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位相空間を用いた素数無限個の証明

 
 
 
集合$${X}$$ に次の条件 (i),(ii),(iii)を満足する$${X}$$ の部分集合の族$${\mathcal{O}}$$が指定されているとき、$${X}$$に位相が定義されたという。
(i)空集合$${\phi }$$ および$${X}$$自身は$${\mathcal{O}}$$に属する。
(ii) $${\mathcal{O}}$$の任意個の集合の合併(和集合)は$${\mathcal{O}}$$に属する。
(iii)$${\mathcal{O}}$$の有限個の集合の共通部分は$${\mathcal{O}}$$に属する
このように位相が定義された$${X}$$を位相空間という。$${\mathcal{O}}$$に属する集合を$${X}$$の開集合という。$${X}$$の部分集合$${F}$$ の補集合$${{{F}^{c}}=X-F}$$ が開集合の時、$${F}$$を閉集合という。位相空間$${X}$$において、$${B=\left\{ {{O}_{\alpha }} \right\}}$$を$${\mathcal{O}}$$の部分集合とするとき、もし$${X}$$の任意の開集合が$${B}$$に属する開集合の合併として表される場合、$${B}$$は$${X}$$の基底をなすという。
いまつぎのような位相空間を構成する。$${X=\mathbb{Z}}$$ における開集合を
$${a,b\in \mathbb{Z}}$$で、$${b\ne 0}$$となる集合$${\left\{ a+bi:i\in \mathbb{Z} \right\}}$$の和として表されるものする。
いいかえれば、開集合$${\mathcal{O}}$$の基底$${B}$$として$${\left\{ a+bi:i\in \mathbb{Z} \right\}}$$全体を指定する。
このようにして得られる開集合が位相の条件を満たすことは、つぎのように簡単にわかる。
(i)は$${a=b=1}$$とおくと、
$${\left\{ 1+i:i\in \mathbb{Z} \right\}=\mathbb{Z}}$$であるから、$${X}$$自身は$${\mathcal{O}}$$に属している。空集合は合併といったとき、何も足さないもののことであり、$${\phi \in \mathcal{O}}$$である。
(ii)は開集合の定義より任意の合併と定義しているのだから明らか。
(iii)の条件だけ吟味すればよい。有限個の共通部分が$${\mathcal{O}}$$に属するをいうのには2個の場合、$${\left\{ a+bi,i\in \mathbb{Z} \right\}\cap \left\{ c+di,i\in \mathbb{Z} \right\}}$$ が開集合であることを見ればよい。それには
$${Q=\left\{ a+bi,i\in \mathbb{Z} \right\}\cap \left\{ c+di,i\in \mathbb{Z} \right\}}$$
が空集合かあるいは$${\left\{ x+yi,i\in \mathbb{Z} \right\}}$$ と書けることを言えば十分である。いま、$${Q\ne \phi }$$とする。$${Q}$$から、$${a+bi}$$, $${c+dj}$$を選んで、
$${r=a+bi=c+dj}$$とおく。$${b\ne 0,d\ne 0}$$であったことを思い出そう。そして、$${m}$$ を$${b}$$と$${d}$$の最小公倍数とする。
$${Q=\left\{ r+mi,i\in \mathbb{Z} \right\}}$$
である。なぜなら、$${r=a+bi=c+dj}$$の仮定から、$${\left\{ r+mi,i\in \mathbb{Z} \right\}\subset Q}$$はあきらか。次に、
$${r'=a+bi'=c+dj'\in Q}$$とすると、$${b|\left( r'-r \right)}$$, $${c|\left( r'-r \right)}$$
がわかり、$${m}$$が$${b}$$ と$${d}$$の最小公倍数であることから$${m|\left( r'-r \right)}$$。
これは、$${r'=r+ml}$$となる$${l}$$の存在を意味するので、$${Q\subset \left\{ r+mi,i\in \mathbb{Z} \right\}}$$がわかった。結局$${Q=\left\{ a+bi,i\in \mathbb{Z} \right\}\cap \left\{ c+di,i\in \mathbb{Z} \right\}}$$
が空集合かあるいは$${\left\{ x+yi,i\in \mathbb{Z} \right\}}$$と書けることがわかった。
命題:開集合$${\left\{ a+bi:i\in \mathbb{Z} \right\}}$$は同時に閉集合である。
証明:補集合$${{{\left\{ a+bi:i\in \mathbb{Z} \right\}}^{c}}}$$が開集合であることを示せばよい。$${\mathbb{Z}}$$ は$${\left\{ x+bi:i\in \mathbb{Z} \right\}}$$,$${x=0,1,\cdots ,b-1}$$ の$${b}$$ 個に分割され剰余類$${\mathbb{Z}/\mathbb{Z}b}$$を得る。$${a\equiv {{a}_{0}}\left( \bmod b \right)}$$,$${0\le {{a}_{0}}< b}$$ とすると
$${{{\left\{ a+bi:i\in \mathbb{Z} \right\}}^{c}}=\bigcup\limits_{\begin{smallmatrix}0\le x< b \\x\ne {{a}_{0}}\end{smallmatrix}}{\left\{ x+bi,i\in \mathbb{Z} \right\}}}$$
となりこれは開集合である。
 
さて、素数全体が無限個を証明しよう。やはり有限個しかないと仮定して矛盾をだす。それを、$${{{p}_{1}},{{p}_{2}},\cdots ,{{p}_{k}}}$$ とする。$${\bigcup\limits_{s=1}^{k}{\left\{ {{p}_{s}}i,i\in \mathbb{Z} \right\}}}$$ を考える。$${\left\{ {{p}_{s}}i,i\in \mathbb{Z} \right\}}$$は上の命題より閉集合であった。閉集合の有限和は閉集合である。したがって$${\bigcup\limits_{s=1}^{k}{\left\{ {{p}_{s}}i,i\in \mathbb{Z} \right\}}}$$は閉集合である。われわれの位相では”空でない開集合は無限集合でなければならない”。というのはそもそも基底$${\left\{ a+bi:i\in \mathbb{Z} \right\}}$$が無限集合であるからである。ところが$${\bigcup\limits_{s=1}^{k}{\left\{ {{p}_{s}}i,i\in \mathbb{Z} \right\}}}$$はある素数を因子とする整数全体を表しているので$${\bigcup\limits_{s=1}^{k}{\left\{ {{p}_{s}}i,i\in \mathbb{Z} \right\}}}$$の補集合は$${\left\{ -1,1 \right\}}$$である。つまり2点集合$${\left\{ -1,1 \right\}}$$が開集合となって空でない開集合は無限集合でなければならないことに矛盾している。証明終わり。

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