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中国語声調のポイントと練習方法まとめ

中国語の発音の中でとても重要かつ難しいポイントの一つが声調です。これは音の上がり下がりを表すもので、基本的に4つのパターンがあることから「四声」と呼ばれます。この記事では、四声についての解説とその練習方法について解説していきます。

四声の基礎①単独の音について

そもそも初めて声調について学ぶ方は「音の上がり下がり」についてイメージができないかもしれません。日本語にも単語によっては音の高低によるイントネーション(「紙」…か↑み  「神」…か↓み など)がありますが、中国語の場合は単語ではなく音の一つ一つにイントネーションがある、と考えてください。カラオケが好きな人であれば、音の「しゃくり」や「フォール」などをイメージするとわかりやすいかもしれません。

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第1声 ā

やや出鼻をくじくようですが、1声はイントネーションが「ない」場合です。ずっと同じ高さを維持するということです。「アーアー聞こえな〜い」というときの「アー」のイメージです。普段の声よりワントーン高い位置で維持するのがポイントになります。

音声:mā bō dōu fū 

第2声 á

2声は「上がり調子」のイントネーションで、後ろに向かってしゃくるように音を上げていきます。苦手とする方が多いですが、ヤンキーがキレたときに「あぁ?」と言っているのをイメージしてみると良いでしょう

音声:má bó dóu fú 

第3声 ǎ

3声は少し下がって最後にちょっと上げる、というややトリッキーなイントネーションです。ため息をつくように「あ〜あ」と言う時をイメージしてみましょう。ただ最後に上げるのはこの音が最後に来る時だけで、後ろに音が続く場合はその必要がない(「半三声」と言います)ので、実は「低く抑える」ことさえ意識すればほぼ問題ありません。

音声:mǎ bǒ dǒu fǔ 

第4声 à

4声は「急降下」のイントネーションです。アニメなどで婦人のようなキャラクターが感動して「マァ!(なんて素晴らしい!)」という時のような感覚です(わかりづらいでしょうか)。かなり意識して高い位置から一気に音を下げないと正しく認識されないので、はじめは「やりすぎかも」と思うくらい大げさに表現してちょうど良いと思います。

音声:mà bò dòu fù 

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四声の基礎②2音節の場合

上でも一部説明していますが、四声には音の上がり下がりとは別に基本となる音の高さというものがあります。それらの相対的な位置を図示すると以下のようになっています。

絶対的にドレミファソで音の高さが規定されているわけではありませんが、四声を組み合わせたときに音の相対的な高さが概ね上記のようになっている必要があります。また、後述しますが組み合わせによっては声調が特殊な変化をする場合もありますので、これらを押さえていきましょう。

もう1つ重要な声調の概念に「軽声」があります。母音にピンイン(声調符号)が何もついていない場合は軽声となりますが、この発音の仕方は前の音の声調によって変わります。それらを図で表すと以下のようになります。

それでは、音声を聴きながらそれぞれの組み合わせを練習していきましょう。

1声+1声: kā fēi / chū fā / cān tīng (咖啡 / 出发 / 餐厅)
1声+2声: ān quán / dāng shí / jī jí (安全 / 当时 / 积极)
1声+3声: jī chǔ / biāo zhǔn / fēng jǐng (基础 / 标准 / 风景)
1声+4声: chī fàn / fān yì / guān zhù (吃饭 / 翻译 / 关注)
1+軽声: gēge / chuānghu (哥哥 / 窗户)

2声+1声: liáo tiān / chéng gōng / máo jīn (聊天 / 成功 / 毛巾)
2声+2声: xué xí / chú fáng / ér tóng (学习 / 厨房 / 儿童 )
2声+3声: cí diǎn / tí xǐng / fán nǎo (词典 / 提醒 / 烦恼)
2声+4声: cái liào / hé shì / chéng kè (材料 / 合适 / 乘客) 
2+軽声: yéye / hóuzi (爷爷 / 猴子 )

3声+3声の場合、はじめの3声の音を2声に変えるというルールがあります(なお3声が3連続する場合は、意味の区切りに応じて2声+2声+3声あるいは3声+2声+3声になります)。つまり、guǎn lǐの発音は実際にはguán lǐと同じになります。また、最初の3声は常に半3声になることにも注意しましょう。

3声+1声: bǐng gān / jǐn zhāng / guǎng bō (饼干 / 紧张 / 广播)
3声+2声: bǐ rú / gǎn qíng / jǐng chá (比如 / 感情 / 警察)
3声+3声: guǎn lǐ / jiǎn shǎo / dǎ rǎo (管理 / 减少 / 打扰 )
3声+4声: biǎo shì / duǎn xìn / fǎ lǜ (表示 / 短信 / 法律)
3声+軽声: nǎinai / jiǎozi (奶奶 / 饺子)

4声+1声: dà jiā / dàn gāo / fàng sōng (大家 / 蛋糕 / 放松)
4声+2声: diào chá / fù zé / jià gé (调查 / 负责 / 价格)
4声+3声: dài biǎo / gòu mǎi / bìng qiě (代表 / 购买 / 并且)
4声+4声: bì yè / cuò wù / jiàn yì (毕业 / 错误 / 建议)
4声+軽声: bàba / dìfang (爸爸 / 地方)

声調の重要性について

ここまで四声の基本について解説してきました。慣れないうちは非常に難しいのですが、これをきちんとマスターすることが中国語学習では必須になります。

「でも、発音さえあってれば声調間違ってても大体伝わるんじゃないの?」

もちろん文脈があれば理解してもらえる場合もありますが、声調を間違えると体感として9割は正しく伝わりません。そもそも中国語話者が音を聴く時は発音と声調をセットで聴いているので、声調が違えばそれは「違う音」になってしまうのです。māとmáは違う音ですし、 lǎiとlàiも違います。

またリスニングにおいても、聞こえた音の声調を正しく認識する能力を身に着けた上で、「発音と声調をセットで聴く」という習慣をつけないとスムーズに会話することができません。もし中国語に声調がなかったら同音異義語ばかりになり、文脈と発音だけで単語を推測するのには限界があるからです。

「こんなに複雑だと、中国人だって間違えることあるんじゃないの?」

みなさんが日本語を話す時に、単語やフレーズのイントネーションを間違えることはどれくらいあるでしょうか?日本人であれば「どうぞよろしくお願いいたします」という文字を見れば無意識に正しいイントネーションが頭に浮かびますし、「雨が降る」を「アメ(飴)が降る」と言い間違えるようなことも普通はないでしょう。

中国人にとっての声調も同じようなものなので、普通はどれだけ文が長くても間違えませんし、もし間違えてもすぐに気づいて修正できます。ネイティブの自然な速度の発話では一部上記にない変則的な声調変化が起こることもありますが、これにも一定のルールがあるので必ずしも「間違い」というわけではありません。

ただし、時代とともに声調が変化して、辞書に載っている声調と実際にネイティブが話す時の声調が異なるケースはあります。たとえば「因为」は本来yin1wei4ですが、近年はyin1wei2と読む人が増えています。

声調の練習方法〜基礎篇〜

ということで簡単にまとめてしまえば「声調はすごく大事」ということになりますが、ではどうやって練習したら良いのでしょうか。

基本はやはり参考書のCDなどを繰り返し聴いてそれを真似することでしょう。ここで注意してほしいのが、同じ音(発音)だけで練習しないことです。「音の上がり下がりは発音とは別だから、maとかtaとかどれかの音でできるようになればもう大丈夫」のように思ってしまいがちですが、上でも書いたように中国語の音は発音と声調がセットです。

同じ声調であっても音によって微妙にニュアンスが変わることもありますし、逆に同じ音でも声調によって響き方が変わることもあります。もちろんすべての組み合わせを練習するのはかなり大変なので最初は一部の音だけで練習すればよいのですが、それだけで「わかった気にならない」ことが大事です。

また、いくらCDで聴いて練習しても、結局正しく発音できているかわからないという問題があります。これを解決するには以下のような方法があります。

①自分の声を録音してCDの音と聴き比べる
自分では完璧に発音できていると思っても、録音したものを聴いてみると「えっ…全然だめじゃん…」と現実に打ちのめされることはよくあります。自分の声を聴くこと自体すごく恥ずかしいですが、そこに自分自身で向き合うことで得られるものも少なくありません。

②発音チェックアプリを活用する
最近は、下のようなAIで発音や声調をチェックしてくれるアプリが出てきているので、それを活用するのも良いでしょう。

③アプリなどでネイティブに発音を聴いてもらう
HelloTalkやHiNativeなど、ネイティブの人に質問できたり友達を作ったりできるアプリも増えています。無料でもけっこう使えるものが多いのでこうしたものを積極的に利用するのも一つの手段です。

④レッスンで直接指導を受ける
とはいえいくらネイティブでも、発音の良し悪しは判定できても具体的にどこがおかしく、どうしたらよくなるかをうまく教えられるとは限りません。正確で効果的なフィードバックを求めるなら、やはり専門の訓練を受けた講師にみてもらうのが一番でしょう。

もちろん講師の中でも指導のクオリティに差はありますし、相性の問題もあります。おすすめは音声学の知識を持った先生や、日本語が流ちょうに話せる先生です。なおアーキ・ヴォイス外国語スクールでも、発音に特化したマンツーマンレッスンの受講が可能です。

声調の練習方法〜中級篇〜

単独の声調と声調2つの組み合わせについて明確なイメージが持てれば、基礎はできていると言って良いでしょう。長い文章であっても突き詰めていけばこの基礎の延長でしかないですし、声調のイメージがしっかりできていれば、指導者がいなくても自分の力で矯正していくことができるからです。

この段階ですべきことは以下のようなトレーニングです。声調だけを意識するのではなく、細かい発音も意識して改善していくと良いでしょう。

①漢字力の増強
軽視されがちですが、発音がわかる漢字をとにかく増やすというのも非常に大切です。というのも文章を音読しよう、というときに発音がわからない漢字が多いと、都度調べなければならず効率が悪く、またモチベーションも下がりやすくなってしまいます。

アプリでおすすめなのはHSK公式の単語アプリです。これをやり込めば基礎としては十分でしょう。

そのほかおすすめの勉強法として、「日常で目にする漢字を中国語で発音する」というものです。街を歩いているときに目にする看板などに書いてある文字を一通りさらっていくだけでも、意外とけっこうな勢いで漢字の知識を増やすことが出来ます。中国語ではあまり使われない漢字もあると思いますが、そこはあまり考えずにとりあえず目にしたものをどんどん覚えていくと良いでしょう。

②音読
文章の音読練習をする場合、やはりなるべくCDつきの参考書などを使うのが良いでしょう。ここでもおすすめはHSK公式の長文テキストや過去問集です。時折自分の発音を録音して聴いてみるのをおすすめします。

③シャドーイング
ある程度文章の音読にもなれてきたら、シャドーイング練習をしてみましょう。「シャドーイング」とは、音声を聴きながら、少し遅れて同じ文章を読み上げることです。正しい発音のイメージをつかみやすいですし、再生速度を調整していくことで自然と発話のスピードも向上していきます。また同時に耳を慣らすことにもつながるのでリスニングの練習にもなり、非常に効果的なトレーニングと言えるでしょう。

中級者から上級者を目指すのであれば、映画・ドラマや動画などの生教材を利用してシャドーイングをやりながら、ネイティブレベルの発話速度を目指していくと良いでしょう。


今回の記事では声調の基礎知識とその重要性、そしてどのように練習したらよいかについて解説してきました。今後の記事では音読やシャドーイングにおすすめの参考書や教材、発音チェックアプリの使い方などについて詳しく説明していきますので、そちらもぜひご期待ください^^

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編集:アーキ・ヴォイス外国語スクール