見出し画像

Poem)聴こえる

声を聴いてみる
あの人この人の
昔住んでいた街の、誰にも
そんな記憶があって
良く言われたこともあったし、
悪く言われたこともあった
背の違いや足の速さの違いなんて
問題ではなかった
きみの記憶にある俺
俺が記憶するきみのあいだには
隔たりがあったのかもしれない
だけど、いいんだ、
それはそれ、そういうもの
今に続くことと
今、きみを知るということ
集めた観念語を端から捨てるがいい
きみの憧れと
俺の現実が近づいて行く日が
コングラチュレーションと言われる日である
奏でたいと思うよ
窓ガラスがビリビリ言うような響きさ、
肋骨を共鳴させて
それはなんてうっとりする音楽だろう
優しさっていうのは
目に見えないメロディーのようなもの、
音はたしかにここに来て去っていくが
優しさは残っていく
心に、ひだまりを足していけと、
去っていった善き人
あの人達に言いたかった言葉を
どこに放せばいいのか
黒い瞳が空に残る
振り向いて残していった瞳の累積
空の記憶は
時々降ってくる雨が連れ立ち
吹いてくる風の中に聴こえる


#詩   #現代詩


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?