ソーシャルゲームにおける、リアルイベントの満足度の上げ方
はじめまして。
サイバーエージェント子会社の株式会社グレンジで働いている「ありひろ」です。
今日はグレンジの有志で行っている「アドベントカレンダー2024」の19日目の記事として『ソーシャルゲームにおける、リアルイベントの満足度の上げ方』を書かせていただきます。
ちなみに、今回私がこの記事を書くにあたって題材としているのは、弊社が提供するゲーム『なぞるRPG ポコロンダンジョンズ』(通称:ポコダン)において実施しているリアルイベントです。
他社様のリアルイベントでは違ったことを意識されているかとは思いますが、この記事では私がポコダンのリアルイベントを企画・実施してきた中でやってきたこと、やる中で得た気づきなどをご紹介できればとおもいます。
ポコダンのリアルイベントについて
ポコダンでは基本的に、ポコダンの周年期である6月と、クリスマスの12月の年に2回リアルイベントを実施しています。
周年期の6月に行うイベントでは、約100~180名のユーザー様(以降は、ポコラーと呼びます)に来ていただき、12月のクリスマスに行うイベントでは、約100名のポコラーに来ていただいています。
参加者は抽選で選定し、参加費は無料となっています。
イベントの構成
イベントには大きく分けて3つの構成があります。
1つ目は、イベントに来ていただいたポコラーの皆さんで交流や、オリジナルコンテンツ、ゲーム内の共闘をして遊ぶ「オフラインコンテンツ」。
2つ目は、イベントに来ていただいたポコラーの皆さん限定で行う「ポコダンオリジナルグッズ抽選会」。
そして3つ目は、会場内で生収録にて実施する「公開生放送」です。
それぞれで、ポコラーの皆さんに楽しんでいただけるよう工夫をしています。
オフラインコンテンツ
オフラインコンテンツでは、ポコダンにまつわるオリジナルのゲームや、謎解き、コンテンツなどを用意しています。
ここでは「ポコダンに関することだけれども、普段のゲームとは異なり、リアルでしか味わえない体験」をポコラーの皆さんにしていただけるよう工夫をしています。
例えば、ポコラー同士でチームになってもらい、そのチームで協力をしながら共闘をして遊んでいただいたり、ゲーム内ではありえないような条件、縛りを提示し、それに対してみんなで相談をしながら共闘をして遊んでいただいたりしています。
普段は、基本的には1人でプレイしていただいている中、イベント会場で実際にポコラー同士で会って、相談しながら行う共闘は「リアルイベントならでは」の体験であり、ポコラーにとってとても思い出に残るものとなります。
加えて、オフラインコンテンツでは積極的にポコラー同士で交流したり、話し合う仕掛けを行っています。
例えば、各ポコラーに自己紹介カードを運営から用意し、それらの交換を促すミッションを用意したり、チームでポコダンの思い出を語るミッションなど、ゲーム内をベースとしつつゲームをやるのではなく、実際に話しながら交流するミッションなどを用意しています。
これらは、リアルイベント内で、ポコラー同士が実際に知り合い、ゲーム内でも、そしてSNS内でも繋がっていくことで、イベント中だけでなくその後もポコラー同士の関係が続くことを狙っています。
実際に、リアルイベント内の「フレンドになろう」というミッションであったり、リアルイベントで共闘を一緒に行い、ポコラー同士が「フレンド」になった時、ゲーム内の遊び要素の1つである「助っ人」によって、イベント後にポコダンを遊んでいる時もその「フレンド」が表示されます。
そしてリアルイベント後、普段ポコダンを遊んでいるときは、そのフレンドに「助っ人」として助けてもらいながらクエストの攻略を進めることができます。
そのため日々ポコダンを遊ぶ中で、そのフレンドとリアルでは会ってはいないけれども、どこかつながっている感覚などをポコラーのみなさんに持ってもらえているのではないかと思います。
また、オフラインコンテンツではポコラー同士だけでなく、運営とも積極的に関わることのできる機会を設けています。
運営自らが、リアルイベント中にポコラーと直接ふれあい、時には一緒に共闘をしたり、時にはポコダンに対する改善のお願いなどを聞いたりして、他のゲームと比べて距離感の近い運営を目指しています。
実際に何人ものポコラーの皆さんを運営としても認識しており、毎回のイベントで同窓会のようにお会いし、その都度交流を深めています。
その他にも「乾杯」など、オフラインコンテンツでは、会場内のポコラーや運営が一体となって同じ時間を共有する仕掛けを行い、ポコラーにも運営にも思い出に残る唯一無二の時間となるようにイベントを設計しています。
ポコダンオリジナルグッズ抽選会
毎回のイベントでは、オリジナルグッズの抽選会を実施しています。
定番として毎回用意している景品から、その時々のイベント限定のオリジナルの景品などを用意しています。
イベントに参加するポコラーの中にはこの抽選会がお目当ての方もおり、イベントの中で盛り上がるコンテンツの1つとなっています。
採算度外視で、運営チームが考える「ポコラーのみなさんがもらったら嬉しいもの」をできるだけ毎回用意するようにしています。
また当たり率は、イベントの規模にもよりますが大体30~45%ほどに設定しており、できるだけ多くのポコラーに景品が当たるようにしています。
公開生放送
公開生放送では、リアルイベント以降のポコダンについての情報を一気に公開します。
周年期の6月では、主に周年施策の大目玉となる周年記念キャンペーン、そしてクリスマスの12月では、年末年始施策などについての情報を公開します。
今回の記事では生放送の内容というよりも、公開生収録を行う意図について触れたいと思います。
公開生収録を行う意図、それはオフラインコンテンツの部分でも書きましたが、会場内で一体感を持ち、同じ時間を共有するためです。
ポコラー同士で、新たなイベントやコラボ情報などが発表される空間を共有し、それぞれの考えや感想を直接言い合える場を提供し、これからのポコダンについて改めて意見していただく機会を設けることができます。
そして運営も、施策に対するポコラーの皆さんの反応が直に伝わり、今後の施策を考える上での材料とさせていただくことができ、ポコラーと運営の双方にとって実りのある良い場とすることができます。
満足度を上げる要素3つ
これまでは、ポコダンのリアルイベントで行っていることや狙い実例を踏まえて紹介してきましたがまとめると、満足度を上げる要素は以下の3つと考えています。
・ ポコラーにとって楽しい体験
一番大事な要素は、イベントを通じて得られる体験が、ポコラーの皆さんにとって楽しい体験であるかです。
とても当たり前なことではありますが、1つの小さな対応ミスであったり、何かしらの考慮漏れによって参加するポコラーの皆さんに不都合が生じた場合、イベント終了後には全力で「楽しかった」という体験にはなりません。
そのため、運営チームは常に「ポコラーの皆さんだとどう感じるだろう、どう楽しんでくれるだろう?」と妄想しながらイベントの準備を行なっています。
またポコラーの皆さんの中でも、例えばゲーム性が好きでポコダンをしてくださっている方や、イラストが好きでポコダンをしてくださっている方など、様々な方がいらっしゃいます。リアルイベントを設計する中で、このコーナー、コンテンツはどの層のポコラーの皆さんに刺さるものなのかを考え、そしてリアルイベント内で、できるだけ全ての層のポコラーの皆さんに刺さる「何か」を用意するようにしています。
また、それらの体験の中に、新しい体験が含まれていることも重要なポイントです。全くもって新しいコンテンツ、新しい立て付けのコンテンツ、内容は近しいものであってもルールや縛りが新しいコンテンツ、など「新しい何か」を常に追加して毎回アップデートしています。
・ ポコラー同士や運営との交流
次に大事な要素は、ポコラー同士やポコラーのみなさんと運営とで交流することです。交流の場を運営がしっかりと提供することがとても重要で、この交流の場でできたつながりは、イベント終了後もゲーム内やSNS内で続きます。同じポコダンを好きでいてくださっているポコラーの皆さん同士で、交流しながら、そして楽しい体験を共にする、そんなことができる場であったりコンテンツを用意することがとても重要です。
・ 新たなゲーム内情報
公開生収録を行い、新しいゲーム内情報を公開することも、イベントの満足度を上げるために重要な要素となっています。
新しいゲーム内情報が公開されたとき、その場に居合わせること、そして同時に居合わせた周りのポコラーの皆さんと、情報について感想や意見を交換したりするなど、その場で周りのポコラーの皆さんと一緒にポコダンについて考える場を設けることがとても重要です。
これら3つの要素を外すことなく、それぞれの要素が前回実施したイベントよりもプラスαされている状態を、毎回のリアルイベントで作れるようにすることで、継続的にリアルイベントの満足度を上げることができると考えています。
その他気をつけていること
その他上記の要素に加えて、細かいところではありますが、やっていること、気をつけていることを紹介したいと思います。
グッズに毎回新しいものを入れる
抽選会のところでも書きましたが、グッズには常に新しいものを用意し、そのリアルイベント限定のものを用意します。
テンションのあがるノベルティをつくる
ノベルティとして来場されたポコラーの皆さんにお渡しするグッズには、何か1つテンションの上がるノベルティを用意します。
2024年6月のイベントでは、オリジナルの法被を。2024年12月のイベントでは、オリジナルのTシャツを用意しました。もちろん二つとも新グッズです。
グッズの中で、交換性のあるものを用意する
モンスターアイコンの缶バッジなどを多数用意することで、それらをポコラー同士でイベント中に交換できるようにします。
ポコラーの中には、これまでのイベントでもらったグッズなどを持ち寄り、リアルイベント中に交換を楽しんだりする方もいらっしゃいます。
グッズの点数が多くなるようにする
小さいものでも良いので、ノベルティや抽選会グッズで、ポコラーのみなさんの手に渡るグッズの点数が多くなるようにします。
例えば、自己紹介カードの裏面には様々なモンスターによる種類を設け、全種類をポコラーのみなさんにお渡ししています。
物販を用意する
準備に余力があれば物販を用意し、ここでもこのイベント限定のグッズを用意します。物販は、ポコダンのリアルイベント内では唯一ポコラーがお金を使う場所となりますが、ここではリアルガチャなど、ポコラーのコンプリート欲をそそるようなものから、記念Tシャツなどメモリアル要素のあるものを用意します。
必ずイベント終了後に交流会を設ける
ポコラー同士や運営と自由に交流できる時間を設けることで、イベントの最後にポコラーの皆さんが思い思いにやりたいことができる場を設けています。終わりよければ全てよしという言葉もあるように、最後の体験がイベント全体の満足度に大きく影響してきます。ここでポコラーの皆さんが自由に交流できる場を設けることがとても重要です。
必ず年に2回以上はリアルイベントを実施する
そして大変だけれども大事なことは、毎年定期で継続的にリアルイベントを実施することです。ここで年に2回は同窓会のように全国からポコラーの皆さんが集まり、交流する場を設けることができます。ここで作られたコミュニティは会を重ねるごとにより深いものとなります。
実際のイベントの風景などを写真で載せておきますので、ぜひ以上の要素やポイントを踏まえた上で見ていただき、何か参考になる点などあれば嬉しいです。
最後に
今回、リアルイベントの満足度のあげ方についてあれこれ実例を踏まえ書いてきましたが、リアルイベントの設計ややり方、そして成功の要因には様々あると思います。(アプリの売上やDAUの状況であったり、そのアプリのユーザー層の特徴であったり、外的要因もかなり様々だと思います。)
今回ゲームのリアルイベントの運営側の想いや意図について、書かれている記事などあまりお見受けすることがあまりありませんでしたので私の経験や、考えを書かせていただきました。
もし読者の方にリアルイベントについての運営経験や知見がある方がいらっしゃれば、意見やアイディアの交換をさせていただけたら嬉しいので、ぜひコメントやご連絡ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
ありひろ