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Poem)傘…

その人は傘屋さんだった。
通り雨がよく来る年だった。
お店は駅の通りを一筋左へ入った角にあり、
「傘あります」、と
白い貼り紙があるだけだった。
通行人は雨に気づくと、傘を1本手に取っては、
横に置かれた青い箱に、お金を置いていった。

昭和の木枠のガラス戸。店の奥でその人は、
傘を作り、毎日貼り紙の文字を書いていた。
移りゆく人々の頭の中に、
反芻されるこの言葉は、
街の灯りとなって、光っていた。


#Arimの詩 #詩 #現代詩




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