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TRPGで半年かけて勝ち取った幸福を喪失した話

破滅の話をします。

今年の4月から11月頭にかけて、ブラッドムーンというTRPGの、さかなさんオリジナルシナリオキャンペーン『あなたへの花』(以下あな花)に参加させてもらっていました。

そこで本編4話(セッション合計およそ150時間)+本編外のRP50時間をかけて勝ち取ったハッピーエンドを後日談で失った話をします。

リプレイが公開されていますが、非常に長く気軽に読んでくれといいづらいのでなるべく読んでなくても分かるようにします。あと過去に書いた関連記事を所々貼っていきますが、読まなくて大丈夫です。


※『あなたへの花』のシナリオ核心部分のネタバレを含みます。ていうか核心の話しかしない。
みずわたアドバンテージドラゴンカレンダー2020の14日目の記事です。15日目のさかなさんの記事の前篇にあたります。


ブラッドムーンとは

まず『ブラッドムーン』(以下ブラムン)というのは現代日本をベースにした世界観のTRPGです。武装した一般人たちが狩人となって吸血鬼とか魔女とかのモンスターと戦うシステムで、世界観についてはルルブの裏表紙のテキストが好きなので一部引用します。

夜を彷徨い、人を喰らう怪物たちはみな実在する。
やつらに気づいてしまった人間の道は三つ。
死ぬか、
壊れるか、
戦うか。

概ねそういう世界観です。



あなたへの花とは

あなたへの花 リプレイ

❀あなたへの花EX『禍災』 リプレイ

上記ブラッドムーンのさかなさんオリジナルシナリオが『あなたへの花』です。全4話構成で、完結後に後日談として本編終了から1年後設定のセッションを行いました。

千葉県の八崎市という架空の街を舞台に頻出する花の名前を持つモンスターたち。かつての友人や知人であった彼らと戦う狩人たち。花の名前のモンスターはどこから来るのか、そしてNPC真城朔が抱える秘密とは……というのが2話までの話。

3話では花の名前のモンスターを生み出していたのが真城朔であること、彼らを狩って自分の力として、自分を庇って吸血鬼になった母親を人間として蘇らせることが目的であること、PCの家族や仲間を殺したのも真城であること……などが明かされます。更には、母親を蘇らせるためには真城が吸血鬼になる必要があること、そうなった上で自分が狩人に殺されるのが真城の望みであることも。

PCには真城の処遇をどうすべきかという問いが投げかけられ、最終的に「真城の願いを成就させず、吸血鬼にさせず、殺さない」という道を選びました。そうしてPCたちは真城を生かし、PC1と真城が二人で旅に出たのが最終回までの話です。


PC1 夜高ミツル

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【秘密:PC1】
あなたは五年前、家族が血を啜る化け物に皆殺しにされる光景を目の当たりにした。
しかしそれは誰に話しても信じてもらえないような有り得ない光景だった。
また、あなたはその時に真城朔らしき人物を目撃しているが、彼の方に覚えはないようだ。
故にあなたはあれは夢だったのだと自分を納得させながら穏やかな日常に身を浸している。

PC1の夜高ミツル。キャンペーン開始時は狩りの世界を知らない一般人の高校3年生。5年前に家族を吸血鬼に襲われて亡くしていて、でもそんな化け物とか実在するわけないし……とその時の記憶を押し込めつつ、バイトで生活費を稼いで一人暮らしをしていました。

家族を亡くして一人生き残った時に「生きてて良かった」と思ってしまった自分に罪悪感を抱いていて、自分には幸せになったり何かを望むような権利はないと考えています。学校とバイトの往復で日々を過ごし、やりたいこともないものだから高校卒業後は大学に行かず就職を予定していました。

キャンペーンを通して、見え隠れしていた真城への感情の重さ奉仕精神が爆発し、最終的に高校と家と世話してくれた親戚と所属していた狩人組織を捨てて、真城に人生を捧げて一緒に旅に出ました。人生を捧げたあとで恋を自覚して恋人になった。順序が逆じゃない?(逆じゃないです)

一年後に死別する恋人たちの置いていかれる方。



NPC 真城朔

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・あなたと同じ高校の男子生徒。高校三年生
・怪我が多く、よく授業をサボる不良生徒だがあなたとの親交は深い

真城朔はPC1の幸福(ブラムンのシステムの一つ。PCの大切なもの)として提示されるNPCです。半吸血鬼の狩人で杭使い。ミツルの数少ない……というかほぼ唯一の友人で、ミツとあだ名で呼んできます。かわいい顔してガラの悪い狩人然とした男で、学校でタバコなんか吸ったりする。文字通り人間離れした身体能力を持ち、一人でモンスターを狩ることさえある熟練のハンター。

吸血鬼でありながら魔女にもなりかけていた母親の力を受け継ぎ、半吸血鬼の範囲を逸脱するほどの力と頑丈さを持ち、時には魔法を行使します。

常に罪の意識にひどく苛まれ、強い希死念慮を抱いています。気の強そうな振る舞いは見せかけで、本来は内気で気弱な性格、人肌が好きな甘えたがり。何をされてもいいくらいミツルのことが大好き。ミツルに望まれたことで、死を思いとどまって一緒に生きることになりました。

一年後に死別する恋人たちの置いていく方。


ここから本編あらすじ。

1話 一般人から狩人へ

2020年5月。ミツルと真城の通う高校が吸血鬼に襲われ、ミツルは真城を助けるために狩りの世界に足を踏み入れることになります。

狩りの最後で真城は吸血鬼を食い殺し、その姿をミツル達に見られたことで逃げ出して行方をくらまします。ミツルは夜の街を半月歩き回って彼を探し出し、戻ってくるように説得します。あの姿を見られたのがまずかったなら自分の部屋を使っても構わない、と合鍵まで渡して。

説得する中で、ミツルの家族を襲った吸血鬼が真城の母親だったことが真城の口から明かされます。そんな悶着もありつつ、結局真城は説得に応じて鍵を受け取り、ミツルに一つ約束をするよう願います。真城に何かあったときは、ミツルが真城を殺すように、と。ミツルは戸惑いながらも、それで真城が安心できるならと約束を交わします。

そうしてミツルは一度きりではなく今後も真城と一緒に狩りを続けるという話になりました。


2話 狩人としての日常

2020年7月。1話の後真城に狩人の特訓をつけてもらったりしつつ、2話では初めての魔女との戦い。

一緒に狩りをして、これからはこうするのが日常になるのかな……なんて思っていたところ、8月になって真城が魔女に拐われて失踪してしまいます。


3話 人生を賭ける覚悟

2020年9月。物語の転換点、再びの魔女との戦い。眠らされた真城を伴って現れた魔女の名前はプルサティラ。元となった人物は真城の幼馴染の皆川彩花で、彼女は自身が真城朔のための魔女であると語ります。

彼女は真城朔がこれまで犯してきた罪や、母親を蘇らせるという目的、真城の身体がほとんどモンスターになりかけていて、味や温度が分からないこと、食事も睡眠も必要としなくなっていることを明かします。その上で、プルサティラは真城を吸血鬼にして彼の目的を叶えさせる、と宣言します。


ミツルはさんざん迷い、悩み、どうしたいのかと問われ、真城を生かすことを決めます。彼と交わした約束を遂行することが間違いなく一つの救いになることを理解しながらそれを放棄し、罪を背負った彼と共に生きて、人生を賭けて支え続けることを決心しました。

プルサティラはミツルの決心に真城の未来を託し、真城が集めてきた母親を蘇らせる力を完成前の状態で解放します。それによって母親は吸血鬼フォゲットミーノット(以下FMN)として蘇り、PCたちは彼女を倒すことになります。

真城は母親であるFMNの側につき、1話でミツルが渡した鍵を投げ捨ててミツルの元から逃げ去りました。


4話 全てを擲っての逃避行

2020年9月、3話の翌日。蘇ったFMNとの戦い。

真城は狩りの中で狩人たちに討たれることを望んで、ミツルと相対します。ミツルはそれでもなお真城の手を取ることを望んで説得し、紆余曲折を経て真城はミツルの傍に戻り、罪を背負って生きることを決めました。3話で投げ捨てられた鍵も、再びミツルから真城へ渡しなおします。

真城は狩人たちと共にFMNを倒しこれで一件落着……と思いきや、真城は狩人の組織であるD7に連れ去られてしまいます。D7は超常現象の研究機関で、通常の半吸血鬼の範囲を逸脱した特殊な体質や魔法の力を持つ真城に、以前から目をつけていました。

連れ去られた真城を助けるため、ミツルは仲間の手を借りてD7に襲撃をかけます。高校を辞め、家を捨て、真城を連れて八崎市を抜け出して北へ向かって旅に出ました。


……というところまでが、あな花本編の話!


4.1話(サドンデス) 友人から恋人へ

それから後日談として一年後の話をやることが決まり、それに向けて本編後のRPが始まりました。ミツルと真城の差し向かい、判定もシーンも何もない延々続くなりチャバトルです。

2020年10月。D7襲撃の翌日、真城を連れたミツルがホテルにチェックインするところからサドンデスは始まります。

無駄に長くややこしい話なので結末だけ先に書きますが、サドンデスを通じて二人は恋人同士になります。

サドンデスは本文を読むと異常に長いのですが、
 ミツルが真城を好きだと自覚し、それを告げる。
→真城が罪人である自分はミツルの隣にいられないと泣く。
→ミツルがそれでも好きだし、幸せにしたいと押し切る。
→真城が泣く。
概ねこの要素のループでできています。(クソ攻略情報)

これを更にややこしくしているのが真城の体質です。真城は色欲の相を持っていたFMNの力を受け継いでいるため、本人の意志に関わらず周囲を誘惑し性欲を喚起する体質になってしまっています。そのために望まぬ性交をこれまで数え切れないほど繰り返してきた真城は、ミツルが自分を好きだと言ってくるのも体質のせいではないかと怯えてしまいます。
(この辺りの事情はさかなさんの記事で詳しく書いてもらえます)


最終的にミツルはなんとか自分の気持ちを証明して押し切って、真城と結ばれます。もっとも真城はミツルに好きだと言われる前から何されてもいいくらいミツルのことが好きだったわけですが……。(恋愛ではないけど)

サドンデスは二人が結ばれるところまでですが、この後二人は北海道で春が来るまでのおよそ半年をマンスリーマンションで幸せに過ごし、それからまた旅を再開します。そして二人で過ごすようになってからおよそ一年後の秋に、故郷である八崎市に立ち寄ることになります。



EX 最期の一日

2021年10月。4話の最後、D7襲撃から概ね一年後。

二人は久しぶりに八崎市に戻り、かつての仲間たちと旧交を温めます。そして満月の日、街を吸血鬼が襲います。吸血鬼の名前はグロキシニア、かつて真城の母を吸血鬼にした元凶です。グロキシニアは真城を襲って彼の持っている魔法の力を自分の物とし、街を火の海へと変え、真城を連れ去ります。

真城はミツルの目の前で犯され、傷つけられ、ミツルは彼を助けることが叶わずに打ちひしがれます。それでもなんとか真城をグロキシニアの手から取り戻し、決戦が始まります。

グロキシニアとの戦いで狩人たちは苦境に立たされ、GMから危機的状況の打開措置が提案されます。PLには3つの選択肢がありました。

街と真城を捨てて逃げ出し、再戦する。
真城の死と引き換えにグロキシニアを殺す。
③打開措置を利用せず、狙われたPCを見殺しにして戦いを続行する。

そしてPCの忽亡ゆかりさんがあと一撃を受ければ死亡するという状況になり、いよいよどれかを選ばなくてはいけなくなりました。

①を選べば、街と引き換えにPCやPCと親しいNPCは誰も死なずにすみます。真城をグロキシニアの元に残すことにはなりますが、死なせるようなことはないと確約されています。しかし、ミツルは真城を置いて逃げることはできず、他のPCも仲間である真城や街の人々を見捨てることはできません。

なので、これは実質真城を殺すか、ゆかりを殺すかの二択でした。そして真城を殺すという選択を取れるのは、真城と最も関係の深いPCであるミツルのPLしかいません。

全員で話し合う中で、ゆかりさんのPLを含めた私以外の3人は③を選びました。私がそれに乗れば、ゆかりさんが死んで真城は生きることになります。でも、それを選ぶことはできませんでした。

真城は誰かが死ぬことをひどく嫌います。助けられる人は助けたいと思っていました。ゆかりに対しては特に、かつて彼女の弟を手にかけていることで強い罪悪感を持っています。真城が、ゆかりが殺されるのを見過ごすはずがないのです。

一方で多くの人に犠牲を強い、今もまた禍災のきっかけとなってしまっている真城がここで狩人たちを救って死ぬのは筋が通ってしまっています。真城を生かし、罰から遠ざけて甘やかしてきたミツルが「お前が許した真城がやってきたのってこういうことだよ?」と真城を取り上げられることも同様です。

物語上一番必然性と説得力のある展開から逃げられず、私は真城が死ぬ選択をとりました。

(分かりづらかったので追記)選択はPCとしてではなく、あくまでPLとしてのものです。ミツルは最後まで真城の死を認めず、何を犠牲にしてでも真城だけは救いたいと思っていました。ミツルの感情ベースで選んだらゆかりさんが死んでたと思う……(小声)


…………。


いやっうるせえ! 文脈とか知るか! やだよ~逃げようよ~ってずっと泣いてたんですが……いや知らねえよ文脈とか……マジで…………。真城が生きてるのが一番いいに決まってるじゃん……本当に嫌だ……。なんで私は選んでしまったんですか?(物語の引力が……)(そういうの本当にいいから……)

そうして選んだ結果、真城はグロキシニアと相討って命を落とします。「ありがとう」でも「好き」でもなく、「ごめん」と「死なないで」だけを言い残して。ミツルの元を離れることを後悔し、戻りたい、一緒にいたいと願いながら。
花の名前のモンスターたちがそうだったように、花となって消えていきました。

真城が散った後に残ったのは、彼が肌身離さず持ち続けていた、かつてのミツルの部屋の合鍵だけでした。



EXを終えて

以上があなたへの花あらすじです。いかがでしたか? いかがもクソもないんだよな。死にました~俺の恋人は死にました。俺が死なせました。俺のせい俺のせい~!

こうしてミツルは、半年に及ぶキャンペーンの末に人生の全てだった真城を永遠に喪失してしまいました。家族とも死別しているミツルには帰る場所さえありません。
「守れなかった」「死なせたくなかった」「せめて一緒に死ねればよかった」、そんな後悔を抱えたままミツルの人生は続いていきます。死なないでと言われたため死ぬことすらできず。一人で。

何が嫌って、もし(ありえないけど)あの選択肢をやり直せたとしても私はやっぱり真城を死なせるんだろうなってことですよ……。私は間違ってない。物語の正しさだけが心の支え。正しさの結果心は死んでるが……?


さて、ブラムンの世界には魔女と、魔女の扱う魔法が存在します。真城がそれを望んだように、死者を蘇らせることも可能です。ではそれについてあな花というシナリオではどういう解釈を採っているのか、2話のフランさんのセリフを引用させてもらいます。

乾咲フラン:「……お前達が作っているのはただの精巧なぬいぐるみなんだ。どんなに姿かたちがそのままでも、絶望的に違うんだ。死は覆らない。命は戻らない。」

死者は絶対に戻りません。仮に蘇ったとしても、それは本人ではなく、よくできたそっくりさんでしかありません。この辺りの取り扱いは作品によって様々ですが、あな花はそういうお話をやってきました。
だから仮にミツルが魔女に縋って真城を蘇らせた所で、死んだ真城にはもう二度と会えないのです。救われることもありません。むしろ、本人じゃないと分かっていながら自分勝手に蘇らせてしまったことに苦しみ、悩み続けることになります。
真城を蘇らせることはミツルの孤独を慰めるものにはなり得ますが、ミツルと真城のどちらにとっても、救いには決してなりません。


この結果を受けて私とGMは大発狂。セッション中に泣き、終わったら通話に上がってそのまま泣く。「本当に嫌」「なんで選んじゃったんだろ……」「逃げたかった……」と延々クダを巻き、翌日平日だから仕事をしながら泣く。泣くなよ。隣の人が泣きながら仕事してる時の後輩の気持ちってどうなんですかね?

Q.そんなに後悔するくらいならどうして選んだんですか?

A.うるせえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
(本当に怒っちゃうから言わないでね)


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そして発狂した結果がこう!
(今数えたら予定12個ありました)

EXは設定上2021年10月の話なので、なんとリアルタイムだと1年間の猶予があるんですね~。そこで死が確定してるのにそうとは知らずいちゃつく恋人たちのRPを1年分やることになりました。マジ????????? なりましたっていうかもう始まってるんだよな。2回やりました。

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なんだこいつ………………。

そこに存在するものを書き写していく行為なので、我々はこれを写経と呼んでいます。


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半年かけて掴んだ幸福を失うと人間は”終わる”ということが分かりますね~。終わりました。お疲れさまです。同情の言葉、待ってるぜ!



おまけ 夜高ミツルという男/伝えられなかった愛の話


真城朔が好きだった。

初めは数少ない友人として、家族のいない自分の孤独を救ってくれた相手として。その孤独が彼の母親によってもたらされたものと知っても、一緒にいたい気持ちは変わらなかった。真城と友達でいたかった。真城の支えになりたかった。

その気持ちが揺らいだのは、真城の抱える罪を知らされたとき。彼が願ったとおり母親を蘇らせ、約束を守って殺してやることこそが真城にとっては幸せで救いのある結末になるのだろうかと思った。
だけど、そうはしたくなかった。幸せも救いも、生きてこそ迎えてほしかった。そしてそれをあげられるのはミツルだけだった。

ミツルは真城の手を取った。

差し出した手を何度も振り払われた。殺してくれと、諦めてくれと、真城とは関係のない場所で幸せになってくれと言われた。罪を公にして然るべき罰を受けるのが自分にはふさわしいのだと言われた。
それでも諦められなかった。手離せなかった。真城の望む罰から遠ざけて、幸福と安息と笑顔だけを与えたかった。真城を罰するものがあるなら、世界の果てまでも逃げるつもりだった。

真城が好きだった。真城と過ごす時間が好き。細い身体を抱き締めるのが好き。躊躇いがちに自分の背中に回される腕が好き。目が合ってふにゃりと微笑む顔が好き。その頬に触れるのが好き、手に顔を擦り付ける仕草が好き。キスをするのが好き。名前を呼ぶのが、呼ばれるのが好き。寄り添いあって眠るのが好き。

ミツになら何をされてもいいと言われた。真城にならなんでもしてやりたかった。
真城が喜んでくれることが、ただそれだけで嬉しかった。何を捨てても惜しくなかった。家も、学校も、家族代わりに世話をしてくれた親戚も、生まれ育った故郷も全て。この手に掴むものは真城一人で良かった。
困らされることも悩まされることも、苦痛では決してなかった。真城の重ねた罪も、真城自身が厭う体質も、真城の苦悩も、彼を手放す理由にはなり得なかった。真城を苛むものの全てを取り去れないことだけが、ミツルにとっては苦しかった。

ただ一人の友人で、かけがえのない恋人で、人生を分かち合う家族だった。幸福な時間を過ごした。それは間違いなく、人生で一番の。

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その感情が愛だと気づいたときには、もう致命的に手遅れだった。

「愛してる」、その言葉を真城が聞くことはない。



おまけ2 供養

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EX直後の一人語りや、真城を亡くしてからも一人で狩りを続けているミツルのifなどを未練がましく書いています。未練しかない。ポイピクには供養というカテゴリがあることですね~。

「かつて恋人を亡くした無愛想で暗いけど仕事はできる男」というキャラ造形を見るとのたうち回る体質になっちゃったの、かなり生きるのがつらくて毎日うめいています。見よう、アンナチュラル! アマプラの配信は終わりましたが……。



そしてこれは破滅後編!
キャンペーンのシナリオ組み立てと真城の話です。当記事と合わせてどうぞよろしくおねがいします。


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