閃光

生かされている、限りある命の間。
手を伸ばす。
不思議なことに貴方を近くに感じる。

人は個々で未熟だと云う。
人は個々で完全だと云う。
個々が、未熟が重なれば「ひとつ」になると云う。

林檎の実は未熟ですか。
林檎の木は完全ですか。
林檎の実を集めれば「ひとつ」になりますか。

光は割れたら虹になる。
色が混ざれば黒になる。
虹が束なって光になるわけでもない。
黒は分たれないまま白を浮き彫りにする。

「私」というコップが割れて、「私」と名付けられていた水が海に還る。
次に生まれることがあったなら、それは私のままか。
「私」ではなかったヴィジョンを少しずつ拾って、混ざって、「僕」という器に降りて「僕」として生きる。
それは「私」ではないし「僕」そのものでもない。

瞬間が重なったら永遠になるわけでもない。

とても小さな一滴。
総体を切り取った一滴。
コップの中に入った宇宙が出逢って、言葉を使って話したり、出逢ったり別れたりしている。

宇宙の中心にある小さな焔。
瞬間の中に永遠が、永遠の中に瞬間があるということを、焔だけは知っている。

その焔が水や器を纏って、ここにある手で永遠や瞬間について、或いは私や僕や貴方へ、触れようと試みている。

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