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運動不足を改善すると体力だけでなく心臓の機能も改善する?!ー2年間の検証からー

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Point 1.日頃から運動不足だと、体力や心臓の機能が低下していくため心不全などになる危険性がある
Point 2.有酸素運動を2年間行った結果、運動前と比べて体力や心臓の機能が改善することが分かった
Point 3.「楽しい」と思えるような運動を継続して行えることがポイントである

みなさんは日頃から運動をしていますか??

運動不足は筋肉が衰えていくだけでなく、体力や心臓の機能が低下していきます。それにより、将来的に心臓病などの病気になる危険性が高まります。

心不全とは、心臓の機能が悪くなることで、息切れやむくみが起こりやすくなり体力がだんだんと衰えていく病気です。

では、40-50歳の時にどのようなことを始めていれば、心臓の機能が保たれるのでしょうか??

今回は、このような中年期の方が運動を継続的に続けた際に、体力や心臓の機能にどのような効果があるか検証した研究をご紹介します。

自分に合った運動を行って,2年後に変化を比較

この報告では、定期的に運動をする習慣がない中年の方61人(平均年齢53歳、男性48%)を対象としました。この研究の対象者は、メールや研究機関のニュースなどを通じて募集され、健康に問題はありませんでした。

対象者はランダムに運動群(34名)と比較群(27名)に分けられました。

運動群では、個別にトレーニングの負荷が設定されました。最初の10か月間は毎月、運動の専門家と共に運動の頻度や運動時間、運動強度などを調整し、時間経過にて強度が上がるように実施しました。

10か月が経過した後は、週1回の有酸素運動を続けてもらいました。このとき、有酸素運動のメニューは、機械を用いた運動(エルゴメータ、トレッドミルなど)やウォーキング、スイミング、サイクリングなどを対象者の希望に合わせて決定しました。

一方、比較群では、バランス練習やヨガ、ストレッチなどを週3回、2年間継続してもらいました。事前にビデオを配布するかオンラインで動画を閲覧できるようにし、運動は自宅で行ってもらいました。

心臓の機能は、心臓エコー検査とカテーテル検査を用いて、研究開始前と開始2年後に評価を行いました。また、研究開始前と開始10ヶ月後および開始2年後に、体力の目安となる「最大酸素摂取量」などを測定しました。

最大酸素摂取量は、運動した際に取り込んだ酸素の最大値のことを指します。

運動すると、体力の目安である最大酸素摂取量が増加!

解析の結果、運動群では、研究開始前と比較して研究開始10ヶ月後ならびに研究開始2年後に最大酸素摂取量が改善していることが明らかとなりました。

この結果から、専門家の管理の下で行った運動によって体力が改善し、その後の週1回の運動で改善した体力が維持できていたと解釈できます。

一方、比較群では、開始前、開始10ヶ月後、開始2年後で差は見られませんでした。

運動によって、心臓が蓄えることのできる血液の量も増加!

更なる解析の結果、運動を行った群では、血液を送り出す前に心臓で蓄えられる血液の量(左室拡張末期容積:LVEDV)が増加していることが明らかとなりました。このLVEDVの値が大きくなると、心臓が収縮する際に、より多くの血液を送り出すことができると考えられます。

また、運動を2年間行うことで心臓の筋肉の硬さにも改善が見られました。これは、心臓に血液を多く蓄えられるようになった要因の1つであると考えられます。

継続は力なり

先ほど挙げた水泳やランニングといった運動は、有酸素運動として分類されています。
しかしながら、当然、運動によって身体にかかる負荷は様々です。

国立健康・栄養研究所では、運動などに伴う負荷を「METs」として数値化し、運動負荷の目安としています(参考文献・参考資料①)。

この「METs」は、安静状態 (何もせずに椅子に座っているだけの状態) と比較して、運動や活動を行った際に何倍の代謝(カロリー消費)をしているかを表しています。

先ほどのスイミングのうち、クロールをゆっくり行う場合は5.8METs、ランニングを楽な労力で行った場合は3.0METsとされています。

このように、運動負荷を意識して運動できるといいですね。

ー紹介文献情報ー
【雑誌名】Circulation. 2018 Apr 10;137(15):1549-1560.
【筆頭著者】Howden EJ
【タイトル】Reversing the Cardiac Effects of Sedentary Aging in Middle Age-A Randomized Controlled Trial: Implications For Heart Failure Prevention.
【PMID: 29311053

▼参考文献・参考資料1:国立健康・栄養研究所. 改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』 (2018年10月20日閲覧)


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