空き家の活用をこれから考えていくためのメモ
空き家に関して議論する上で、必ずと言っていいほど引用されてきたのが、野村総合研究所が2015年に出した空き家率予測での資料。
そこでは、問題が今後急速に深刻になり、2033年には空き家率が30%に近づくというものでした。
ただ、結果的には2019年に発表された同社の資料によると、2018年には空き家数が1000万件に達するとされていましたが、最終的には846万戸におさまったデータが出てきています。
これは建物の除去率が、大きく上昇したことが資料からは見えてきますが、人々の問題意識の上昇や行政の後押しもあったのかもしれません。
増加にブレーキがかかり出したことに関しては幸いなことですが、一方、令和2年に国土交通省から出された「既存住宅市場の活性化について」を見てみますと、
全住宅流通量(既存流通+新築着工)に占める既存住宅の流通シェアは約14.5%(平成30年)にとどまっていることが見て取れます。
この14.5%という数字、各国と比較してみるとアメリカ81.0%、イギリス85.9%、フランス69.8%と日本の既存建物のシェア率が先進国の中ではかなり低いことが分かります。
ここから何が読めるのか。
野村総研の2019年度版「新設住宅着工戸数の予測結果」によると
緩やかに減少していく見込みとなっていますが、昨今の物価上昇等の社会情勢を織り込むと同時に個人的な肌感覚では、もっと急減するのではないかというのは個人的な推論です。
もちろん、新築住宅がなくなるわけはありませんし、必要です。ただ、あたり一辺倒のスタイルでは、色々と淘汰されていくのかなと考えられます。性能と個性が大切だし、そのつもりで動いているつもり。
4年くらい前に初めて空き家を地元地域で買いました。何に使おうかなという明確な意図はありませんでしたが、
とりあえず貸家のオーナーになってみようかなという淡い期待と軽いノリで。
というよりも、とにかく自分で空き家をいじってみて、人がどう動くのかを実験してみたかったのが本心だったと思います。
幸いなことにその建物は、数十万円のリフォーム(ほとんど自分たちで)をしてあげるだけですっきりと蘇り、リフォーム後一ヶ月も経たないうちに活用していただける方が見つかりました。
最初に使用いただいた方は「九谷焼」の作家さんです。
この建物には軽自動車くらいなら裕に入れることが出来るくらいの車庫があり、ここにろくろ窯を設置し、暮らしながら作家活動を行いたいという方でした。
なるほど〜そういう需要があるのだなと納得し、快諾し、その方と賃貸借契約を結びました。
昨年末、借主さんのご都合により退去がありましたのでまた少し直し、募集をかけるとあれよあれよと問い合わせが集まってきて、次に活用してくれる人が2ヶ月も経たないうちにもう決まっています。
増える空き家もあれば、
潜在的に空き家を活用したいという方も多くいることを肌感覚で気づくことができました。
ただ、空き家運用と簡単には言いますが、もちろん簡単なものではなく、この物件はうまく回ってますが、うまくいっていない物件ももちろんあります。
ただ、だからこそ取り組みがいもあります。
地元の空き家が少しでも活用され、既存ストックを活かしたまちづくりに少しでも貢献できたら嬉しいものです。
物件については以下のyoutubeより↓
https://www.youtube.com/watch?v=jHikS_YTyB4&t=80s
カーシェアリングに代表されるシェア型サービスがさまざまな分野に拡大している中、これが建築業界に浸透しだすと大きな環境 負荷・個人負荷の低減につながることに皆の意識が向いていくとしたら。
「所有」から「共有」へのシフトは、持続可能な社会づくりに欠かせない 要素であることは確かであって、今はまさに、その転換期なのかもしれない。