見出し画像

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』感想

この記事はゲームの内容についてのネタバレを含みます。

良い点

ダンジョン

ブレワイのメインダンジョンは(ハイラル城を除くと)神獣の内部を攻略するという点が共通しており、やや景観に乏しいという印象を受けていたが、本作は空に地底にとロケーションに幅があって楽しい。特に風の神殿が素晴らしいと感じた。本作のリトの村は言うなればブレワイのゾーラの里ポジションで、かなり露骨に誘導されていたこともあって当初からヴァ・ルッタばりの演出を期待していたが、その期待にしっかり応えてくれたという感想。個人的には、雷の神殿の時オカ辺りの雰囲気を彷彿とさせるホラー感も好きだった。

小ダンジョンとして洞窟が増えたのも嬉しい。トーレループの実装により追加できた要素だと思うが、天井のある狭い場所で隠し要素(マヨイ)を探したり、最奥でフィールドボスと戦ったりするのは従来のゼルダっぽさがあってシンプルに面白い。一つだけケチを付けるなら、サトリによる洞窟のマッピングは、マヨイの落とし物を取得済のものについては光らせないか色を変えるかして欲しかった。


ボス戦

賢者との共闘には正直思う所もある(後述)が、それを差し引いてもボス戦は面白かったと思う。中でもフリザゲイラ戦のダイナミックな空中戦闘と、ガノンドロフ戦の回避ジャストの応酬は燃えた。主人公の固有スキルと思われていた技を敵が使ってくる展開で熱くならないわけがない。逆にミネルのゴーレムVS奪われしゴーレムはミネルの運動性能の悪さも相まって相当苦労させられたが、シリアスな展開と相反する絵面のバカバカしさは嫌いじゃない。戦闘を盛り上げるBGMも全体を通して素晴らしい出来。

フィールドボスでは、ライネルを超える最強の敵としてグリオークが追加された。これは結構賛否両論あるようだが、ブレワイでライネルは狩り尽くしたぜと舐めてかかったプレイヤーに新たに絶望を与えるという意味では良いボスだと思う。最後の攻撃を凌いで反撃を食らわせれば(基本的には)勝ちというコンセプトも好きだし、その攻防が空を見上げる形で行われるというのも、空が舞台の一つである本作らしくて洒落ていると感じた。


キャラクター

ゼルダシリーズでは珍しく前作から直結となる続編ということで、かつて共闘した(あるいはまだ未熟だった)仲間達の成長した姿が見られるのは純粋に嬉しい。描写に一番力が入っていると感じたのはチューリだが、個人的にはルージュとリンクの関係性も良い。大人プルアのダウナーな「チェッキー」もアーイイ……。

本作からの新キャラも、王として気品溢れる振る舞いをしつつも、妻のソニアに肘打ちを入れられたりと微笑ましい姿も見せるラウル、ラウルの姉でエンジニア気質の美ケモと属性盛り沢山のミネル、前作のカッシーワよろしくリンクの相棒となる新聞記者のペーンなど、愛着の湧く人物が多い。ただ、シドの幼馴染兼許嫁のヨナは与えられた役の大きさの割に唐突感が否めず、彼女に関してはブレワイの時点でムズリ辺りが存在を仄めかしていれば綺麗な流れだったと思うが、キャラデザ自体は好みなので、まあいいんじゃないでしょうか(ぼんやりした感想)。

それから忘れてはいけないのがコーガ様。ブレワイで落下死したかと思いきや、地底で生き延びてクラフトガチ勢になっていたという経緯が面白すぎる。あと、コーガ様がリンクの力に嫉妬する場面はギャグ風に描かれてはいるが、その実秘石を求めるガノンドロフの姿とも重なる構図になっていて、それに気付いた時には多少の物悲しさを感じてしまった。イーガ団の偽ゼルダ作戦もしょうもないことやってんなあと思ったけど、ゼルダを騙るという企みはガノンドロフのそれの縮小再生産だし、そこはやっぱりガノンドロフのミームを継いだ集団なんですよね。


宝箱を開けた時のアイテム交換の仕様

正直これが一番感動したまである。一応説明すると、ブレワイでは宝箱を開けた時に武器のアイテム欄が一杯だと、アイテム欄に空きを作ってから再度開ける必要があり、これが大変ストレスだったのだが、本作ではその場で入れ替えられるようになった。実に的を射た改善だと思う。


各武器への個性の付与

ブレワイではライネルの武器が強くて他が空気と化していたが、本作は武器の威力の大半を素材に依存する仕様になったゆえか、武器ごとに様々な個性が付与されている。特にゾーラの武器は「水に濡れると威力が二倍になる」というヤケクソじみた性能であり、攻撃力が高い素材を付け、シドの能力と併用することで凄まじいダメージ量を叩き出せる。まあ結局はラッシュ攻撃が強い王家の武器が無難な選択になりがちだが、ブレワイに比べれば多様性が増したと思う。


属性攻撃の仕様

ブレワイでは属性攻撃をするためには事前に専用の武器や矢を用意しておく必要があったが、本作ではスクラビルドで各属性に対応する素材を付ければよいので、敵の弱点を付いたりフィールドの障害を突破するのが楽になった。特に矢の種類が一つにまとまったのは(毎回属性を付けるのが面倒というデメリットもあるが)画期的な仕様だと思う。


矢のドロップ率

ブレワイでは矢が枯渇する事態が頻繫に起こり、その都度店で購入して回る必要があったと記憶しているが、本作は(自分の体感だが)矢のドロップ率が高く、種類が統一されたことも相まって、とりあえず敵の拠点等を襲撃すれば収支プラスになりやすい。矢はとにかく便利だし、謎解きなど戦闘以外の場面で使う機会も多いので、手に入りやすいに越したことはない。


足跡モード・コログのお面の無料実装

これらはブレワイではDLC要素だったが、本作ではゲームを進めれば無料で手に入るようになり、フィールドやコログのミの探索がグッと楽になった。特に後者は重要で、少なくともポーチを最大まで拡張する分のコログのミを確保するのは相当簡単になったと思う。むしろこんなに集まるならポーチはもっと広げて欲しかった。


料理レシピの実装

ブレワイではとにかくマックス系の素材をそのまま鍋にぶち込むのが大正義で、本作も(素材の入手難度が上がったとはいえ)そこは変わらないのだが、料理レシピが実装されたことで、他にも色々作ってみようという気にはなる。プレイヤーが作ったことのない料理を提供してくれるNPCがいるのも気が利いている。


四地方のボスと再戦できる

ブレワイではカースガノンとの再戦はDLCを待つ必要があったので、これは嬉しい要素。が、ヘドロライク・イルバジア・奪われしゴーレム・コーガ様(欲を言えばユン坊も)と再戦できないのはウツシエ的にも困る。こいつらが地底にいたらもっとテンション上がったんだけどな~。ユン坊もガノンドロフが生み出した幻影とか何とか理由を付ければ行けるでしょ。


気になった点

ストーリーとオープンワールドの食い合わせの悪さ

本作のストーリーをガッツリネタバレしてしまうと、「本物のゼルダは過去に飛ばされていて、異変の発生後に活動が確認されていたゼルダはガノンドロフが生み出した偽物。ゼルダは時を越えるべく秘石を飲み込んで白龍となり、同じく過去に飛ばされたマスターソードを修復していた」となる。

この「ゼルダの行方」がゲームの本編を貫く謎として提示されているわけだが、本作はよほど「適切」なストーリーの進め方をしなければ謎の答えがほぼ察せられてしまい、そこからさらに一捻りあるわけでもないというのはやや興醒めだった。

制作側としては、「(龍の泪クエストを進めずに)四地方の異変を解決する→ハイラル城で偽ゼルダの正体を知る→ミネル・デクの樹サマを救出する→龍の泪クエストでゼルダの真相を知る→マスターソードを取り戻す→ガノンドロフとの最終決戦に挑む」という流れを想定しているようだが、本作はオープンワールドなので当然この順序通りに行くとは限らず、進め方次第では本来伏せられて然るべき(「伏せられていた方が面白い」と言い換えた方が適切か)情報にも早期からアクセスできてしまうという問題がある。具体的には、「龍化の法」の存在は龍の泪クエストの中途で開示してしまうのではなく、プレイヤーがどのような進め方をしても物語の最終盤まで隠し通すようにすべきだったと思う。

自分の場合は、「リトの村→デクの樹サマ→ミネル→残りの三地方→龍の泪コンプ→マスターソード→ハイラル城→最終決戦」という風に進めたので、ハイラル城の時点でほぼ全ての謎を解決してしまっており、ゲーム中でも戦いの後の会議がグダグダになったのには苦笑してしまった。いやもうリンクは自分が知ったことを早くプルアに言えよと。ミネルも気まずいだろ。まあこれは流石に極端なケースというか、天邪鬼な進め方をした自分に非があるし、そういう展開もオープンワールドの醍醐味だと言われれば返す言葉もないのだが、心の底ではやはり少しモヤモヤするものがある。

この点はブレワイの作りが優れていて、現代の時間軸で為すべきことはチュートリアルの段階で概ね開示し、ストーリーを補強する英傑のエピソードやウツシエの記憶は全て過去の思い出としたことで、極論パラセールをもらってから即ハイラル城に突撃しても最低限の筋書きは成り立つようになっており、それがオープンワールドとしての自由度の高さに繋がっていた。対して本作は、ストーリーラインを複雑にして話に厚みを持たせたのはいいものの、オープンワールドとして見るとそれが上手く機能していないように思ってしまった。


ミネルのクエストの扱い

先に述べたように、自分は四地方の異変を解決してハイラル城に向かう前にミネルのクエストをクリアしてしまったのだが、「実は賢者には六人目がいたんだ! これから探しに行こう!」みたいな展開にするのであれば、ハイラル城をクリアするまではクエストをロックしておいて欲しかった。というか、一連のクエストの起点となる「カカリコ村の浮遊ワッカ遺跡」はハイラル城クリアまでロックされていた(逆にそこは自由じゃないのかとも思うが)のに、これをすっ飛ばしてミネルのクエストに入れるのは導線がおかしい気がする。それでミネルのクエストをクリアした後も結局カカリコ村のクエストはこなさないといけないというのも、一応それ自体タウロらの研究に協力するという意義があるとはいえ、どうもチグハグしているように思う。


過去の賢者の回想

ストーリー上では現代の四賢者がそれぞれ己の使命を知るシーンなので、話の内容に差異を付けにくいという事情があるのは分かるが、プレイヤーの視点からすると流石に四回も同じ内容を繰り返さなくてもと思う。一族の使命の他にも情報を小出しにするとか、ブレワイの英傑までとは行かなくとも、過去の賢者の性格に個性を付けるとかしてコピペ感を薄くすることはできなかったのだろうか。


賢者の戦闘支援システム

本作が総合的には大変面白いゲームであることに疑いはないが、この賢者のシステムは明確に評価を下げかねない要素だと思う。とにかく能力を使うための操作を「能力の持ち主の近くでAボタンを押す」という仕様で統一してしまったのが致命的で、ドロップアイテムの回収時等に誤動作が頻発してしまう。正直、この仕様でテストプレイを通ってしまったのがにわかには信じがたいとすら思う。

賢者の戦闘能力や行動パターンにも疑問が残る。空中にいるので比較的邪魔にならず、ヘッドショットを出してくれるチューリは有能と言っても差し支えないが、プレイヤーキャラにバリアを付与する能力を持つシドや、矢にエンチャントする能力を持つルージュが前線に出るのは率直にアホの子かと思うし、「装備の耐久が普通に減るので気が付くとステゴロになっている」「近くでAボタンを押すと背中に乗って隙を晒す(ついでに降りる時の操作もBボタン→A(X)ボタンと直感的でなくややこしい)」「その状態でもダメージを肩代わりすることはなく、最悪誤動作一つでゲームオーバーになる」と、とにかく欠点ばかりが目立つミネルに至っては、「お前『MOTHER』のイヴみたいな図体なのに性能はロイドなのかよ」とツッコミたくなってしまう。そもそもミネルのゴーレムより奪われしゴーレムの方が性能が明らかに高いのはどうなんだ。

本作に限らないが、この手のNPCをプレイヤーと共闘させたいのであれば、戦闘AIをもっとマシなものにして欲しいと心底思う。いくら頭数を揃えても結局強い敵は自分が引き受けなければならないという介護めいた状態に陥るのなら、最初からソロでやる方がよほど快適であり、ましてやプレイヤーの邪魔になるようなNPCは論外と言う他ない。本作の賢者を評価するなら、チューリが及第点で、ゾーラの武器の強化・鉱石の採掘と一応の役割を持てるシドとユン坊はギリギリ許容できるが、後の二人は落第である。しかし一番マトモなチューリですらもアイテムを吹き飛ばすというマイナス要素を持っているのが歯痒い……。

ついでに言うと、賢者の分身がミネル以外は全員同じカラーで黙ってゾロゾロ付いてくるというビジュアル自体も何だか見栄えが悪いなあと思っていたが、賢者周りのシステムの杜撰さからして、本人が出張ってきたらそれはそれで「賢者の体力が尽きたら一定時間クールダウンが必要になります」みたいなクソ仕様を追加されそうな雰囲気を感じたので、もうこの形で構わないと思い直した。これでデコイにもならなかったら産廃すぎる。


空・地底のマップの単調さ

最初は空や地底を冒険できることに興奮したが、冷静になると使い回し的な要素が多くて若干ダレる所がある。例を挙げると、空の水晶運びは結局フォーマットが同じなので作業感が強いとか、地底のオブジェクトが三、四種類のローテーションで回しているように見えるとか、そういう部分である。特に三種類あるローメイ遺跡が全て同じ流れだったのには閉口した。もっとこう、本筋とは一切関係のない巨大建造物とか、フィールドボスがウジャウジャ湧いてくるモンスターハウス(一応それに近しい存在として闘技場があるが、敵の密度がもっと濃くてもよかった)とか、足場が崩れたと思ったら暗闇の中でギブドに完全包囲されていたとか、見つけた時に思わず「何だこれは!」と叫びたくなるような異様なオブジェクトが欲しかった。


コンプ要素があるアイテム等のヒントの少なさ

「そんなのやり込み要素なんだから死ぬ気で駆けずり回れ」と言われればアッハイその通りですと返す他ないけど、もうちょっとヒントを出してくれてもいいんじゃないですかね。コログは自力では絶対無理だからいいけど、マヨイやカバンダはあと少し背中を押してくれれば行けそうな雰囲気あるじゃん。ヒントありなら攻略サイトを見るのと一緒だという意見もあるだろうけど、ゲーム内で完結するのと外部のツールに頼るのでは達成感も変わってくるじゃないですか! だからサトリは全部の洞窟を光らせないでくれ! コルテンはサトリになりたいならもっと気合入れて探知しろ!


総評

存外批判的な文章が多くなってしまったが、これはなまじ全体の出来が良い分、細かい部分の粗が目立ってしまうからであって、総合的に見れば本作はブレワイを上回る完成度だと思う。基本的にはブレワイのシステムを踏襲しつつ、不便だった要素はブラッシュアップするという方針が上手く働いている。何なら本作の仕様でブレワイをもう一度プレイしてみたい。

一方で、本作の目玉の一つであろう賢者周りのシステムには改善の余地があると感じた。前作からの続きものということで、ストーリー的にも世代交代を強く意識した内容なだけに、英傑の加護に置き換わる新要素にはもっと力を入れて欲しかったのが正直な所。

他にも色々と気になる点はあるが、それらを差し引いても本作が良質なゲームであることは間違いない。オープニングで描かれたリンクとゼルダの別離との対比となるエンディングの演出、そして過去の因縁との一応の決着と、本編が綺麗な終わり方をしただけに、今後追加されるであろうDLCがどのように展開していくのか気になるが、その辺りも楽しみにしつつ、まずは残ったコンプ要素を埋めていこうと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?