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Poem) フランソワと名づけてみようか…

道を歩いていると、にわかに
フランソワという名前が浮かびあがる
今日は、最初に出会った鳥に
フランソワと名づけてみよう
可憐な花を見つけたら
フランソワと呼んでみよう

細い道に差しかかり、すると
コータという名前が私を見つけた
では2番目に出会った鳥は
コータと呼んでみよう
次の可憐な花にもコータと呼んでみよう

名指すことによって、変わっていく風景がある
夜の闇に沈む木立を、月明かりの調べが
浮かび上がらせるように
静けさに包まれた家並みや、道を横切る猫、
道路の標識、置き去りにされた工事現場の
機械に、朝の指先が触れていくように

ふうっと、どこからか吹いてくる風は
彫刻刀をあてるように
古いシルエットに、いつも
新しい角度と陰影をつけていく

この風を、真似てみたいと思う時があり
私たちは名前を呼ぶことによって
目の前に横たう混沌を1つ、2つと
美しい形に取り出していくことができる

鳥は お互いをなんと呼びあっているのだろう
植物は なんと声をかけあっているのだろう

世界が輝いていくように、
世界で1つだけの、1人だけの
あなたときみを
私は今日からなんと呼ぼうか

Arim

#現代詩  #詩


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