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罪の森 another episode ベラドンナ・リリーと狼男の月夜①

ベラ「何十年、何百年を過ぎても
          あの月の美しさは変わらないわね」
怠惰の大罪人、ベラドンナ・リリーは
自分の部屋の窓から白く輝く月を眺めながら
先程、ダチュラがいれた紅茶を口にする。

ダチュラ
「ベラ様!どうですか!?お味の方は?」

怠惰の罪人、ダチュラは満面の笑みで
ベラドンナに紅茶の感想を聞き出すが
無機質で味のしない返答が返ってきた。

ベラ
「あぁ、、いつもどおりだわ」
ダチュラ
「ベラ様!
   それは美味しいという意味ですか!?」
ベラ
「めんどくさいわね、変わらないわ」

ダチュラ
「またぁベラ様は
   変わらない美味しさって意味ですよね!?」
ベラ
「何でも良いわ、ダチュラ。ところで
   頼んでいた書類の整理はもう済んだのかしら?」

ダチュラ
「いけなーい!まだ途中でした!
    いってまいります!」

慌てたダチュラは急いで書類が散乱している。
部屋へと向かった。
一つため息をつくとベラドンナは
月夜の照らされた罪の森を散歩してみる事にした

身支度を整え、ベラドンナは外へ出た。
季節は夏、夜の森は涼しい風が流れ
木々達が優しく揺れている。

夜の森は動物達も活発に活動しており
梟がベラドンナを見つめている。

ベラドンナはふと足を止めた

ベラ
「・・・出てきなさい
   私を追っているのはわかっているわ」

夜の影から現れたのは黒い獣角を生やした
元・怠惰の罪人"オトギリ"が現れた
「ベラドンナ、、お前さえ来なければ
 私が大罪人になれたはずだったのに、、、!」

ベラ
「あら、オトギリ?久しいわね
 私が大罪人になってから
   掟を破って森を抜け出して
   人間と悪さしているって噂よね、、
   めんどうな人よね、あなた」

オトギリ
「お前のそういう態度が腹が立つんだよ!
    お前さえ、お前さえいなければ、、、!」

ベラ
「無駄よ、貴方の力量は私より下
   ストレリチアも貴方に力がないから
   大罪人が務まらないと見限ったのよ。」

オトギリは不気味な笑みを浮かべ
懐から注射器を取り出した
注射器の液体はどす黒く
見るからに禍々しい気を放っている。

オトギリ
「私はこの森を離れて手に入れたのよ!
 あなたより強くなる方法を!
この薬さえあれば!あなたなんて・・・!」

オトギリはいきよいよく注射器を腕に刺し
オトギリの身体に黒い液体が注入される。

オトギリの身体はみるみる2倍以上の大きさになり
みるみる醜い姿をした異形の怪物へと変わっていった。

ベラ
「へえ、、ラナン以外に
   そんな凄い薬を開発出来る者がいるのね」

オトギリ
「タベテヤル!コロス!!ベラドンナァァァ!」

ベラ
「本当にめんどくさいわね、、、あなた」





ダチュラはまだベラドンナの部屋で
書類の整理をしていた。

ダチュラ
「あぁー!!もう!!やだぁー!!
    何でこんなに書類がたくさんあるのよ!!
    あぁーあ、こんな事だったらラナン様の
    いらない書類粉砕機、返さなきゃ良かったな」

ダチュラ
「今にみてなさい!この最強ダチュラちゃんが
   ストレリチア様を倒してこの罪の森を掌握してみ     せるわ!!そしたらこんな書類整理なんてあんな燃えた赤い頭女にやらせるんだから!!」

ストレリチア「誰を倒すだと?ダチュラ?」

ダチュラの背筋が一気に凍りづいた
ダチュラは恐る恐る振り返ると
強欲の大罪人、そして罪の森の支配人である
ストレリチア・ルピナスが
動物が獲物を捉える鋭い目付きで
こちらを見ていた。

ダチュラ
「ス、ストレリチア様!!?
   いつからそこに!!?
   い、いらっしゃったのですか?!」

ストレリチア
「ダチュラ、私はそんなに
   燃える様な赤い髪をしているのかい?
   お前の血も確かめてやろうか?
   お前も燃える様な赤い血が流れるのを、、」

ダチュラ
「た、大変!!申し訳ございませんでした!
   な、なにとぞお命だけは〜」

ストレリチア
「もうよい、お前も
    書類整理をして気がたっていたのだろう
    ベラドンナはどうした?いないのか?」

ダチュラ
「えっ、御屋敷に居るはずですが、、、
    いらっしゃらないのですか?」

ストレリチア
「ふむ、、どうやら
    ベラドンナは外へ出ているな。
    実は同盟を結ぶ人間の組織から依頼があってな
    掟を破って森を抜け出した罪人が
   人間の化学者達により
   人体実験を受けていたらしい
   その実験中、隙をみて罪人は逃げ出し
   ある薬を持って逃亡した様だ。」

ダチュラ
「その罪人ってまさか、、、」

ストレリチア
「ああ、多分ベラドンナを酷く憎んでいた
   オトギリに間違いないだろう
   あいつは逃げるのが上手いからな
   もし、オトギリが薬を持ち出して
   ベラドンナに復讐しようとなれば、、」

ダチュラ
「ストレリチア様、それはどうゆう事ですか?」

ストレリチア
「薬の効能を依頼主から聞いたが、、、
   その薬を投与された者は強靭な肉体を手に入れる      反面、自我を失い本能のままに行動する。」

ダチュラ
「たいへん!そんな危ない奴がベラドンナ様を
    狙っているかもしれないのですね!」

ストレリチア
「ベラドンナを探すぞ、ダチュラ
   もしかするとオトギリはもうこの森に
   入り込んでいるかもしれん」

ダチュラ
「行きましょう!ストレリチア様!!」


森に咆哮が鳴り響く
オトギリの容姿はもうこの世にいない
今やベラドンナを狙う殺戮の怪物と化していた

ベラ
「仕方ないわね、、、」

そういうとベラは扇子を取り出し
優雅に扇ぐ、こんな状態にも関わず
顔色一つ変えずにオトギリに言い放つ

ベラ
「大罪人としての職務は果たせなねばな」

睨み合う二人、先に動いたのはオトギリだった
鋭い手刀がベラドンナを捉えようとするが
ベラドンナは余裕といわんばかりに
それを回避した。

回避したと同時にベラドンナは扇子を
扇ぐと突風が起こり、オトギリを包み
オトギリの身体を吹き飛ばした。

オトギリの身体は木々にぶつかり
ところどころ傷付いている。

ベラ
「ラナンが作った扇子、、これ凄いわね
    流石は森一番の発明家であり化学者だわ」


一方、ラナンの実験室では

ラナンキュラス
「はっくしょい!」

ジニア
「あら?ラナン様がくしゃみ?珍しいですね」

ラナンキュラス
「これは誰かが私を天才だ
   と噂しているかもしれんなあ!」

笑みを浮かべラナンキュラスは
ジニアを後ろから抱きしめて

ラナン
「ジーニー、そろそろ実験の時間だよ」

ジニア
「あ、は、、はい、わかりました。ラナン様」


ところ変わり、森の外

ベラドンナは余裕の表情というより
本当にめんどくさそうな顔でオトギリに話す。

ベラドンナ
「オトギリ、貴女を
   ストレリチアに拘束してもらうわ」

オトギリ
「コロス、、、コロス、ブッコロス!!!」

もやはオトギリを突き動かしているのは
ベラドンナに対する恨み、そしてまた体を変形させ、獣の様に四つん這いの姿に鋭い牙
もはやオトギリは罪人ではなく
突然変異体の怪物となってしまった。

ベラドンナ
「まだ姿を変える事が出来るの
   ふむ、どうしたもんか」

怪物はベラドンナを睨むと周りをぐるぐると周り出した。

ベラドンナ
「!、、、早いわね」

怪物が身体ごとベラドンナに突進を仕掛けた
余りにも早い、体当たりにベラドンナの体は吹き飛び木々にぶつかる。
傷付くベラドンナ、いくら不老不死だからといっても怪我はする。身体中に擦り傷が出来上がり
黒いドレスもボロボロになる。万事休すか

怪物が二回目の突進を仕掛け
ベラドンナがもうダメかと思ったその時
一瞬、かつてベラドンナが人間だった頃に愛した男性、コリウスの走馬灯が走る。

その時だった、森の奥から
何者かが怪物とベラドンナに割って入ってきた

そして怪物の突進を止めたのは
怪物と同じ体格、白と銀色の毛を生やした狼
だがその狼は服を着て二足の足で大地を踏みしめている、白銀の狼人間。人狼だ。

狼男がベラドンナに振り返り何か目で訴えかける
早く逃げろと言ってる様な眼差しで私を見ている様だった。

ベラドンナはその狼を見て、言葉が漏れた
そんなはずはない、ありえない
しかし、あの眼は間違えなく私が愛した男の瞳


ベラドンナ
「そんな、、、貴方なの?コリウス」


②に続く





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