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ランダムに選ばれた2数が互いに素である確率

 

1.たがいに素である確率

ランダムに選ばれた2つの自然数$${n,m}$$ がたがいに素である確率は $${\frac{6}{{{\pi }^{2}}}}$$

であることは古くから知られていたのだろう。

これは、素数$${p}$$を無限に含む 無限積

$$
\left( 1-\frac{1}{{{2}^{2}}} \right)\left( 1-\frac{1}{{{3}^{2}}} \right)\left( 1-\frac{1}{{{5}^{2}}} \right)\left( 1-\frac{1}{{{7}^{2}}} \right)\cdots \left( 1-\frac{1}{{{p}^{2}}} \right)\cdots
$$


から計算できる。すなわち、リーマンのゼータ関数$${\zeta \left( s \right)=\sum\limits_{n=1}^{\infty }{\frac{1}{{{n}^{s}}}}}$$の$${s=2}$$における値が


$$
1+\frac{1}{{{2}^{2}}}+\frac{1}{{{3}^{2}}}+\cdots =\frac{{{\pi }^{2}}}{6}
$$

であるし、オイラーがあたえた等式


$$
\zeta \left( s \right)=\sum\limits_{n=1}^{\infty }{\frac{1}{{{n}^{s}}}}=\prod\limits_{p}{{{\left( 1-\frac{1}{{{p}^{s}}} \right)}^{-1}}}
$$


より上の無限積の値がわかる。ランダムに選ばれた自然数$${n}$$ が$${p}$$ の倍数である確率は$${\frac{1}{p}}$$ 。 ランダムに選ばれた2つの自然数$${n,m}$$がいずれも$${p}$$の倍数である確率は$${\frac{1}{{{p}^{2}}}}$$。2つの自然数$${n,m}$$がそれぞれの素因数分解ですくなくとも一方が$${p}$$を含まないという事象を$${{{A}_{p}}}$$ とすると $${P\left( {{A}_{p}} \right)=1-\frac{1}{{{p}^{2}}}}$$ 。$${n,m}$$ がたがいに素という事象は、それぞれの素因数分解ですくなくとも一方が$${2}$$ を含まない、$${3}$$を含まない、$${5}$$ を含まない$${ \cdots }$$$${p}$$を含まない  $${\cdots}$$ということから生じる同時事象 $${\bigcap\limits_{p}{{{A}_{p}}}}$$ となる。そして、事象 $${{{A}_{2,}}{{A}_{3}},{{A}_{5}},\cdots}$$ が互いに独立であることからその確率は$${P\left( \bigcap\limits_{p}{{{A}_{p}}} \right)=\prod\limits_{p}{P\left( {{A}_{p}} \right)}}$$より計算される。

自然数$${p}$$ が素数であるとは$${p\ne 1}$$ であり、$${p}$$ の正の約数が1と$${p}$$だけのことである。任意の自然数は素因数分解(素数の積と書き表す)でき、順序を度外視すれば一意的である。すなわち、$${n,m}$$は素数$${{{p}_{1}},{{p}_{2}}\cdots .{{q}_{1}},{{q}_{2}},\cdots}$$ を使って


$$
n=p_{1}^{{{e}_{1}}}p_{2}^{{{e}_{2}}}\cdots p_{t}^{{{e}_{t}}} ,m=q_{1}^{{{f}_{1}}}q_{2}^{{{f}_{2}}}\cdots q_{s}^{{{f}_{s}}}
$$

とかける。自然数$${n,m}$$ がたがいに素ということは、これらの因数分解で因数の集合が排反$${\left\{ {{p}_{1}},{{p}_{2}}\cdots  \right\}\cap}$$ $${\left\{ {{q}_{1}},{{q}_{2}},\cdots  \right\}=\phi}$$ということであり、$${n}$$ と$${m}$$ の最大公約数$${\gcd \left( n,m \right)=1}$$ といってもよい。ランダムに選ばれた自然数$${n}$$が$${p}$$ の倍数である確率は$${\frac{1}{p}}$$というのは、さいころを振って出る目の確率がそれぞれ$${\frac{1}{6}}$$ と定めるのと同じ論理である。値を定めるためにさいころを無限回振る必要はない。整数の可換環 $${\mathbb{Z}}$$ のイデアル$${p\mathbb{Z}}$$ でわった剰余類

$$
\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}=\left\{ \bar{0},\bar{1},\cdots ,\overline{p-1} \right\}
$$

をかんがえる。$${\bar{k}}$$ というのは$${p}$$ で割ったあまりが$${k}$$ となる整数全体である。$${P\left( {\bar{0}} \right)=P\left( {\bar{1}} \right)=P\left( {\bar{2}} \right)=\cdots =P\left( \overline{p-1} \right)}$$ と考えるのは自然だし、 $${P\left( {\bar{0}} \right)+P\left( {\bar{1}} \right)+P\left( {\bar{2}} \right)+\cdots +P\left( \overline{p-1} \right)=1}$$も成り立つだろう。したがって自然数$${n}$$が$${p}$$ の倍数である確率=$${P\left( {\bar{0}} \right)=\frac{1}{p}}$$ となるのである。

選ぶ自然数の個数は2個に限らない。つぎのように一般化できる。

定理:ランダムに自然数を$${{{n}_{1}},{{n}_{2}},\cdots {{n}_{l}}}$$ を選ぶとき$${l\ge 2}$$ のとき

$$
P\left( \gcd ({{n}_{1}},{{n}_{2}},\cdots {{n}_{l}})=1 \right)=\frac{1}{\zeta \left( l \right)}
$$

$${l}$$ は奇数でもよいが$${\zeta \left( l \right)}$$ は$${l}$$ が偶数の時きれいな形で

$$
\frac{1}{\zeta \left( 2 \right)}=\frac{6}{{{\pi }^{2}}}=0.6079271019...,\frac{1}{\zeta \left( 4 \right)}=\frac{90}{{{\pi }^{4}}}=0.9239384029...\frac{1}{\zeta \left( 6 \right)}=\frac{945}{{{\pi }^{6}}}=0.9829525923....
$$

と意外に大きな値である。また、$${l=1}$$ につては最大公倍数というものが定義できないので$${\zeta \left( 1 \right)={{\prod\limits_{p}{\left( 1-\frac{1}{p} \right)}}^{-1}}=1+\frac{1}{2}+\cdots =\infty}$$ すなわちランダムに自然数を選んだ時、それが素数である確率は0ということだろう。




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