生徒会の一族 第1話「現れた新星」

どうしてこうなってしまったんだろう…。

俺は、ただ…あの日々を取り戻したかっただけだったはずなのに…。

〜???〜

俺の目の前にいるのはついさっきまで一緒に笑い、励まし合っていた大切な人達がいる…でも、その大切な人達の手には武器が握られている。

周りは、黒紫色の炎海に包まれ、逃げ道は、無かった。

その矛先は、間違いなく俺に向けられている。

なぜ…俺に武器を向ける…。

その眼は、まるでこの世の者では無い者を見る眼…恨みに満ちた鋭い眼差し…あの時の笑顔達は、もう、そこには無い。

???「ここで…ここであんたを倒さないと…私達の未来が無くなるの!」

俺は、理解出来なかった…俺も護ろうとしてただけなのになぜ、戦っている…なぜ…武器を向ける…。

そして、目の前にいた大切な人達は、俺に向かって攻撃を始める。

止めてくれ…戦いたくない…。

しかし、その身体は、意思とは関係無しに動く。

飛んで来る弾丸を避け、襲い来る刃を避け、大切な人達を傷付ける。

止めてくれ…傷付けたくない…。

それでも、身体は、その意思に背き、大切な人達を傷付けて行く。

気が付けば俺の周りには身体に傷だらけの大切な人達が地面に倒れていた…俺の目の前には傷付きながらも両手で武器を握る女の子の姿があった。

もう、止めてくれ…。

しかし、身体は、その女の子に向かってゆっくり歩いて行く。

止まれ…止まれ…止まれ…!

その願いが届いたのか歩を進めようとした左足に何が纏わり付く。

そこを見ると服もボロボロになり、足や頭から血が流れている親友の姿があった。

???「い…行かせ…ねぇ…」

それを見た身体は、その親友を払い除けようと何度も左足を動かすも離さなかった。

それを見た俺は、嬉しかった。

しかし、そんな嬉しさは、一瞬にして絶望に変わった。

俺の身体が右手で親友の頭を掴み、持ち上げると俺の目の前に連れて来る。

そして、左手で親友の両脚を握る。

やめろ…。

そして、俺の目の前で親友が何かを言った後、大量の血を吐き出しながら頭と両脚が胴体から切り離される。

やめろーーーーーーーーーーーーー!!

切り離された胴体は、地面に落ち、頭と両脚は、手の中で握り潰されるのだった。

嘘だ!嘘だ、嘘だ、嘘だ!

直視出来ない…親友が…いつも側で笑いかけてくれた親友が…無惨な姿になった…この現実を…。

それを見た目の前にいた女の子は、覚悟を決めたかの様に俺に向かって走って来る。

来るな…来るな…来るなー!

俺の身体は、向かって来る女の子に向かって走って行く。

そして、2つがぶつかり合おうとした時、俺の視界が真っ白に染まる。

どう…なったんだ…。

しばらくじっとしていると何処からか男性の声が聞こえて来る。

???「どうだった、この世界は?」

誰…。

???「なぁに、俺は、ただの道導(みちしるべ)さ」

みちしるべ…。

???「さっきお前の目に映っていた世界は、お前が強くなれなかった世界線だ」

どう言うこと…。

???「つまり、このまま行けばあんな残酷な未来が待っている…と言うことだ」

なぜ…そうなったんだ…。

???「そうか、覚えてないのか…まぁ、その方が幸せなのかもしれないな。お前は、ある分岐点で考えが甘かった故に大切な仲間の1人を死なせてしまったんだ。それにショックを受けたお前は、自暴自棄に陥り、力を求めるあまり闇に手を染めてしまう…そして、みんなとの心を通わせることが出来なくなった」

それじゃ、あの光景は…。

???「ああ、お前が化け物になって、お前を助けるためにみんなが戦ってくれてた…これが、あの場面の真実だ」

……………。

???「信じられないだろ。まぁ、心配することはない。これは、夢、ただの夢さ」

聞きたいことがある。

???「ん? なんだ?」

もし、この運命を変えるなら…俺は、どうしたら良い…。

???「さぁな」

さぁなって…あんた、道導じゃないのか?

???「ああ、もちろん、道導さ。ただし、何でも道導通りに進む世界なんて存在しないのも確かなんじゃないか?」

それは…。

???「でも、その詞が出たことは俺にとっては嬉しい限りだ。なら、お前にある叡智(ちから)を与える」

すると、上から俺の目の前に黒く光る剣がゆっくり降りて来る。

???「それは、剣であって、剣に在らずのモノだ」

剣であって、剣に在らずモノ…。

???「ああ、簡単に言えば剣の形を象った何かだと言うことだ。それをどう使い、どうするかは全てお前の心次第さ。あの悲劇を変えたいか」

変えたい。

???「なら、その剣を握れ」

俺は、目の前に浮かんでいるその剣の持ち手を右手で握った瞬間、右腕全体に激痛が走る。

あまりの痛さに剣から手を離そうとするが、離すことが出来なかった。

それと同時に右手の甲に謎の刻印が浮かび上がると痛みも治まる。

い、今のは…。

???「その痛みを忘れるな」

えっ…?

???「その痛みは、誰かの心の痛みだ」

誰かの心の痛み…。

???「俺が出来るのはここまでだ。次は、あっちで会おう。まぁ、会えたらの話だがな」

待ってくれ…。

???「そして、分かち合え、人としての心がなんなのかを…さぁ、その手で決められし運命を斬り裂け!」

待ってくれ!

勢い良く右足を1歩前に踏み出した時、階段の段差を踏み外すかの様にそのまま前に倒れる。

おっ! おわぁーーーーーーーーーーーー!!

〜現実世界〜

???「わあぁーーーーーーーーー!!」

あまりの出来事にびっくりして勢いよく起き上がると同時に右足の脹脛(ふくらはぎ)に激痛が走る。

???「びっくりした…痛ててててててて! あ、脚が! つっ…!」

あまりの痛さに大声で叫びながらその場でもがき転げ回る。

???「あーーー! 痛いっ! てばっ! くぅーー!」

その痛さは、この世界で生きている9割強の人が経験していることだろう。

そして、攣った方の足をゆっくり曲げたり、伸ばしたりして痛さを我慢しながら整えて行く。

???「あー…痛ってぇ…少しマシになったか…ふぅ…」

しばらくすると部屋の扉が開く音が聞こえてくる。

ガチャ。

???「どうしたの、薩真。朝から大声なんか出して」

声がした方を見るとそこにいたのは私服姿の母親だった。

薩真「な、何でもねぇよ…いてて…てか、勝手に人の部屋に入るなって…」

そう強気で言い返すも右脚に走った激痛の後遺症は、凄まじく薩真は、脹脛の部分をマッサージする。

奏衣「心配して来たのにその態度は、なに?」

薩真「煩い…うぅ…まだ、痛みやがる…」

奏衣「まったく…強情な所は、誰に似たのかしらね」

薩真「知らねぇよ」

奏衣「それじゃ、お母さんとお父さんは、先に行くから。朝ご飯は、ちゃんと食べなさい。良いわね?」

薩真「わーったよ」

奏衣は、薩真の部屋から出て行くとゆっくり扉を閉めるのだった。

薩真「まったく…」

そう言うと薩真は、まだ少し痛む右足の脹脛を気にしながら恐る恐る布団からゆっくり立ち上がる。

薩真「おっと…大丈夫…だよな…ふぅ…変な夢は、見るし、足は、攣るし…今日は、嫌な感じがする…」

そう言いながらも薩真は、夢の中で激痛が走った右腕を見ながら握ったり解いたりして確かめていた。

薩真「何にも…ないよな…」

その時、外から聞き慣れたあの声が聞こえてくる。

???「うぉーい! 薩真ー! 起きてるかー!」

薩真「(頭に響く、あの大声は…)」

薩摩は、部屋の窓を開け、声のした方を向くとそこには学園の制服を着たあいつがこっちを見ながら右腕全体を使って手を振っていた。

???「薩真ー迎えに来たぜー!」

その姿を見た薩真は、大きな溜息を吐く。

薩真「はぁ…毎朝毎朝…なんで、あいつは、ああ元気なんだ…あのな! ここは、住宅地なんだから静かにしろって! インターホンがあるんだからそれを使えってば!」

???「なんだってー? 聞こえませんなー」

その返事に薩真の心に殺意が芽生える。

薩真「(合流したら殴る)」

???「今日は、体育があるから体操服忘れるなよー!」

薩真「あーもう! わかったから静かにしろって! 近所迷惑だ!」

そこに仕事に向かう智之と奏衣が合流する。

奏衣「あら、賀雄くん」

賀雄「おはようございます、智之さん、奏衣さん!」

智之「今日も元気だね」

賀雄「ええ! 元気が唯一の取り柄ですから!」

薩真「(それ、何の自慢にもなってねぇってば…)」

智之「賀雄くん、あんな息子だが仲良くしてやってくれ」

賀雄「ああ、任せな! 俺と薩真は、大親友だからな!」

薩真「誰が大親友だ…誰が…」

2人は、賀雄と別れを告げると仕事場に向かうのだった。

薩真「おーい、賀雄、今から朝飯食うからしばらく待ってろよ」

賀雄「まだ、朝飯食ってなかったのか?早くしないと遅刻するぞ?」

薩真「まだ、1時間以上あるから心配するな」

そう言うと薩真は、自分の部屋から出ると真っ先に洗面台に向い、顔を洗い、歯を磨くのだった。

近くにあったタオルを手に取り、顔を拭くと傍にある横ドラム型の洗濯機の中に投げ入れる。

そして、ダイニングにやって来ると椅子に座り、両手を合わせて頂きますをする。

薩真 「いただきます」

用意されてあった朝食を食べながらテーブルに備え付けられているパソコンでメディアサウンド機能を使って音楽をかける。

そして、ゆっくりした朝食が終わると再び手を合わせて感謝の意を示す。

薩真「ご馳走様」

食べ終わった食器達を流し台の所に持って行くと軽く水で洗い、食洗機の中に入れる。

再び自分の部屋に戻り、学園の制服に着替えて学生鞄と体操服が入った袋を持って玄関に向かう。

玄関の所に荷物を一旦置くと再び洗面台の所に向かい、口の中を濯ぐだけ済ませる。

そして、靴を履き、荷物を持って家の外に出るとその先には賀雄が待っていた。

賀雄「おっ、やっと来たな」

薩真「別に俺を待たなくても先に行けば良いのに」

賀雄「そんな訳にはいかないだろ? さっきもそうだが、薩真の親からお前を頼まれてるんだ」

薩真「そうか。それじゃ、行くか」

賀雄「ああ!」

そう言うと薩真は、家の扉を閉めて賀雄と合流すると学園に向かうのだった。

賀雄「それでさ、聞いてくれよ、薩真…俺がな…」

こいつは、俺達家族がこの街に引っ越す時に一緒に着いて来てくれた奴で名前は、東堂 賀雄、前に住んでいた街で仲良くなり、それからの付き合いだ。

色々と面倒なことを持って来ることもあるが、根は、かなり優しい。

賀雄「あっ、そう言えば…なぁ、知ってるか、薩真」

薩真「なんだ?」

賀雄「どうやら、学園で生徒会の参勤交代があるらしい」

薩真「生徒会の参勤交代って…どっかの大名でもあるまいし…」

賀雄「でもよ、その参勤交代がやたらと人気らしいぜ」

薩真「どんな感じに人気なんだ?」

賀雄「んーそうだな…新しく出来た人気ラーメン店ぐらい人気だぜ」

薩真「たとえが微妙過ぎてわからん。もっと、わかりやすく教えてくれ」

賀雄「まぁ、行けばわかるってことよ。ほら、行くぜ」

そう言うと賀雄は、そそくさに走り出す。

薩真「おい、賀雄、走ったら危ないぞ」

賀雄「平気平気♪ どうせ、車なんて来な…」

???「どいてーっ!」

賀雄が声のした方を見るとそこには巨大な何かが迫って来ていた。

賀雄「うおおおっ! なんだ、ありゃ!? もがっ…!」

そして、次の瞬間、賀雄とその巨大な生物が激突し、賀雄が飛ばされると飛んで行った先にあったコンクリートの壁に叩きつけられる。

賀雄「がはっ…」

賀雄は、そのまま地面に倒れるのだった。

薩真「賀雄!」

そう言って薩真が賀雄の所に行こうとした時、その巨大な生物が行く手を阻む。

「グルル…」

薩真「(な、なんだ…こいつ…犬…いや、狼か)」

???「こらっ! 大人しくなさい!」

その巨大な生物の上に乗っている女の子が何度もその身体を叩いていた。

それを見た薩真は、その女の子に声をかける。

薩真「あの…」

???「ん? 何よ」

薩真「これ、もしかして、君のペット?」

???「ええ、そうよ。普段は、大人しいんだけど…なんか、今日は、暴れてるのよ」

それを見た薩真は、ゆっくり歩いて巨大な生物の顔の前に立つと右手でそいつの顔を優しく撫で始める。

薩真「よし、良い子だ」

薩真がしばらくそいつの顔を何度か撫でていると今まで警戒していた顔付きが穏やかになって行く。

???「(へぇ〜やるじゃない。学園の制服を着てるけど、見かけない人)」

しばらくするとその生物が白い光に包まれどこかに消えて行き、女の子がゆっくり降りて来る。

薩真「えっ…消えた…」

???「手伝ってくれて、ありがとう」

その女の子は、まるで何も無かったかの様にそのままどこかに向かって歩いて行く。

薩真「ちょっと…」

薩真の呼び掛けに女の子は、歩みを止めて薩真の方を見る。

???「何かしら?」

薩真「い、今のって…あの生物は?」

???「愛されて罪が許されたから消えたのよ」

薩真「愛されて罪が許された…」

???「ええ、それだけよ」

薩真「それだけ…」

???「所で、貴方、その制服、星嬢流華学園の制服よね」

薩真「あっ…ああ」

???「何年生?」

薩真「に、2年生」

???「学科は?」

薩真「ええっと…」

???「学科よ、どこ所属なの?」

薩真「そ、それは…」

???「じれったいわね…ぱっと、言いなさいよ、ぱっと!」

薩真「(なんでこんなに絡んで来るんだよ…)」

女の子は、しびれを切らしたのか薩真に急接近する。

???「あーもう! はっきり、しなさいよ! 貴方、男でしょ!」

薩真「て、転校生なんだよ」

???「転校生…あぁ…なるほど、貴方がね」

それを聞いた瞬間、女の子は、興味を無くしたかの様にそそくさに歩き始めるのだった。

薩真「ちょっと待てよ」

???「待たなくてもこれから学園で会えるわ。精々、頑張りなさい」

そう言うと女の子は、どこかに行ってしまう。

薩真「彼女は、一体…学園のことを知っていたってことは、同じ生徒なのか?」

突然の出来事に処理が追い付いてない薩真に自然から優しい風が吹く。

賀雄「おーい…薩真〜俺を忘れてないか〜」

そこに地面を這いながら近付いてくる賀雄の姿があった。

薩真「あっ…すっかり忘れてた」

賀雄「ひでぇよ〜…背中、痛ってぇ〜」

薩真「まぁ、生きてるから良いじゃん」

賀雄「そりゃ、そうだけどよ…薩真、手ぇ貸してくんない? 立ち上がれねぇんだわ」

薩真「さて、登校しないとな〜」

賀雄「こ、この野郎…親友を置いて行くつもりか!」

薩真「はぁ…わかったから。ほらよ」

薩真は、賀雄に手を差し伸べると賀雄は、その手を握る。

そして、薩真が賀雄の手を引っ張ると賀雄は、ゆっくり立ち上がるのだった。

賀雄「おう、サンキューな。ったく、一体何だったんだ…」

薩真「さぁな。でも…」

賀雄「ん?」

薩真「何かがおかしい…そんな気がする」

賀雄「何かって、なんだよ」

薩真「わからない」

賀雄「そっか、それじゃ、行こうぜ。生徒会の参勤交代を見てみようぜ」

薩真「なんか、嫌な予感しかいないけどな…」

そう言いつつも2人は、学園に向かって通学路を歩いて行くのだった。

しばらく、歩いていると同じ制服を着た学生達の姿が現れる。

賀雄「おっ、いるいる」

そして、道なりに歩いて行くと学園の正門前にやって来る。

賀雄「おおーこいつは、すげぇー!」

薩真「写真で見たことはあったが…ここまで立派だとは…」

そこにはまるで西洋の宮殿に設置されてある様な巨大な正門だった。

その門の中に次々と生徒達が入って行く中で明らかに尋常じゃないオーラを放ちながら歩いて来る2人の女子生徒がいた。

その姿を見た学園の男子と女子生徒達は、その2人の通行の邪魔にならない様に道を開ける。

そして、その生徒達の前を通過すると女子生徒達からは、キャーキャーと声が上がる。

薩真達がしばらくその様子を見ているとその2人が薩真達の前にやって来る。

???「………………」

薩真「……………」

???「…………………」

賀雄「ん? なんだなんだ? これ?」

対面する2組の間に静寂な時間が流れる中で言葉を発したのは薩摩だった。

薩真「あの…」

???「入らないの?」

薩真「えっ…いや、その…」

その時、隣にいた小柄の女子生徒がその女子生徒の服を2回引っ張るとその女子生徒は、少ししゃがむ。

そして、隣にいた小柄な女子生徒がその女子生徒に耳打ちをする。

しばらくするとその女子生徒が体勢を戻して話し始める。

???「2人は、この学園の転校生なんですね」

賀雄「ど、どうしてわかったんだ!?」

???「貴方達、胸の所にまだ学科の科章がないからよ」

薩真「か、科章?」

???「ええ、この学園、星嬢流華学園には様々な学科が備えられていて1年の時から自分の興味のある学科を選ぶことになってるの」

賀雄「そ、そうなんだな…」

???「そして、この学園では途中で学科を変えることも可能で生徒1人1人の個を人権を人としての心を大切にして養い、培って行ける教育現場でもあるの」

薩真「なんか、宗教みたいな言い回しだな…」

???「そうね。そう言う人も中にはいるわ。あとは、自分の眼で見て確かめて。百聞は一見にしかずだから」

そう言うと2人は、薩真達の横を通って正門を潜り抜けるとそこでも大勢の男子と女子生徒達の注目の的だった。

賀雄「なんか、不思議な奴だな」

薩真「ああ…」

???「そこの2人、ちょっと良い?」

2人が声のした方を向くとそこにはまた別の女子生徒が立っていた。

賀雄「今度は、なんだ…」

???「あんた達2人って、あの2人の知り合い?」

薩真「いえ、違います」

???「そう、なら、良いや」

薩真は、つい先ほど教えられた通り胸の所にある科章を見るとそこには棒グラフの様な科章が着いてあった。

薩真「(見たことがない科章だ…)」

???「おっと、そろそろ始まるな」

賀雄「何が?」

???「生徒会の見廻りさ」

薩真「生徒会の見廻り?」

???「ああ、生徒達の様子を見て回るのも生徒会の立派な役目さ」

薩真「と言うことは、貴女も生徒会の人?」

???「ま、まぁな。それじゃ、あたしは、先に行かせてもらうぜ」

そう言うとその女子生徒は、正門を通り抜けるのだった。

賀雄「次から次へと…今日は、変な日だぜ。行こうぜ、薩真」

薩真「あ、ああ…」

2人は、正門を通り抜け、校舎に向かって歩いていると校内放送が始まる。

ピーンポーンパーンポーン。

放送部員「こちらは、放送部です。只今より週に1度の生徒会による見廻りが始まります。皆さんで元気な挨拶をしましょう」

賀雄「元気な挨拶って…おいおい、どっかの小学校じゃあるまいし…な?」

薩真「まぁな。(なんか、嫌な予感がする…)」

2人が学園に向かって歩いていると後ろから大声で呼び止められる。

???「こぉーらー! そこの2人!」

あまりの大声に薩真達は、後ろを振り返るとそこには大勢の男子生徒達が並び、頭には「真紅 LOVE!」と書かれた紅色の鉢巻を巻いていた。

賀雄「うわぁ…やべぇ…これ、絶対やべぇ奴じゃん」

???「生徒会長様のお通りだ!」

???「頭が高い! 控えろ!」

薩真「初対面の奴に対して凄い詞だな…所で、あんた達は? 何者だ?」

???「ふふふ、この俺達を知らないとは…なら、教えてやろう」

薩真「あーなんか長くなりそうだからやっぱ良いや」

???「おい、ごぉら゛、てめぇ、なめてんのか! あぁん?」

薩真「えー聞かなきゃだめ?」

???「当たり前だろうが!」

薩真「ふぅ…わかった。それで、あんた達は?」

ラビッシュ「俺達は、真紅親衛隊! そして、俺が親衛隊隊長のラビッシュ大尉だ!」

賀雄「あー…薩真…俺…もう、だめぽ…」

薩真「俺の気持ちがわかるだろ?」

ラビッシュ「そして、こっちが…」

そう言いかけた時、最初に聞き慣れたあの声が聞こえて来る。

???「あー! もう! 長いわよ!」

何処かから学生鞄が飛んで来るとラビッシュの後頭部に直撃する。

ラビッシュ「ラビッシュ!」

ラビッシュは、そのまま地面に倒れるもその学生鞄は、ちゃんと受け止める。

???「まったく…私をいつまで待たせるつもり?」

ラビッシュ「せ、生徒会長様の愛が…重い…」

男子生徒の集団の中を悠々と歩く1人の女子生徒の姿があった。

そして、2人の前に姿を現す。

薩真「あ、貴女は、あの時の」

2人の前に現れたのは通学路の途中で出会ったあの女の子だった。

???「また、会えたわね」

賀雄「薩真、知り合いか?」

薩真「そっか、賀雄は、気絶してたんだな。と、言うことは…」

真紅「ええ、私がこの星嬢流華学園生徒会会長、3年の梅河 真紅よ」

薩真「まさか、生徒会の会長だったなんて…それで、こいつらは?」

真紅「こいつらは、私の僕(しもべ)よ」

ラビッシュ「そ、そんな…会長…」

真紅「良いからあんたは、黙ってなさい。と言う訳で、ようこそ、星嬢流華学園へ」

賀雄「お、おう…」

真紅「あんた達は、先に行って私の安全を確保しておいて」

僕(しもべ)達『イェッサー! マザー!』

そう言うと僕(しもべ)達は、校舎に向かって歩いて行くのだった。

真紅「ほら、あんたも行きなさい」

真紅がラビッシュが受け止めている鞄を奪うとラビッシュは、すぐに立ち上がり、みんなの所に向かうのだった

薩真「ま、マザーって…」

真紅「あいつらが勝手に呼んでるだけ気にしないで。所で、何学科に入るか決めたの?」

薩真「いや、まだ」

真紅「そう。なら、おすすめを紹介してあげる。今なら自然科が空いてるから直ぐにでも入れるわ」

賀雄「なんだよ、その、自然科ってのは?」

真紅「うちの学園に最近出来た学科なんだけど、人気が無くて困ってるの」

薩真「それって、所謂、人員補填って奴か?」

真紅「あら、結構な言い掛かりをしてくれるじゃない」

薩真「だって、本当のことだろ?」

真紅「まぁね…他にもたくさんの学科があるのに理事長は、なんであんなの作ったのか…理解に苦しむわ…」

賀雄「ん〜なら、ここで交渉と行こうじゃねぇか、会長さんよ。俺達2人がその自然科に入ってもやっても良いが、その代わり何か特殊なもんをくれよ」

薩真「お、おい、賀雄…」

賀雄「まぁ、任せなって。どうだい、良い話だろ?」

真紅「何がお望みかしら」

賀雄「俺達を生徒会の1員にするってのはどうだ? 悪い話じゃねぇだろ? 俺達を生徒会の1員にするだけで莫大な助成金が入るんだ。こんな上手い話は、ねぇよな?」

真紅「へぇ〜ただのポンコツじゃなさそうね」

薩真「助成金…」

真紅「良いわ、その交渉に乗りましょう」

賀雄「さっすが、生徒会長、話がわかってるねぇ〜」

薩真「おいおい…マジかよ…」

真紅「それじゃ、放課後、生徒会室に来て」

そう言うと真紅は、僕(しもべ)達が歩いて行った方に向かって歩いて行くのだった。

賀雄「へへへ、物は、言いようだぜ」

薩真「賀雄…お前…一体…」

賀雄「ちょっとな、俺も伊達に馬鹿やってた訳じゃねぇってことさ。さっ、行こうぜ」

薩真「あ、ああ…」

この時、薩真の中で賀雄と言う存在のあり方が変化した瞬間だった。

そして、2人は、校舎の中に入って行くとそれぞれの教室へと向かうのだった。

それぞれのクラスに向かい、自己紹介をするとそこに見慣れた顔があった。

〜薩真のクラス〜

薩真「あっ…」

そう、薩真の視線の先にいたのは正門に入る前に色々話し合ったあの女子生徒だった。

担任の教師の指示で薩真の席を示されるとその女子生徒の隣の席だった。

薩真「(で、出た…恋愛系の話であるボテボテのシチュ…)」

薩真は、そう感じながら渋々その席に向かって歩いて行き、鞄を机の上に置くと椅子に座り、溜め息を吐く。

薩真「ふぅ…」

隣にいる女子生徒の反応を見るために横目で見るもその女子生徒は、窓の方を見ていた。

薩真「(ますます…嫌な感じがする…気まずい…)」

授業が進んで行き、体育の時間になると男子生徒達は、隣のクラスに移動し、隣のクラスの女子生徒達は、こっちのクラスに移動を始めるのだった。

〜賀雄のクラス〜

賀雄「おう、薩真ー」

薩真「なぜか、お前の顔を見るとほっとする俺がいるのが不思議だな」

賀雄「はぁ?どうした、薩真、頭でも打ったか?」

薩真「うるせぇよ。そっちは、どうなんだ?」

賀雄「ああ、見ての通り…空気だ!」

賀雄の大声にびっくりしていた。

薩真「完全に場違いだな、こりゃ…」

賀雄「所で、薩真、お前の方は、どうなんだ? 俺なしでやっていけんのかぁ?」

薩真「まぁな。(隣の席にいる奴が生徒会の1人なんて言えない)」

2人は、着替えが終わり運動場に出るとそこにジャージを着た男の先生と女の先生の2人が立っていた。

みんながその前に集まると男の先生が話を始める。

男の先生「それではこれよりみんなには体力測定をやってもらう。女子は、こっちへ。男子は、俺に付いて来い」

言う通りに男子は、男の先生の後に着いて行くのだった。

そして、やって来たのは体育館で中に入るとそこに用意されていたのは足部がキャタピラーになっている大きなロボットだった。

薩真「なんだ、あれ…」

男子生徒達全員が体育館の中に入ったその瞬間、体育館の入り口の扉が轟音をたてながら勝手に閉まるのだった。

賀雄「な、なんだなんだ!?」

男の先生「良いか、男子たるもの力無き者は、この世では生きていけん。ある程度の力を持っておかないと大切な者も守れない」

賀雄「おおっ!? なんか、盛り上がって来たんじゃねぇ!?」

薩真「それは、お前だけな」

男の先生「これより、みんなにはこいつと戦ってもらう。なぁに、我が学園の機械工学科と電子工学科、情報処理部の共同で完成した訓練用のロボットだ。危険なことはない。ただ…ちょっと問題があってな。こいつを稼働させるのにかなりのエネルギーが必要だっから化学科からナジニウムを入れてある」

薩真「な、ナジニウムだって!?」

賀雄「なんだ、薩真、知ってるのか?」

薩真「知ってるも何も国際上で取引及び売買が禁止されている危険薬の1つ…微量でも街の1つを焼き払ってしまう程の威力があると聞いている」

男の先生「ほう、小僧、どうやら世界情勢のことを少しは、知っている様だな。確かに危険薬の1つだが、その利用方法が人々の暮らしを支える新たな資源となり得るとすれば?」

薩真「特別に扱える…」

男の先生「その通り。病院とかで使われている麻酔も煙草も本当は、薬物の1種だが治療や嗜好品などに定められているため法に触れない。原発だって同じことさ。みんなでこいつを完全に止めることが出来ればクリアだ。それじゃ、始める」

先生がポケットからリモコンを取り出し、スイッチを押すとロボットが動き始める。

ロボットは、生徒達をロックオンすると足に付いているキャタピラーが稼働を始め、生徒達に向かって走って行く。

薩真「来るっ!」

それを見たほとんどの生徒は、蜘蛛の子の様に散り散りに逃げて行くも十数名は、走って来るロボットの前に立ち塞がっていた。

男子生徒A「こんな奴、止めてやる!」

男子生徒B「ラグビー部の名にかけて!」

そして、残った生徒十数名で突っ込んで来るロボットを抑え込む。

薩真「お、抑え込んだ」

5人の男子生徒がロボットの胴体を持ち上げ、横転させる。

男子生徒C「なんだ、大した事ねぇな」

男子生徒D「これじゃ、訓練にもならねぇよ」

それを見た先生がにやっと笑い、リモコンの裏に着いてある赤いスイッチを押すとロボットがいきなり立ち上がり、抑え込んでいた生徒達を意図も簡単に振り払う。

男の先生「まさか、そんな簡単なはずがないよな。さぁ、ここからが本番だぜ」

そう言うとロボットは、キャタピラーの装甲を外し、そこから脚を出現させると兎の様に右に左に飛び跳ねながら移動していた。

賀雄「げっ! 飛び回ってやがる!」

振り払われた生徒達は、再びロボットを抑え込もうとするもその身軽さ故に困難を極めていた。

男子生徒E「くっそ…あいつ、ちょこまかと…」

それを見ていた薩真が行こうとした時、隣にいた賀雄が止める。

薩真「賀雄?」

賀雄「薩真、ちょっと…」

賀雄は、薩真に耳打ちをする。

賀雄「良いな?」

薩真「でも、それって…」

賀雄「かもな。でも、どう考えてもこれしかねぇんじゃねぇ? それじゃ、頼むぜ」

そう言うと賀雄は、ロボットに向かって走って行くと薩真は、ある所に向かって走って行く。

賀雄がロボットの前に来ると挑発をかける。

賀雄「おーい、ポンコツーこっちだぜ!」

その言葉に反応するかの様にロボットは、賀雄に向かって走って来る。

賀雄「来た来た」

それを見た賀雄は、挑発を続けながらある所に向かって走って行く。

賀雄が走って行く先にいたのは先生だった。

男の先生「ん?」

そして、賀雄が先生の目の前で立ち止まるとロボットに最大の侮辱を言い放つ。

賀雄「やーい、来るなら来てみろ、この扁平足ー!」

その言葉に反応したのかロボットは、賀雄に向かってブースターを使って突進をする。

賀雄「先生ーパスっ!」

賀雄は、ロボットと当たる手前で前に飛び込む様にして突進を避ける。

男の先生「なぁに!?」

それを見た先生は、急いでリモコンを取り出し、ロボットを強制的に止めようとした時だった。

薩真「もらったー!」

先生の死角で待機していた薩真が現れ、先生からリモコンを奪い取るとその場から逃げる。

男の先生「なっ! ごわぁ!」

ロボットは、先生に体当たりすると先生が吹き飛ばされるのだった。

そして、薩真がリモコンで停止と書かれたスイッチを押すとロボットは、動きを止めるのだった。

薩真「ふぅ…」

賀雄「薩真ー」

賀雄は、薩真に飛び付く。

薩真「ぐはっ!お、おい、賀雄…」

賀雄「やっぱお前は、すげぇぜ!」

薩真「いや、賀雄が囮になってくれたからさ」

ロボットの起動が停止して数秒後、閉じられていた体育館の扉が開く。

薩真「どうやら、試験は、クリアの様だな。先生は、どうする?」

賀雄「そっとしててやろうぜ。教師も大変だろうしな」

薩真「そうだな。ってか、このリモコンどうする?」

賀雄「そこら辺に置いておけば?」

薩真は、リモコンを倒れている先生の身体の上に放り投げると体育館を出て行くのだった。

賀雄「所で、薩真」

薩真「ん? なんだ?」

賀雄「ナジニウムって、なんだったんだ?」

薩真「まぁ、世界には色々あるってことさ」

賀雄「ふぅ〜ん、そんなもんか」

薩真「(こいつ、頭良いのか悪いのかわかんねぇの…)」

そして、今日の授業が全て終わると2人は、職員室に呼ばれてどの学科に入るかを問われていた。

2人は、迷うことなく自然科を選ぶと先生から太陽の形を象った科章を受け取り、胸に着ける。

賀雄「さてと、科章ももらった所で…あの場所に行くか」

薩真「いよいよか…」

2人は、あの場所に向かうのだった。

2人が向かう場所…それは、生徒会室…近付けば近付く程、その重みが増してくるのを2人は、感じていた。

そして、2人は、生徒会室の扉の前にやって来る。

賀雄「なぁ、薩真…」

薩真「言いたいことはわかる…」

2人の前にあったのは周りの扉とは違うまるで異世界へと繋がる様な豪華な扉が目の前にあった。

薩真「ここ…本当に生徒会室だよな…」

賀雄「間違ったんじゃねぇ…」

2人が扉に付いてある表札を見ると間違いなくそこには生徒会室と書かれてあった。

薩真「とりあえず、開けるぞ」

そう言うと薩真は、その扉に付いているドアノブを右手で掴み、右に回すと扉が左にスライドする。

賀雄「外開きじゃないんかい!」

すると、部屋の中からあの時の女子生徒の声が聞こえてくる。

真江「あら、良いツッコミじゃない。2人共、中に入って」

2人は、恐る恐る生徒会室の中に入って行くとそこには1度は、見た顔達が座っていた。

???「げっ! あんた達、どうしてここに!?」

賀雄「おっ! どこかで見た様な顔が勢揃いだな!」

真江「あら、葵、知り合いだったの」

葵「知り合いって、言うか…今日、正門で軽〜く話した程度さ。生徒会に期待の新星が2人もやって来るって、聞いてどんな奴か楽しみにしてたのに…よりによって、この2人かよ…」

薩真「この2人で悪ぅござんしたね」

???「……………」

???「役者は、揃ったみたいね。生徒会長、ご判断を」

真江「ええ、ようこそ、星嬢流華学園生徒会へ。東堂 賀雄くん、神原 薩真くん」

賀雄「もう、情報は、筒抜けかよ」

真江「早速だけど貴方達2人にはある試験を受けてもらうわ」

薩真「えっ…そんな話、聞いてないんだが…」

真江「ええ、教えてないんだから当然よ」

薩真「ちゃんと事前連絡しろよ、生徒会長」

真江「私もついさっき聞かされたばかりなの。仙理ちゃん、例のアレ、出してあげて」

そう言うと仙理は、座っていた椅子から立ち上がり、PCが置いてある所に向かう。

PCが置いてある場所にやって来ると椅子にちょこんと座り、マウスを軽く動かしてカチカチとマウスで操作するとすぐ近くにあった複合機がウィーンと言う音を立てながら起動を始める。

真江「ちゃんと自然科の科章を付けてるわね」

賀雄「ああ、約束は、守るからな。それで? 何をするんだ?」

真江「簡単な筆記試験よ。猿でも出来るわ」

薩真「猿が字を書けるのかよ」

???「ええ、書けるわ。ただし、文字が読めるかどうかはさておきだけど」

賀雄「そうなのか?」

???「生物学界では人間の遺伝子(ゲノム)に9割一致しているチンパンジーやゴリラに幼い頃からそう言う教育を受けさせることで文字が書けたり、読めたりすることが出来ると言う実験結果が得られているの。極秘裏では人間の遺伝子(ゲノム)を入れた実験が行われていたりしなかったりするわ」

薩真「まるでSFの世界だな」

そんな話をしていると複合機から出て来た紙を取ってみんなの所に戻って来る仙理の姿があった。

そして、仙理は、無言で薩真と賀雄にその紙を手渡すとさっき話していた女子生徒の隣の椅子に座る。

その女子生徒は、仙理の頭を優しく撫でるのだった。

2人が渡された用紙を見るとその内容に顔を青褪める。

賀雄「お、おい…これって…」

薩真「本気(まじ)…なのか…」

真江「ええ、本気よ。生徒会の1員になるんだったらそれに答えれて当然よね」

薩真と賀雄は、視線を合わせると同時に叫ぶ。

薩真・賀雄『こんなの! 書けるかー!』

こうして生徒会長から洗礼を受けた2人は、渡された用紙に泣きながら書き、無事に生徒会に入ることが出来たのであった。

薩真「もう…帰りたい…」

NEXT STAGEへ…。

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