mel

指先が温まるよりもさよならの速度が早くて
洗い流された跡が人生の全てのように思えてしまう

たしかにあった手触りや呼吸する起伏
瞬きの下の虹彩の奥行き

時間という軛の周りで
光や影や星や花は奔流している
氾濫している

小さい人の形にすぎない暫定の私も
軛の淵にも外にも氾濫しているけれど

この容で見る何もかもは
微笑み返す前に
殴りつける前に
握り返す前に
輪郭が失われてしまう

奔流の境界でこの容をしている理由を
形あるものとして伝えるより早く






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