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【QUIENSUM】ブランディングデザインの会社が、自社ブランドをはじめました。

ARENCEの八木彩です。2023年11月に電通から独立し、もうすぐ1年が経とうとしています。おかげさまで、様々なブランディングのお仕事をいただいており、毎日忙しく過ごしています。
2024年10月1日には、弊社の青田が中心となり、自社ブランド「QUIENSUM」をローンチしました。自社ブランドの開発に取り組もうと考えたのは、2023年の7月頃だったので、準備に1年以上かかりました。時間はかかりましたが、自信を持っておすすめできる商品ができたと思います。今日は、私たちが開発した自社ブランドについて、ご紹介させてください。


なぜ自社ブランドをはじめたのか?

ARENCEは、ブランディングデザインの会社です。私たちは普段、様々な企業のブランド作りをお手伝いしており、誰かの想いをカタチにしていく仕事をしています。
仕事のなかで、理想と現実を埋めていく作業が必ず発生します。時間やお金の制約は、どんな仕事においても存在するもの。お客様が手に取りやすい値段で商品を販売し、企業が利益を得て事業を継続していくために、どこに投資をするのかに優先順位をつけていく必要があります。商品開発費、人件費、デザイン費、商品の保管料、配送料などなど……。
私たちの仕事はすべてのプロセスに密接に関わっているものの、実際にこれらの業務を経験したことはありませんでした。そのため、これらの実務を一度すべて自分たちで担ってみることで、「今後さらにブランディングデザインの解像度を上げることができるのではないか」と考えました。
また、純粋に「自分たちがよいと思えるブランドをカタチにしてみたい」という気持ちありました。

修道院での体験が、ブランドづくりのヒントに

ブランドを立ち上げるにあたり、ブランドプロデューサーである青田の、「好きなもの」を棚卸ししていきました。その中で、「香り」が候補に上がりました。「香り」は青田が昔から強い思い入れがあるため、商品開発をするにあたり独自性がつくりやすそうだと私たちは考えました。ブランディングにおいて、「本当に想いがあるものでなければ、続けていくことは難しい」ということは、常々感じていることです。

香りのブランドをつくるにあたり、青田がフランス留学時に訪れた、ファールス修道院での体験がヒントになりました。この修道院を設計したのは、ハンス・ファン・デル・ラーンという修道士の方です。この修道院は、天井の高さや柱の太さなど、スケールを決める際に「プラスチックナンバー」と呼ばれる比率を用いて設計されています。また、建築だけではなく、什器や洋服など、ありとあらゆるものを、独自の寸法体系のもとにデザインしました。ここで、青田は修道士の方としばらく生活を共にし、毎日の祈りの儀式を通じて体験した「香り」の記憶が、ずっと残っていたそうです。

ファールス修道院 Photo by Tsuyoshi Aota

「香り」は気持ちを静める効果があると言われています。都会に暮らす私たちは日々、ストレスフルで忙しい日々を送っていますが、「神に祈りを捧げるように、自分を浄化する儀式を生活に取り入れることはできないだろうか」と考え、「香りに特徴のある石鹸」を開発することを決意しました。

ブランドの名前は、「QUIENSUM(クイエンスム)」と名付けました。「QUIENSUM」という言葉は、ラテン語で「QUIES( 休息)」と「INCENSUM(香り)」を指す造語です。私たちは固形石鹸を通じて、「現代人の為の素朴な儀式」を提供したいと考えました。

オリジナル書体をブランドの顔に

デザインをつくるにあたり参考にしたのも、ファン・デル・ラーンが設計した修道院のデザインでした。彼は、修道院で使用する書体も自身でデザインしており、オリジナル書体が存在していました。

ファン・デル・ラーンが設計したオリジナルフォント Photo by Tsuyoshi Aota

しかし、そのまま使用すると、長い文章などで使用した時に少し視認性が悪かったため、プラスチックナンバーを参考にしながら、ブランドのオリジナルフォントを開発しました。パッケージデザインやWEBサイトにも、このオリジナルフォントを使用しています。

QUIENSUM FONT

また、ブランドに使用する写真は、あえて商品をはっきり映さないことにこだわりました。香りによって想起される記憶のような、曖昧なイメージをフォトグラファーの熊谷勇樹さんに撮影していただきました。

完成した3種類の香り

何度も試作を重ねて完成した3種類の香りは、どれも他にはない香りだと自負しています。

CARBO NOCTURNUS
暗闇の夜を立ち上る炎、燻した炭で包み込んだ官能。夜行性の炭。
ダマスクローズの華麗な花々と、燃え盛る炭のスモーキーノートが織りなす、官能的な時間。濃厚なイランイランと聳え立つ檜が香りの輪郭を支える。炭が燃える音だけが響く静寂の夜に、馥郁たる魅惑を漂わせる。

TERRA ROSEA
未成熟な果実の誘惑に抗えず、壮麗な楽園に背を向ける、若さ。薄紅の大地。
グリーン調のフィグを中心に、魅惑的なカシスやピーチ、ラズベリーの瑞々しい果実が溶け合う。優麗なミモザやライラックは香りに厚みを持たせ、ジャスミンの清楚なホワイトフローラルが忘却の記憶を呼び覚ます。

MEL PALADISI
古代の特権階級のみに許された、一筋縄ではいかない危険な甘さ。楽園の蜜。
上品な甘さを漂わせるシュガーに、芳醇なハニーサックル、艶麗なローズが犇めき合うトップノート。徐々に異国的なパッションフルーツと魅惑のラムが溶け合い、さらなる深みへ誘う。ラストは甘美なハニーと調和したムスクが全体を包み込み陶酔の美を奏でる。

ひとつひとつ丁寧に開発したブランドです。サイトを覗いていただけたら嬉しく思います。

Brand Producer , Copywriter : 青田剛(ARENCE)
Art Director , Designer : 八木彩(ARENCE)
Designer (Graphic) : 木村学(プラグ)
Designer(Web) : 田中至(ターバン)
Web Director : 河上裕明(ediplex)
Engineer : 村田響介(ediplex)
Photographer (Key visual) : 熊谷勇樹
Photographer (Product) : 櫻田亨
Photo Producer : 志村悠介


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