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48.親子丼はいいな。

 相思相愛だと思っていた我が子の「ママに会いたいと思わない」という意思。それを調査官調査報告書に記載されたショックは並大抵のものではありませんでした。3ヶ月の間、私はひとときも息子たちのことを忘たことはなかったし、ずっとずっと会いたいと願い続けていました。

 きっと、息子たちも同じ気持ちだろう・・・。

 そう信じて疑いませんでしたが、そんな想いも虚しく、調査官からの「母親に会いたいか?」の問いに息子は首を「」に振りました。「」ではなく「」。読み間違えたのではないかと何度も読み返したけど間違いなく「」と書いてあります。調査官が書き間違えちゃったんじゃないかなって思ってみたけど、前後の文脈からしてもどう考えても「」でした。

 この3ヶ月私は泣いてばかりいたので、もうとっくに涙は枯れてたと思っていたのに文字がどんどん滲んで見えてきました。滲んだ文字は一瞬「」じゃなくて「」に見えましたが、涙を拭うと紛れもなく「」でした。

 隣で父も母も泣いていました。父の涙は今までにも後にも先にもこの日のほか見たことがありません。母はたぶん毎日泣いていました。私に悟られないようにしていたんだろうけど、ここ最近ずっと目が赤く腫れていました。

 たった3ヶ月の間にずいぶん老け込んでしまった両親を前に、泣かせてしまったことに対しても、娘のことと孫のこと3人分、この歳になってまで尚多大な心配をかけてしまっていることにも、可愛がってくれていた孫に突然会えなくさせてしまったことにも、様々なことに対して申し訳ない気持ち、情けない気持ちでいっぱいでした何より、結婚して幸せになれなくてごめんなさい。と思いました。

 あの子達が、私のことをもう必要としていないのならば、私なんてこのまま誰にも気が付かれないように消えてしまいたい。だけど、両親がわたしが消えてしまったことを気が付かないわけない。なんて、柄にもなく弱気な思考ループになってしまっていました。

   そんなこんなでふだんよりも数倍涙もろくなってしまっていた私は、その日の晩御飯の親子丼を見ただけで「親子丼はいいな。いつも親子が一緒で・・・。」とまた泣けてきてしまいました。

 

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