見出し画像

『アンデットアンラック』の第四話が素晴らしかった話。

はじめに

アンデラの第四話の余韻が抜けきれず、その気持ちのぶつけ先としてこの記事を書きました。X(旧Twitter)でつぶやいた内容の延長線上で、私の妄想100%ですが、それでも良い方は読んで頂けると嬉しいです。


ジーナ

第四話の話をするために、まずは第三話から話を始めようと思います。

第三話はアンディがジーナに誕生日を祝う所から始まります。当時の彼女は17歳辺りであり、普通に生活していれば正に花の高校生。いわゆる、JKであり、その後の風子との最初の話題が制服となるのは変化を否定する彼女らしいと言えます。

さて、そんなジーナと風子は一緒に絵を描く事になり、ジーナは変わるものと変わらないもの、どちらが好きなのかと風子に問いかけた後に、次の様な台詞を言いました。

私は変わらないものが好き。
だーれにも縛られず、流されず、変わらずいられるのって凄くない?

『アンデットアンラック』第三話、ジーナの台詞から引用

その後、風子の完成した絵を見て、ジーナは驚愕します。そこに描かれていたのは夜の海と空に浮かぶ月、そして月を囲う星の様なものたちでした。その絵を見せた後に、風子は変化する事は素晴らしい事だとジーナの問いに対して返答します。

綺麗な言葉だね。
若くって、青くて、あまーい言葉。
そんな言葉なのに。
そんな言葉なのに、正しく聞こえるのは私が老けたからかな。

『アンデットアンラック』第三話、ジーナの台詞から引用

ここに第四話で明かされるのジーナの内心が現れており、三話は月が背後に浮かぶジーナが二人を見下ろす構図で終わります。

『アンデットアンラック』第四話から引用


第四話のAパートではジーナがいかにアンディを好きなのかがメイン置かれており、ジーナはアンディに惚れた経緯を話します。

あぁ?何言ってんだ。
俺が負けたんだからしょうがねえだろ。
それにここに居れば色んな死に方ができる。
自分のルールの把握には持って来いだぜ。
そのうち俺はここを出る。
したら、またやろうぜ。
今度は俺が勝つからよ。

『アンデットアンラック』第四話、アンディの台詞から引用

ジーナはアンディの上記の発言をきっかけに好きになりました。しかし、この回想シーンに対してラックは疑問を呈しますが、その答えはその後のジーナとアンディのやり取りの中に込められています。

楽観的ね、あなたらしいけど。

『アンデットアンラック』第四話、ジーナの台詞から引用

ジーナはアンディを捕まえた事を悔いていました。しかし、アンディはそれを否定します。

責任はジーナではなく、負けた自分にあると。

それに負けた事で色々な事を経験できると。

その眩しいほどの楽観さが、暗い彼女の心を照らしたのです。彼女にとって、どれほどアンディが眩しい存在であったか、そんなアンディが彼女の元を去った事がどれだけ大きな出来事であったかハッキリとアニメで描かれています。

『アンデットアンラック』第四話から引用
『アンデットアンラック』第四話から引用

また、先ほども述べたように第三話と第四話ではジーナとセットで月が描かれている場面が多くあり、この回想シーンでも描かれていました。

『アンデットアンラック』第四話から引用

月は女性のメタファーとして用いられる事があり、ジーナはギリシャ語で"女性"という意味です。それらを踏まえるなら、ジーナ=月という形で捉えることができると思います。ジーナにとっていかにアンディと過ごした過去が大切な記憶なのか、構図にハッキリと現れている訳です。

Bパートに入るとAパートとは変わって世界が赤く染まっています。恐らく、この演出はAパートのアンディの血の雨からの繋がりだと思います。実際に、彼女がアンディと風子に倒された後ではAパートと同様に元の世界に戻っています。そして、この演出がラストの訪れる感動をより強固なものにしてくれました。

ジーナはラックの胸に嫉妬します。ここの場面、単純なギャグシーンではありますが、胸というのは人によっては変化が顕著に表れる部位です。変化を肯定するラックに対して、変化を否定するジーナの胸が控えめであり、そこに嫉妬するのは実に皮肉の効いた構図になっているのです。

しかし、胸が変化する事が無くとも他対象であるのでジーナの肉体は変化を続けます。ここで、アンディはジーナの肉体の変化に言及し、肯定する発言をしますが、ジーナはそれを否定し「何も変わってない!」と怒ります。

このやり取りは戦闘の中での心理的攻撃の面が強いのでしょうが、ラストのアンディの行為を見るに本音であり、それを受け取れない彼女がどれだけ変化しない事に固執しているかが窺えやり取りの一つです。

私は変わりたくない。
ずっとあの時のままでいたい。
ずっと好きな人と一緒にいたい。

『アンデットアンラック』第四話、ジーナの台詞から引用

彼女は永遠にアンディと過ごした日々が続いて欲しいと叫びます。

上記の台詞のシーンではジーナは右から左に進んでおり、彼女が過去(アンディと過ごした時期)に固執している事が映像からも伝わってきます。

『アンデットアンラック』第四話から引用

そんな彼女の背後には三話からジーナとセットで描かれる事の多かった満月が、まるで彼女にとっての満ちた(幸せ)だった時期はその時だけだったと暗示するように、彼女の背後に佇みます。

そして、ジーナは変わりたいなら一人で変われと激高しますが、そんなジーナにアンディは変わることは素晴らしい事だと言い返します。

この次のジーナの台詞から印象的なのは彼女の足下から流れ出たアンディの血の跡です。ここがアンディが勝利する為の最後のピースになるわけですが、ここの場面で赤い水面に浮かんだ満月が彼女の心の濁りを表しており、視覚的にも彼女の心の苦悩が伝わってきます。

ジーナは変化を否定します。しかし、そんなジーナに対してアンディは言います。

さあ、変わろうぜ、ジーナ。

『アンデットアンラック』第四話、アンディの台詞から引用

そうして、ジーナの空気の壁の中に入ったアンディ。ここでアンディは勝利を確信します。

また、ジーナは諦めた様に全くの抵抗をする事なく、掴んだアンディの頭をギュッとその胸に抱き締めます。そうして、彼女が40年待ち焦がれた瞬間は、彼女の敗北と共に訪れました。

実はここの場面は、ジーナがこの二話の中で恋をしてから初めてアンディに触れる事ができた場面なのです。ジーナの回想シーンにおけるガラスやジーナが空気の固定化の演出は、アンディに恋をしたジーナはその関係に固執し、そこから変化する事を拒んでいる事を示唆していると思います。そう考えると、彼女がアンディに何も言わずにおいて行かれたのは道理なのです。

変わる私は好きですか?

楽しかったぜ、ジーナ。
またな。

『アンデットアンラック』第四話、アンディの台詞から引用

ジーナはアンディと風子に敗れ、そんな彼女の姿を月は照らします。そして、ジーナは死に向かう中で、心の奥底の本心をラックに言います。

変わりたかったの。
なすがまま入って、なすがまま働いた。
たくさん捕らえて殺した。人も、獣も。
でも、何も変わらなかった。

『アンデットアンラック』第四話、ジーナの台詞から引用

ジーナがどんな過去を歩んできたのかハッキリと描かれることはありませんでしたが、ジーナの瞳が、彼女がどれだけ多くの出来事を目にしてきたのかを私たち視聴者に伝えてきます。

私は変われなかったけど、変わるのも悪くないのかもね。

『アンデットアンラック』第四話、ジーナの台詞から引用

しかし、彼女は本当に変わる事ができなかったのでしょうか。

上記の彼女の台詞が答えとなっていると思いますが、演出としても彼女の変化が描かれています。

『アンデットアンラック』第四話から引用

三話と四話において、ジーナとセットで描かれる場面が多かった月ですが、実はジーナを正面から照らしたカットはここが初めてで、それまでのジーナと月をセットに描いたカットは彼女をほとんど照らすことは無く、あっても背後しか照らしていませんでした。

先ほど、月は女性のメタファーだという話をしましたが、月には他にも意味があります。それは変化です。だからこそ、第三話において変化を否定するジーナが月の無い昼間の絵を描いたのに対して、変化を肯定する風子は月が浮かぶ夜の絵を描いたのだと思います。

そんな月が彼女を正面から照らすというのは、彼女がようやく変わることができたという証です。

しかし、ジーナ本人にとっては老化した自分をアンディに見せてしまうことになるので、彼女は自身の顔を腕で隠して二人に早く立ち去るように促します。

そんジーナをアンディは抱き、キスをします。変わった自分を見ないで欲しいと拒絶するジーナの顔を見て、ハッキリと彼女に告げます。

バカが、シワの数でお前の魅力は変わらない。

『アンデットアンラック』第四話、ジーナの台詞から引用

今回のタイトルである”変わる私は好きですか?”という問いに対して、アンディはハッキリと答える形で第四話は終わりました。

終わり

原作未読勢の私は今回の話の原作との差や今後の展開を存じませんが、そんな人間がどう受け取ったのかをだらだらと書かせて頂きました。ジーナとアンディ達の対決から人生について何か論ずる事ができそうな気がしましたが、まあ、それはいつか書いてみようと思います。

最後まで読んでくださった方はありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?