

 シンプルでストレートなタイトルに思わず目を背けたくなりますが、絶対
 に避けては通れない「生と死」のお話。

 普段生きている分にはあまりに遠く、突然その時がやってくると実感の湧
 く「死」という概念は、基本的には目を背けたいものだと考えています。
 でも、災害や事故など、本当に予測できないタイミングで訪れてしまうも
 ので、そこに例外はありません。
 「おはよう」「おやすみ」「ありがとう」と言える、「当たり前」を「当
 たり前」だと思わない。
 実感があったってなくったって。「当たり前」が言える今のうちに、言葉
 にして伝えてほしい。そういう願いからこの本はできました。
 もちろん家族以外の、遠くにいる親戚や友人にも。今はすぐに言葉が伝え
 られる仕組みがあるので、感謝を伝えたり、久しぶりに連絡をしてみたり
 と、ぜひ想いを馳せてほしいなと思います。


以上の3点が、現在のハセル書店で購入できる書籍になります。
なお、②、③の「余白者」の本は
12月1日(日)に東京ビッグサイトで開催される「文学フリマ東京39」
でも今回同様に販売予定です。
用事があって行けないよ!という方や、それまで待てないよ!という方は
各SNSにてメッセージをいただければお届けいたします。


ここまで長々と書いてきましたが
改めて「ハセル書店」開店いたします。
1人でも多くの方に「余白」を届けられるように、また、人に想いを馳せたくなるような本やサービスを提供していけるように、少しずつ、少しずつ歩んでいきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

ハセル書店 有馬慶太


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