ハスラーズ

なんだこいつら

 世の中には悪い奴がいるもんだ。人をだました金で遊んで、楽しめている。

生活に困って盗みをする、ここまでは仕方ないと思う。でも、盗んだ金でぜいたくして、それが楽しい。不安も罪悪感もない。その精神状態が信じられない。

でも主人公も最初はいけないと思っていた。それがいつしか慣れて、派手な買い物をして、パーティして、笑っていられるようになる。人間、機縁さえあれば、どんなクソ野郎にもなれる。人間の中には、仏もいれば畜生、餓鬼もいて、その時にどの面が強く出ているかの違いなのだそうだ。自戒せねば。

 たしか寺山修司だったか、盗めばいいじゃないか、と言った人がいた。実際、生きているのがどうにも嫌になった時、この言葉で気が楽になった。それでなんとか、盗みよりも楽な仕事を始め、結果、死ぬことも盗むこともなく今に至った。

 ハスラーズというタイトルに、ビリヤードの話かと思ったら全然違った。株屋の男たちで稼いでいたストリップの女たちが、リーマン・ショックで収入が激減し、飲み屋で居合わせた男の酒に薬を入れてクレジットカードを使い込むという犯罪で稼ぐようになる。

犯罪手法は極めて安直。薬を飲まされた男たちはしばしば命の危険にさらされる。何かしらを得ようとしてリスクを冒した男たちの損失は、織り込み済みのことではあるが、死にそうになったら、仕掛けた女たちが駆けずり回ることになるのだから、自分たちのためにも、傷つく人がもっと少ない戦略を練ればいいのにと思ってしまう。

 最後はみんな逮捕される。当然だ。人よりいい思いが安易にできるようには、世の中できていない。誰もが楽していい思いをしたいのだから、その中で努力した者がいい思いをすることになる。結局はまじめに堅実に働くのが一番の近道なのだろう。

でも、世の中には、時に宝くじみたいな幸運が起こることもあるからやっかいだ。この作品の女たちも、たまたま逮捕されずに同じ手法が通用したから、稼ぎを続けられたが、たいがいの人生においてラッキーは断続的。たまたまを努力や実力と勘違いして鬼畜にならないよう用心せねば。

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