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今だからこそ『ななしのアステリズム』の琴岡みかげを語らせてくれ

ご無沙汰しておりました、アリアです。今回は完全なる自己満記事です。思考の整理と布教のためなのでご容赦くださいませ。

みなさんは『ななしのアステリズム』という作品をご存知ですか?
知らない方はぜひお読みください。電子版もございます。

この作品は2015年から2017年まで連載されていたのですが、私はこの作品に出会ってから「人生で最も好きなマンガは?」に対する確固たる答えが決まりました。そしてこれはおそらく未来永劫変わりません。
それぐらい私にとって大きな作品です。

完結・最終巻発売からすでに6年も経過していますが未だ色褪せることない『ななしのアステリズム』の魅力を紹介させてください。

そもそもどんな作品?

端的に言うと百合漫画……の皮を被った「人間関係情報カードバトル」です。

小林キナ『ななしのアステリズム』ガンガンONLINE連載時扉絵より
現出典不明

仲良し3人組の白鳥司、鷲尾撫子、琴岡みかげにはそれぞれ「勝利条件」があります。
自分の気持ちや、知ってしまったこと……他の2人が知らないそれらの情報を最大限活用することで勝利条件を満たしにいく、それが『ななしのアステリズム』で描かれる「人間関係情報カードバトル」です。

少しネタバレにはなりますが例えば鷲尾撫子の勝利条件は「琴岡みかげと付き合う」ことで、そのために白鳥司を味方に巻き込んでいきます。
一方、琴岡みかげにも別の勝利条件があり、白鳥司もまた別の勝利条件がある……と言った感じです。
白鳥司は鷲尾撫子の協力をしながら自分の勝利条件に向けて努力したり、琴岡みかげも……。

そんな人間関係の中に渦巻く諜報戦が『ななしのアステリズム』の魅力の1つです。

また、百合やGL、女女の関係にとどまらず、白鳥司に想いを寄せる「朝倉恭介」、クラス内で成立する「前ちん」と「柏木」のカップルなどのストレートの恋愛も描かれますし、その朝倉恭介と主人公の弟「白鳥昴」にも一悶着あります。

言い換えれば「恋愛のあらゆる関係」を描いた作品なのです。もちろん、今もまだ名前のついていない関係性も。『ななしのアステリズム』というタイトル通りです。

各キャラについて1つ……いや2つほど記事にできてしまうほど各々が魅力的なのですが、今回は私が人生を変えるほど狂わされたキャラクター、琴岡みかげについて焦点を当てて解説していきます。

ぜひ「琴岡みかげ」でTwitterを検索してみてください。今もまだ彼女に囚われている亡霊が何人か悲鳴をあげています。2割くらいは私の呻きですが……。

また、ここから先は『ななしのアステリズム』の全てのネタバレを含みます。
ご容赦ください。

そもそもどういう立ち位置?

小林キナ『ななしのアステリズム1』より

琴岡みかげは彼氏をとっかえひっかえする移り気でわがままな、「女の子」として描かれます。
ですが、彼女にはそうしなければいけない理由が……。というのが彼女の物語における役割です。

実は『ななしのアステリズム』では主人公3人にそれぞれ性的指向の設定があります。
琴岡みかげはレズビアンです。鷲尾撫子はバイセクシュアル、白鳥司は「思春期の一過性」
つまり、琴岡みかげだけ「女の子しか好きにならない、なれない」ことが明言されているのです。

しかし、琴岡みかげは過去「自分の気持ちを告白して関係が崩れる」ことを経験し、自分が抱く気持ちが「普通」でないと認識します。
そして「普通」に異性を愛せるようになるために、何度も、何度も彼氏を作り「普通になる」努力を繰り返すのです。

こうして文字にしてみると改めて恐ろしいキャラクターですね。
これだけでも狂うに足るキャラクターなのですが、琴岡みかげの良さはこれにとどまりません。

琴岡みかげは3人の中では1番多くの情報カードを多く持っています。
「鷲尾撫子が琴岡みかげを好きなこと」「鷲尾撫子に白鳥司が協力していること」「その陰で白鳥司が鷲尾撫子に想いを寄せていること」まで……。
琴岡みかげは作中では"ほぼ"全知です。それ故に、彼女は自身の勝利条件「3人がずっと友達のままでいる」の満たし方をよく理解しています。
「鷲尾撫子と自分が付き合わない」、「白鳥司が鷲尾撫子を振り向かせない」、そして……「自分が白鳥司を好いていることを誰にも気取られない」
琴岡みかげは情報カードの多さと引き換えに非常に困難な勝利条件を抱えることになります。
そして、この勝利条件を満たすには前述の「性的指向」が鍵になってきます。

……そう、琴岡みかげ以外の2人は「男の子を好きになる可能性」があるのです。
このことを踏まえた琴岡みかげの勝利条件は「鷲尾撫子、白鳥司が男の子を好きになるまでの時間を稼ぐ」です。
アグロ撫子、ミッドレンジ司、コントロールみかげでメタが回っているわけです。

関係性の遅延行為。それが琴岡みかげの勝利への道筋なのです。

ちなみに、各メインキャラクターには誕生日そしてそれに合わせた星座が割り当てられています。
白鳥司・白鳥昴は牡羊座。鷲尾撫子は蠍座。朝倉恭介は双子座。
牡羊座は作中で役割を明言されていませんが、鷲尾撫子は諦めない決意と共にツインテールからポニーテールへ変えた自分を「さそり」と喩え、朝倉恭介は白鳥司だけでなく白鳥昴にも惹かれ、「双子」と関わりが深くなっていくなど明確な役割があります。

琴岡みかげに割り当てられた星座は……天秤座。

3人の関係性の"維持"のために全てを捧げていく、そんな命運を託されたキャラクターなのです。

琴岡みかげの罪

さて、前節で琴岡みかげというキャラクターの立ち位置について言及しましたが、琴岡みかげは私が今まで読んだ少なくない漫画の中で最も"性格が悪い"キャラクターです。
結果的に性格が悪くなってしまっている…….という側面はありますが、行動理念と過去の経験が彼女をそう動かせてしまいます。
そして、それがとても、とても愛おしいのです。

そもそもなぜ彼女が他の2人に比べてより多くの情報を持っているのか、ということも重要です。
彼女が持つ手札は7話で描かれます。「白鳥司→鷲尾撫子」、「鷲尾撫子→琴岡みかげ」を知った理由が描かれますが、そのどちらも「白鳥司が好きで、司のことを見ていたらなんとなく気づいてしまった」という理由です。

小林キナ『ななしのアステリズム2』より

好きだからつい白鳥司を見てしまう。その白鳥司は鷲尾撫子のことをよく見ている。……その哀しげな視線から白鳥司が叶わない恋をしていることを察してしまう。

小林キナ『ななしのアステリズム2』より

そして、鷲尾撫子から注がれる視線に同じ感情が含まれていることに気づいて琴岡みかげは「ほぼ全知」になります。
好意によってほぼ全てを知ってしまった琴岡みかげですが、琴岡みかげの勝利条件は皮肉なことに「"3人組"の維持」
自分のものを含めて、全員の好意を蔑ろにしなければならない運命を背負ってしまいます。
自分の好意のせいで。

そんな琴岡みかげが自分の好意を成就させようと躍起になる鷲尾撫子、それに協力している白鳥司を見たらどう思うでしょうか……。

小林キナ『ななしのアステリズム4』より

これが琴岡みかげの最大の魅力、そして罪です。
知っていることが多く、秘密も多いからこそ「自分だけが苦労している」と勘違いし、他者を意図的にも無意識的にも傷つける。それが、琴岡みかげという人間です。

先ほどから琴岡みかげのことを「ほぼ全知」と称してきました。実は作中で、琴岡みかげが知らないことが2つだけあります。
それは「鷲尾撫子が琴岡みかげを好いていることを琴岡みかげが気づいてることを鷲尾撫子が知っている」ことと「鷲尾撫子が琴岡みかげを好いていることを琴岡みかげが気づいていることを鷲尾撫子が知っていることを琴岡みかげは知らないということを鷲尾撫子はわかっている」ことです。
何言ってるかわかりませんね。私もわかりません。

少しだけ噛み砕くと琴岡みかげは「鷲尾撫子の好意を知って」います。ですが、鷲尾撫子も「琴岡みかげが自分の好意を知っている」ことに気づいています。
しかし、琴岡みかげは「鷲尾撫子が気づいている」ことまでは知りません。琴岡みかげは「鷲尾撫子は私の気持ちも知らないで呑気に片想いしている」と思い込んでいます。

一方、鷲尾撫子は琴岡みかげが自分の好意を知っていることも、そして自分がそれに気づいていることを知らないで「呑気に片想いしてる」と思われていることまで勘付いています。
当然琴岡みかげはそれを知りません。
琴岡みかげは「呑気なメルヘン片想い人間」鷲尾撫子を何度も何度も何度も遠回しにフリますが、鷲尾撫子はそれを全て「鈍感なふり」をしてやり過ごします。

手持ちの情報カードが多いこと、そして自分が変わりようなくレズビアンであること。
これらのせいで他の2人と「違って」苦労していることを免罪符に、琴岡みかげは暴れ回ります。

例えば好意の矢印をなくすために3人の関係を一度リセットしようとしたり、彼氏をとっかえひっかえする様を見せつけることで自分を「典型的な異性愛者」だと思わせて、鷲尾撫子に諦めてもらおうとしたり、その鷲尾撫子本人に「好意を向けられるってうざい時もあるよね〜」なんて彼女の好意が迷惑であることを仄めかしたりなど。
大好き。

全知・天秤としての運命を背負いきれなかった彼女は「3人組を維持する」という勝利条件のために、ひどく歪んだ態度をとってしまいます。まるで「カップルを成立させない」が勝利条件だったかのように。

小林キナ『ななしのアステリズム2』より

ちなみに鷲尾撫子は基本的に情報カードは少ないキャラクターです。白鳥司が自分を好いていることにも気づいていませんし、当然琴岡みかげが白鳥司を好きなことも知りません。
ただ、「琴岡みかげが自分の好意を受け取るつもりが全くなく、そしてそれは悪意からきているわけではない」ことだけは理解してしまっているという立ち位置です。(彼女は彼女で罪深いのですが……)

琴岡みかげはわがままで、他人を振り回し、傷つけますが、その背後には彼女が持つ情報の多さがあります。
そしてその情報の多さの背後には「白鳥司への好意」があり……そしてその「白鳥司への好意」は彼女の性的指向に由来します。

彼女は自身の振る舞いを、自分の苦労を最終的には性的指向に紐付け、「普通」の人間には理解できない、理解してもらえないと結論づけます。
琴岡みかげという人間にとってレズビアンという性的指向は免罪符として使われながらも、本質的には「労苦を生み出す罪」であり、一刻も早く「普通」を目指さなければならなかったのです。……彼女の過去の経験からしても。

琴岡みかげの過去

琴岡みかげは3人組に対してトラウマを抱えています。彼女にとって白鳥司、鷲尾撫子、琴岡みかげの3人組は小学校で自分が壊してしまった関係の「やり直し」でした。

「さっちゃん」に好意を抱いた「みーちゃん」こと琴岡みかげは「きっと自分の想いを受け取って考えてもらえる」と思い、さっちゃんに告白します。しかし、結果としてさっちゃんは琴岡みかげに呪いをかけてしまいます。

小林キナ『ななしのアステリズム5』より

他でもない想い人であったさっちゃんから「普通じゃない」と烙印を押されてしまった琴岡みかげは自身の性的指向を異常と捉え、矯正しようとします。しかし結局、彼女にとってそれは「不可能」で、いらない疲弊を生み出すだけの試みになってしまいます。

そんな中訪れた再びの3人組。
今度こそ仲良し3人組で終われるように、仲良し3人組が続いていけるように。琴岡みかげは2人が「普通」になってくれることを望んでいました。
その一方で、女の子同士の恋愛を成就させようと躍起になる2人。
勝利条件の観点から言うのであれば、琴岡みかげは2人とは全く逆の方向に舵取りをしなければいけません。しかも2人に嫌われないように努めながら。

「普通」に男の子も好きになれる人間は呑気でいい。私は「普通」になれないからこんな苦労を抱えてしまう。「普通」じゃない私は誰にも理解してもらえない!!

琴岡みかげの魂の叫びは「悩み」として他人に相談され昇華されるのではなく、「ストレス」として他者にぶつけられることで発散されていきます。

この琴岡みかげの「ストレスの発散」は数あるキャラクター表象の中でも最も「人間的」だと思っています。

小林キナ『ななしのアステリズム4』より

例えばこのシーン。琴岡みかげの悪虐ぶりをこれ以上なく表した屈指の名シーンなのですが「遠回しにフる」ことが「ストレス解消になる」というのは一見して理解し難いです。
しかし、琴岡みかげという人間・キャラクターと向き合って彼女の立場から考えてみると不思議と自然な行動(それも、悪意ではなくあくまでストレス解消として)に思えてきます。

「普通」の人間、「無知」の人間による、深い思慮を伴わない言動は、発した本人の知らないところで「他人を傷つける」ことを琴岡みかげはよく知っています。
だから、琴岡みかげはそれを逆手に取り「普通」の人間、「無知」の人間には悟られない迂遠な方法で糾弾することによって自身が受けてきた抑圧、そしてトラウマを解放していくのです。

琴岡みかげの魅力はこれにとどまりません。前述のような行為で「鷲尾撫子が傷つく可能性」もしっかりと考慮しています。
その上で琴岡みかげは「その程度の傷なら私が過去受けた傷の方が大きいからつけても構わない」と確信しています。

小林キナ『ななしのアステリズム5』より

「普通」になれない上に「全知」の自分は他の人より傷ついて、苦労している。
だから私がどんな傷をつけようと私が受けた傷よりは小さい。
だから私は他人を傷つけていい。それが「普通」でないことと「全知」であることの免罪符的特権。

この「狂った被害者意識」による暴走が琴岡みかげというキャラクターの人間性そして神性を担保しています。
私は以前、この琴岡みかげの暴走を「マイノリティマウント」と呼称しました。
自身がマイノリティであることを免罪符的に利用し、「普通」の人間の苦労を低く見積もる行為のことを。
2024年現在でもこうした人間のマウント合戦は至るところで見られる気がします。

2017年という時期に「マイノリティだから他者を傷つけていい」という精神を持った琴岡みかげが存在したことは本当に奇跡だと思っています。

琴岡みかげの崩壊

『ななしのアステリズム』は残念ながら、当初想定されていたエピソードが全て描かれることなく終了してしまいました。
最終巻にあたる5巻は「琴岡みかげが行ったストレス解消が外部の人間を巻き込んでしまった」トラブルを中心に話が進行します。

琴岡みかげがとっかえひっかえした彼氏のうちの1人「むーたん」の周辺の人間関係によるトラブルです。
むーたんに告白し断られた女の子「小川さん」が、未練を残すむーたんのために琴岡みかげに2人の友達と一緒にお願いをしにきます。

ですが琴岡みかげは絶賛大拗らせ期。「普通」の人間が「普通」の恋愛で悩んで頼み事までしてくる無神経・呑気さに「勝手に」傷つきます。
また、「同性愛者が誰もいない女の子友達3人組」という自分が持っていないものを持っている「小川さん」に「勝手に」嫉妬を抱き、激昂します。
琴岡みかげにとって彼女ら3人はどうでもいいので、リミッターの外れた彼女は直接的な言葉を投げかけ自身の抱えるストレスを「ぶつけて」しまいます。
……その場にいた、鷲尾撫子や白鳥司にまで。

その際の言動で琴岡みかげは過去のように孤立します。しかし、琴岡みかげは自身の言動を省みるのではなく、あくまで自分が孤立したのは「性的指向」のせいだと決めつけます。なぜなら琴岡みかげにとって「性的指向」は罪であり、烙印だから。
琴岡みかげにとって不都合な出来事は全て「性的指向」から出てきていました。……彼女にとって「性的指向」は原罪であると同時に免罪符でもあったのはすでに言及した通りです。

生まれながらに背負った運命……ちょうど誕生日で星座が決まるのと同じように、自分で変えることのできない「普通」でなさ。
ずっと、ずっと努力をし続けて、それでもなおやはり変えられない宿命。生まれながらに背負ってしまった烙印。
もう自分ではどうにもできない生きづらさ全てに対して彼女は呟きます。

小林キナ『ななしのアステリズム5』より

この「誰か」という言葉は私の以前の記事で触れた、暁山瑞希の発したそれとほぼ同等だと思います。
自分の都合のいいように物事を推し進めてくれる存在、いわば神のようなもの。
自分の努力ではどうしようもなかった運命すら書き換えてくれるようなゴドーのような、存在し得ない誰か。

暁山瑞希の場合、その「誰か」は現れてくれませんでした。
しかし、琴岡みかげ、そして『ななしのアステリズム』には紛れもないその「誰か」が現れます。

ヒーロー、白鳥司です。
彼女は琴岡みかげの勘違いをバッキバキに砕きます。
本来でしたら白鳥司の言葉は琴岡みかげの表面を反射するだけで彼女を砕くのに至らなかったのですが、そこはヒーロー白鳥司。

小林キナ『ななしのアステリズム5』より

たったこの一言で琴岡みかげは「全知」の優位性を奪われます。琴岡みかげが他者を傷つけていい免罪符の1つである「全知」が。

ですが、琴岡みかげにはもう1つ他者を傷つける免罪符があります。

そう。「性的指向」です。

白鳥司は先ほどの台詞ののち「でもツライのは琴岡だけじゃない」と詠唱します。
その言葉に対して琴岡みかげはずっと手元に抱え続けた切り札「性的指向」を吐露しようとします。

小林キナ『ななしのアステリズム5』より

人間関係情報カードバトルにおける最強の切り札を使おうとした琴岡みかげに対してヒーロー白鳥司が返したこの台詞によって、「普通」でないことは免罪符でなくなりました。

「普通」でないことはより多く、より深く傷つくことを意味するかもしれない。けれど、だからといって「普通」の人間が自分より傷ついていないと判断するのはおかしい。
「普通」でないことを免罪符にして人を傷つけるな。

白鳥司の「ヒーロー」的一言によって人間関係情報カードバトルは終焉を迎えます。

3人組ですべきことは情報カードバトルでなく、楽しく過ごすこと。

白鳥司から「3人組は壊れない」と無責任な……いかにもヒーローな発言をもらって琴岡みかげという役割は果たされ、終わります。

『ななしのアステリズム』は本当に大好きな作品なのですが、欲を言えばもうちょっと、もうちょっと琴岡みかげが砕け散るまでに時間が欲しかったと思ってしまいます。本当になんでこんなにいい作品が想定通りの完結を迎えられないんだ……と恨み節が出てしまいます。

今ですら、ここまで魅力的に「普通」でないことを描かれているキャラクターはいないと思います。というか今は同性愛表象をこのように行うのは逆に難しいかもしれません。ある程度社会的に受け入れられてきているので。

ああ、そうそう。言い忘れていました。
ここまで私の記事を読みながら『ななしのアステリズム』をまだ読んでいない方へもう1つだけネタバレを。

琴岡みかげが白鳥司に惚れたのは彼女の言葉

小林キナ『ななしのアステリズム1』より

正しい時に正しい言葉を、望んだ形でくれる存在。
琴岡みかげにとって白鳥司はまさにヒーローそのものだったのです。

作品完結時誰が勝利条件を満たしていたのかはぜひご自分の目でご覧ください。
結末だけお知りになりたい方は5巻のカバー裏さえ見ればOKです。5巻を買ってください。電書版にもカバー裏があります。あ、でも全巻買ってください。ぶっちゃけこの記事の1億光年倍くらい最高の作品なので。

そして、勝利条件とは別に各々が幸せになったかどうかもぜひ見届けてください。
『ななしのアステリズム』は比較的開かれた結末、解釈多様な結末を迎えます。

5人の関係をどう意味づけるか、どう名づけるかは読者に委ねられている。そういう意味でもこの作品は『ななしのアステリズム』なのです。

「普通」でなさを罪、そして免罪符と捉え、繰り返してきた利己的な振る舞い。
それを白鳥司と鷲尾撫子という「アステリズム」の仲間によって受け入れられ肯定的に捉えられるようになっていく顛末。
そして、「与えられた運命、それ自体は不幸ではない」という当然の帰結に彼女が気づくまでの過程。

『ななしのアステリズム』という作品が私の中で今も人生の指針であるのは彼女の存在が大きいです。

今もなお煌々と光を放つ14000年後の北極星。
それが「琴岡みかげ」です。

小林キナ『ななしのアステリズム5』より

さて、『ななしのアステリズム』は完結していますが著者である小林キナさんの『先生!僕たちが世界を滅ぼします』は絶賛連載中です。
ぜひ読んでください。本当に。鷲尾撫子と琴岡みかげと白鳥司を足して3で割ったみたいなキャラも出てくるのでぜひ。
他のキャラクターの魅力も言うまでもありません。本当に、読んでください。

最近、鷲尾撫子と白鳥昴の魅力も自分の中で増してきたのでまた『ななしのアステリズム』について語るかもしれません。

最近はVA-11 Hall-Aというゲームにもどハマりしています。もしかしたらこちらも記事化するかもしれません。

それでは、また。

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