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Poem)流れ星のような風が…

拾いものをして歩くなんて、
とお母さんは言った。
拾いものをして歩けるなんて、
と私は思った。
ねえ、お母さん、お母さんは私に命を授けて下さった。
でも私はどこから来たのだろうね、
この命を拾うように見つけて、
この命を身体いっぱいに貰って、
この命と一緒にお母さんに出会った。

時間てみんなをベールのように包み込む
時間てみんなにかかる雨のよう。
でもね、人が拾いたくなるものは
みんな違っていて。
時の卵を両手に抱えて歩いていく。
今日は何を拾ったの、
握った掌、固く結んだ心には、
大事なものが包まれている。
口を開く時、誰かにそっと話し出す声には、拾い物の気配が立ち上がって。
街角で話し込んでいた人の会話が一切れ、通りがかった古本屋のはるかな昭和のインクのシミを一滴、古着屋のお兄さんの流すロックな一音、お寿司屋の大将の甘い昼休みのお餅。
橋の袂ですれ違う自転車通学の子供の、流れ星のような風が美しい。
拾いものをして歩く。


#詩    #現代詩  #Arimの詩


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