月の灼熱

月を見る。
あの白さ、輪郭、グレージュの起伏。
滑らかさと奏でられている濃淡。

降り積もる雪が露わにしてゆく
意識の微細があるだろう。
その柔らかな繊毛の先にかかる虹。

虹の閃きの奥にいつかみた夕焼け。
青空。
君の笑顔。
産まれたての小さな手のひらに燈る紅い色。
冬の河川敷で鳴っていた心臓の灼熱。
赤血球の中にも虹色はあるだろう。
祖父の硝子質の網膜に降りていたのは
冬の森の気配。

気泡が立ち上がる向こうで
羽根を広げるけもの。

死と生のあわい。時を観る。
手の中の灼熱。
空を映す。
見上げる空の中には月。

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