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罪の森 "another episode"後編

それはこの森に珍しく雪が降るあの日の事だった
私の助手、ジニアが
瀕死状態の一人の男の子を見つけおぶって
私の実験室に連れてきたのだ。

どうやら、人間の男の子だ。
骨は複雑に砕かれ
内臓にも損傷、左の眼は完全に傷付いてる。
私は具合をみると
ラナン「これは酷い状態だなあ」
ジニア「ラナン様、如何なさいますか?」

ラナン「ただ治してもつまらないからな
              新しく配合した薬を試してみるか」
              
ラナン「ジニア、手伝ってくれ」
ジニア「かしこまりました」

全身傷付いた男の子の身体を
ラナンキュラスは綺麗に縫合していき
発明した筋肉増強剤や様々な薬を投与し続ける
ラナンキュラス、そして助手のジニアによる
何日もおよぶ手術は続いた。
流石、人間の頃、神童と呼ばれた
ラナンキュラスの手術は完璧であった、、、
そして最後の仕上げが始まった。

ラナン「我ながら最高の手術だ!素晴らしい!」
ジニア「流石はラナン様」
ラナン「さっそく仕上げにとりかかろう。」
ラナンキュラスは不可思議なビーカーから
慎重に蒼い眼を取り出した。

ラナン「人間に死んだ罪人の眼を移植するとは我ながら天才と思う。どんな化学反応が出るのか」

ラナン「さっそく始めよう、眼の移植手術だ」
ジニア「はい、ラナン様」

男の子の手術は無事に成功した。
移植した左眼も拒絶反応を起こさず
順調に回復していった。

名前はライトレイク

どうやら森に迷い込んだとところを
あまり頭が良くない罪人に襲われたらしい

まだ6歳の人間の子供だが
ライトはすぐに元気になると森を駆け回り
世話役を任せたジニアもたじたじだった。

ライトに魔除の紅茶を飲ませると
気に入ったのかなんども催促するので
私が飲みすぎだと叱咤するとすぐに泣き出した。

泣き虫ライトめ、
しかし大切な研究材料なのは確かだ
しかし、人間と罪人は一緒には住めない。
それがこの森の掟なのだ

私は同盟を交わす人間達に
ライトを人間の保護施設に入れる
約束を交わしていた。あと3日後には
この泣き虫ライトとはさよならとなる。

ライト「先生!おはな!!あげる」

ライトが森の中で蒼い華を見つけた。
人間に貢がれる物は高価な物ばかりだったが
私は悪い気はしなかった。

術後の体調は良好、もうすぐ約束の日が近づく

ラナン「おい、泣き虫ライト」
ライト「先生!僕、泣き虫じゃないもん!!」
ラナン「ふむ、じゃあ今から話す事を泣かずにいられたら泣き虫は取り消そう」
ライト「泣かないもん!」

泣き虫ライトに私は
明日、人間の施設に連れていかれる話を話すと
案の定、雷が鳴り響く様に泣き出した。

泣き虫ライトはジニアに任せ、
私は研究内容を本に書き留める事にした。

翌日、人間達がライトを引取りにやってきた。
泣き虫ライトは最後まで泣いていた。
大人の手に連れられ、ライトはこの森を去った。

時は流れー27年の月日が流れた。
ライトレイクの存在を忘れかけてたある日

今度、行われる。
定期治療会合で私に取材をさせて欲しいと
とある新聞社、ルフィーナ通信から手紙が届いた。

手紙の差出人には
記者、ライトレイクと名があった。
同姓同名か?いや、もしかすると、、、

なんの因果が巡ってなのか
私は27年振りに人体実験をしたあの少年
泣き虫ライトに会うのかもな。

窓を眺めるとあの手術を施した日と
同じ様に森には珍しく雪が降り、森が美しく白に染まる。


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