青春残酷物語

 主人公は、家に帰るのに電車は面倒だからと、知らない人の車に乗せてもらうような女。当然危ない目に遭って、学生に助けられる。その学生とデートに行くと、海に落とされ、おぼれかけて抵抗できなくされる。その学生と同棲し、受精し、堕胎し、学生はやくざに殺され、女も死ぬ。

 タイトル通り残酷で、登場人物は誰も救われない。見ていて楽しくない。主人公の女が苦境に陥るのは自業自得で、夜の街でふらふら生きていたら、たいがいつらい目に遭うだろうと思う。学生も、家庭教師先の奥さんと肉体関係になっていたり、チンピラと喧嘩したり、まともに生きようとしていない。もう幼児じゃないんだから、少しは自分を抑えろよと言いたくなる。

 ダメな人は、人のせいにする。この作品の登場人物たちはみんな、人のせいにする。女の父親が一番わかりやすい。戦後すぐは民主主義という進むべき方向があったが、それがなくなったから娘を𠮟れないと言う。子育ての困難を社会のせいにする。話のすり替えにもほどがある。

 人のせいにする人は、ダメだけど、たいがい元気のいい人は、人のせいにしている。反省などせず人のせいにしている方が、精神的にはいい。向上心など持たず気楽に過ごして、それで一生を終えられるなら、その方がいいだろうと思うが、この作品の主人公のように、自堕落に生きながら悩みを抱えている姿を見せられると、どう生きたって人間から悩みはなくならないんだと思わされる。

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