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45.絵本を読んで考える「猫と人権」

 試行面会の時、私が子どもたちに読んだのは「もしもしおかあさん」という絵本です。3匹の子猫を産み、楽しく幸せな毎日を送っていたお母さん猫。飼い主がよその家に子猫たちをあげてしまいました。突然に子猫たちがいなくなってしまって悲しみに暮れるお母さん猫。「もしもしおかあさん」って次から次に3匹の子猫たちから電話がかかってきて、色んなお話をする夢を見るというお話です。

 いもとようこさんの愛らしい切り絵と、久保 喬さんのやさしい言葉で綴られた名作絵本ですが、私自身が幼い頃、大嫌いだった絵本です。読んでもらう度、私は猫ではないからお母さんと離れ離れにならなくて済んだけど、もしも猫として産まれてきたら、こんなことになってしまうのかと心を痛めたものです。大人になった今でも、猫を見るたびにこの絵本のことを思い出します。

 実は、長男もこの絵本が好きではありません。次男は大好きで、毎回選んで持ってくるのですが、長男は嫌がって別の絵本を読んでくれというのです。しかし、この絵本には、どうしても伝えたかった私の気持ちが込められていて、大切なことを伝えるのにぴったりだと思い、裁判所に持って行くことに決めました。

 この絵本に出てくる猫の親子は、まさに当時の私たち親子の状態と重なります。母子が引き離される場面は、猫の世界でこそよくある光景かもしれませんが、私たちは人間です。私たち親子は人間なのに、親子が引き離され、逢いたくても逢えない。声を聞きたくても聞けない。こんな現実があっていいのでしょうか?

 ある日、突然親がいなくなって会えなくなってしまったらどんな気持ちになりますか?

 ある日、突然我が子がいなくなってしまって会えなくなってしまったらどんな気持ちになりますか?

 今の日本の法律下では、「子どもを連れ去られたり」「家から追い出されたり」されてしまえば、どうあがいても、どこに助けを求めても、どんなに願っても、会えない親子が生まれてしまいます。どんどん増え続けています。

 私自身、7年前に「もしもしおかあさん」のおかあさん猫の立場を経験しましたが、今もなお新しいおかあさん猫。おとうさん猫。子猫の立場の人間が減らないことに心を痛めています。どうしたらこういう悲しいことがなくなるんだろうとずっと考えています。

 「母でありたい。」「父でありたい。」「お父さんの子どもでいたい。」「お母さんの子どもでいたい。」って思うことって守られてもいい権利ですよね?意に反して「監護権」「親権」を喪失して会えなくなっちゃうなんて(正確に言うと、親権・監護権を持っているにも関わらず会えない親子がたくさんいます。)これは明らかな人権侵害だと思うのです。

 「もしもしおかあさん」のおかあさん猫の立場を経験してからずっと、何年も色々と考えてきましたが、「単独親権制度」ってとても不自然な制度だと思います。なんで「親権」を奪い合って争わなくてはいけないんだろう。または押し付け合って争わなくてはいけないんだろう。

 子どもが命を宿した時から、お父さんも親。お母さんも親。ふたりとも親。永遠に変わらないはずなんだから・・・。

どっちもお父さん、どっちもお母さんでいいじゃん。


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