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白黒つけたい著作権の問題。中華ゲーム機を買うのは合法か!?吸い出しは??犯罪事例も公開!!

昨今、レトロゲームが流行っていると言われていますが、その人気もあってエミュレータ専用のゲーム機が広く流通しています。
俗にいう中華ゲーム機と言われるものですが、中華ゲーム機は何となく違法じゃないのか?と思わせる要素があります。
しかし、日本のAmazonでも何の規制もなく買える状態なので、中華ゲーム機を買っていいのか、違法性はないのか気になる人もいると思います。
著作権についての法律はあるものの、法律をそのまま読んでも理解できないし、どこをどう探してよいかわからない。
素人が良いと言っていても、本当は違うかもしれない。
自分で吸い出すのもどこまでしてもいいのかわからない。
今回は、気になる著作権について白黒つけようという趣旨でお話していきます。

初歩の知識

ゲームの取り扱いについては色々な用語や隠語が使われます。
今回使用しない用語も含まれますが、代表的な言葉について解説してから本題へ入ろうと思います。

割れ

起源は「warez」(waresからの隠語)から来たもので、プログラムを改変してパスワードを入れないでも使えるようにして流通させたり、改変するプログラムを流通させたり、パスワード自体を生成するプログラムを配布したりすることを指していました。
「Warez」を日本ではワレズと呼んだりしたことで、不正に流通するプログラムを「割れ」と言うようになりました。広義では複製も入りますが、一般的には起動時のパスワードなどを入れなくても遊べる(起動する)ようにする行為を指します。
現代ではパスワードを入力するゲームは少ないので、Steamなどでダウンロードできるゲームを個人に紐づけしないで遊べるようにしたものなどが「割れ」と言われます。

吸い出し

「吸い出し」はファミコンのカートリッジ(カセット)からゲームのプログラムを抜き取る行為(抽出)をパソコンで吸い取っているようにイメージすることから言われるようになり、広義ではゲームのプログラムを複製する行為を指します。特定のゲーム機のゲームプログラムをパソコンに取り込むことや単純に複製することを含みます。CDやDVDなどの工学メディアを複製するのはリッピングということもあります。英語の「rip」(切り取り)を意味する言葉から生まれました。

チート

英語の「cheat」(騙す、欺く)が語源。ゲームを優位に進めるため、バグを用いて不正行為をしたり、ハッキング行為をすること。
競争するようなゲームでよくみられるが、オフラインのゲームでも無敵状態になったり、RPGではレベルMaxや、お金Maxで始まるようにして遊ぶこと。日本のRPGは難易度が高いので、海外ではチートデータを使って攻略することがあるそう。チートを行う人をチーターという。

MOD

ゲームプログラムを改造するデータのこと。英語の「modification」の略語として使われており、ゲームを開発した側が提供する場合もありますし、ゲーム制作者以外の有志によって作られたデータもあります。
ゲームを遊びやすくしたり、グラフィックを改善するものが多いですが、ゲーム制作者が意図しない表現(主に性的表現を誇張する)をするために作られることがあり、悪いイメージがありますが良いもののほうが多数です。
不具合などを改善するプログラムはMODではなくパッチ(patch)と呼ばれることが多いです。ダウンロードコンテンツ(DLC)も広義ではMODです。

バニラ

トレーディングカードの用語から転用されたと思われ、アイスクリームのトッピングなどのないシンプルな状態(バニラ味)を例えにして生まれた言葉です。
ゲームではMODを導入したプログラムに対して、修正なしのオリジナル状態のものを指します。

エミュレータ

ゲームの場合、ゲーム機の実機とその互換機以外でゲームを遊ぶには何らかのプログラムが必要です。実機をハードで再現するものもありますが、多くは実機を再現するプログラムでゲームを動かします。
ハードを真似て実行するプログラムをエミュレータと言います。
英語の「emulate」が語源で、模倣することを指します。

シミュレータ

何らかのシステムを模擬すること。英語の「simulate」が語源で、社会システムや気象などシミュレータで模擬して予測したり役立てたりします。
ゲームでは交通システムや社会システムを模擬して遊ぶものがあります。
代表的なものとして、昔はシムシティや信長の野望などの社会システムをシミュレートするものが多かったですが、最近はスポーツやドライブなど多岐にわたっています。

著作権とは

著作権とは著作権法で認められた創作物などを作った人や団体に認められる権利のことを言います。

今回はゲームについてですが、ゲームは著作物として認められています。

ゲームに該当する著作権は「第十条九項」にプログラムによる著作物と明記されていますが、最近のゲームは高度化しており、ゲーム中の音楽や主題歌は「二項」の音楽の著作物であると言えますし、ゲーム中の動画については「七項」の映画の著作物とも言えます。ゲーム全体が映像表現として扱われ、映画のように上映すると言う表現も使われています。

第十条 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
二 音楽の著作物
七 映画の著作物
九 プログラムの著作物

著作権法の記述のある公的サイト

出典:e-Govポータル (https://www.e-gov.go.jp)

著作権は親告罪だから。。。

よく聞く話で、「著作権は親告罪だから違法状態でも著作権者が告発しなければ大丈夫」と言っているのを耳にしますが、著作権は一部非親告罪化しました。

詳しくは文化庁の公式サイトに記載されています。

著作権法には罰則も明記されています。
著作権法「第百十九条」では以下のように定められています。

第百十九条 著作権、出版権又は著作隣接権を侵害した者(第三十条第一項(第百二条第一項において準用する場合を含む。第三項において同じ。)に定める私的使用の目的をもつて自ら著作物若しくは実演等の複製を行つた者、第百十三条第二項、第三項若しくは第六項から第八項までの規定により著作権、出版権若しくは著作隣接権(同項の規定による場合にあつては、同条第九項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。第百二十条の二第五号において同じ。)を侵害する行為とみなされる行為を行つた者、第百十三条第十項の規定により著作権若しくは著作隣接権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者又は次項第三号若しくは第六号に掲げる者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

著作権法違反は最大で、10年以下の懲役と1千万円以下の罰金が科せられます。ですから、著作権法に違反していることが明らかであれば民事訴訟ではなく、刑事罰が与えられることがあるのを覚えてください。

私的な利用に対しての複製

CDの複製でよく聞かれることですが、自分が持っているCDをコピーして自分のために利用するのは大丈夫と言われます。
これについては、文化庁が公開していますので、サイトを確認してください。

一部を引用します

私的使用のための複製
(第30条)  家庭内で仕事以外の目的のために使用するために,著作物を複製することができる。同様の目的であれば,翻訳,編曲,変形,翻案もできる。
 なお,デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製する場合には,著作権者等に対し補償金の支払いが必要となる。
 しかし,[1]公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(注1)を用いて複製するときや,[2]技術的保護手段(注2)の回避により可能となった(又は,その結果に障害が生じないようになった)複製を,その事実を知りながら行うとき,[3]著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を,その事実(=著作権等を侵害する自動公衆送信であること)を知りながら行うときは,この例外規定は適用されない。
 また,映画の盗撮の防止に関する法律により,映画館等で有料上映中の映画や無料試写会で上映中の映画の影像・音声を録画・録音することは,私的使用目的であっても,この例外規定は適用されない(注3)。
電子計算機における著作物の利用に伴う複製
(第47条の8)  コンピュータ等において著作物を適法に利用する場合には,当該コンピュータ等による情報処理の過程で行われる著作物の複製を行うことができる。

販売や配布を目的としない私的利用な範囲での複製は著作権法に違反しないと明記されているので、単純にファミコンなどのゲームを「吸い出す」行為は違法ではないといえます。
また、パソコンでの利用で適切に扱うのであれば利用過程での複製が認められています。(主に買ってきたゲームをパソコンなどへインストールする行為)

プロテクトを含む単純複製は私的利用の範囲で認められていますが、CDやDVDなどに使われるプロテクトを解除または削除して複製することは出来ません。
ゲームのプログラムにおいても、コピープロテクトが採用されている場合は、それを解除または削除しての吸い出しはできません。

著作権法違反になる行為

著作権法違反になる行為とは、著作権の侵害に当たるとみなされる行為です。
著作権法では「第百十三条」で規定されています。

要約すると

著作物を販売または配布を目的として複製または別の手段で手に入れて、所持すること。(輸入を含む)
著作物を販売または配布を目的として複製または別の手段で手に入れて、輸出すること。
インターネットを介して販売、配布を行うこと。(アップロードを含む)
インターネットを介してダウンロードすること。
インターネットを介して販売、配布を行う場所を提供すること。(サーバーやP2Pなどを含む)
補足:複製するときにプロテクトなどを解除または削除して複製してはならない。

このようになります。

販売や配布(営利目的)が違法行為にあたりますが、インターネットでダウンロードしてくることやアップロードすることも違法行為です。
インターネット上にあるゲームが違法な状態であることを知らないでダウンロードした場合には著作権侵害に当たりませんが、怪しいと思いながらダウンロードするのは著作権法違反に問われる可能性があります。
知らない状態でも、客観的に違法と判断された場合には同じく著作権法違反に問われる可能性があります。

ダウンロードをすることが認められているAppleのAppStoreやGoogleプレイストア、Steamなどからダウンロードするのは問題ありません。

ゲーム機にゲームが残っている状態で販売や譲渡をすることは、著作権の侵害に当たります。

中華ゲーム機

エミュレータを動かすために作られたゲーム機がAmazonなどで売られています。
ゲーム機自体に違法性はないのですが、付属品に様々なゲームを収録したSDカードなどが含まれていて、これが著作権を侵害するものだと推測されます。
様々なゲーム機のゲームが網羅的に収録されているので、販売元は著作権侵害をしている可能性が高いです。
これらの中華ゲーム機を購入した場合はどうなるでしょうか。

知っているいないにかかわらず、販売や配布目的ではなかった場合には2021年10月1日時点では著作権法違反にはあたらないと言えます。
なぜなら、著作権法の著作権侵害に当たる行為に明記されていないからです。
何か矛盾を感じますが、今のところは中華ゲーム機が著作権の侵害をしていても、買ってよい状態だということです。(道義的に良いかということを論点としていません)

中華ゲーム機の購入については、著作権以外の法律に抵触しないかが不安ですが、スター綜合法律事務所の公式サイトでは商標権について記述がありました。
コピー商品の購入についてですが、リンク先の記述を読むとわかりますが、私的利用の購入は商標権の侵害にあたらないと書いてあります。
また、サイトの記述によると、輸入する場合は税関の判断で没収されることがあるようです。

吸い出したゲームの取り扱い

吸い出したゲームの取り扱いについては、著作権法「第四十七条の三」に規定されています。

(プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等)
第四十七条の三 プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において実行するために必要と認められる限度において、当該著作物を複製することができる。ただし、当該実行に係る複製物の使用につき、第百十三条第五項の規定が適用される場合は、この限りでない。
2 前項の複製物の所有者が当該複製物(同項の規定により作成された複製物を含む。)のいずれかについて滅失以外の事由により所有権を有しなくなつた後には、その者は、当該著作権者の別段の意思表示がない限り、その他の複製物を保存してはならない。

ゲームのプログラム(カートリッジなど)を所有するものが、販売や配布を目的(営利目的)としないでパソコンなどのエミュレータで遊ぶために複製(吸い出し)することは問題ありません。
ただし、ファミコンならカートリッジ(カセット)を所有しているときに吸い出しをすることは出来ますが、カートリッジを紛失したという理由以外で手元にない場合、たとえば売却した時には吸い出したものを手元に置くことは著作権法違反になります。

購入や譲り受けたゲームを吸い出ししてから売りに出すのはダメということです。

ゲーム配信

著作権法では営利を目的としない利用について「第三十八条」に規定されています。

(営利を目的としない上演等)
第三十八条 公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金(いずれの名義をもつてするかを問わず、著作物の提供又は提示につき受ける対価をいう。以下この条において同じ。)を受けない場合には、公に上演し、演奏し、上映し、又は口述することができる。ただし、当該上演、演奏、上映又は口述について実演家又は口述を行う者に対し報酬が支払われる場合は、この限りでない。
2 放送される著作物は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、有線放送し、又は専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む。)を行うことができる。
3 放送され、又は有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む。)は、営利を目的とせず、かつ、聴衆又は観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができる。通常の家庭用受信装置を用いてする場合も、同様とする。
4 公表された著作物(映画の著作物を除く。)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供することができる。
5 映画フィルムその他の視聴覚資料を公衆の利用に供することを目的とする視聴覚教育施設その他の施設(営利を目的として設置されているものを除く。)で政令で定めるもの及び聴覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で前条の政令で定めるもの(同条第二号に係るものに限り、営利を目的として当該事業を行うものを除く。)は、公表された映画の著作物を、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物の貸与により頒布することができる。この場合において、当該頒布を行う者は、当該映画の著作物又は当該映画の著作物において複製されている著作物につき第二十六条に規定する権利を有する者(第二十八条の規定により第二十六条に規定する権利と同一の権利を有する者を含む。)に相当な額の補償金を支払わなければならない。

YouTubeでゲームで遊ぶ様子を配信する「ゲーム実況」が人気ですが、ゲームのプレイ画面を送信するのは著作権法「第三十七条1項」によると、YouTubeは収益プログラムや、動画内でYouTubeの運営が広告を流しているところが営利とみなされるため著作権の侵害に当たります。
ただし、ゲームメーカーが「ゲーム配信のガイドライン」で認めている範囲の配信は著作権者が認めているので違法には当たりません。(多くのガイドラインではYouTubeを含む主要な動画配信サイトを明記して認めています)

「ゲーム配信のガイドライン」で認められない範囲(配信してはいけない動画サイトや行為を明記している場合があります)で配信することは違法に当たります。

また、ゲーム内で出会ったプレイヤーへ誹謗中傷があったり、他人の個人情報を公開するなどの行為は、著作権法以外の法律で罰せられることがあるので、注意してください。

動画配信と中華ゲーム機

大手動画配信サイトで中華ゲーム機のレビューや利用方法を動画で紹介しているのを見かけますが、著作権法「第百十三条」に違反する行為とみなされる可能性が高いです。

中華ゲーム機は動画配信サイトで紹介するために購入するという行為が、販売や配布などの営利目的での入手に当たるので、問題があります。
また、動画配信サイトで収益化すること(する可能性があること)が問題になる可能性の高い部分です。
動画の冒頭で「内蔵のゲームについては削除すれば」などと言っていることがありますが、それらの発言に法的根拠は全くなく、中華ゲーム機の営利目的で購入すること自体が違法性の伴う行為であると言えます。
同じように、ゲームを不正に改造または複製した「パチモノ」と言われるゲームを私的に購入するのは問題ありませんが、それについて動画配信をするのは同じように著作権法違反になります。

逆に視聴する側は、道義的な問題があるかもしれませんが、購入することも遊ぶことも問題がありませんし、購入しても該当のゲームを削除する必要もありません。

レビュー動画なども人気があるので、動画制作をする時は注意したいですね。

主要な事件と著作権法違反

(一般社団法人)コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)の公式サイトにゲームやソフトウエアに関する事件と、その事件の何が悪かったのかを掲載しているので、それのリンクを掲載します。

ビジネスソフト等を販売目的でストレージへアップロード、男性を再逮捕

スマホアプリでゲーム画像を無断使用した男性に有罪判決

動画投稿サイト「YouTube」を通じた違法アップロードを摘発

改造ゲーム機に海賊版を収録して販売、男性逮捕

ゲームソフトの海賊版とエミュレータをセット販売、男性逮捕

ネットオークションで海賊版を販売、男性を送致

まとめ

今まで違法だと思っていたことが大丈夫で、違法ではないと思っていたことがダメだったとか、そのように感じられる方もいるのではないでしょうか。
今回は良い悪いというよりも、法律で取り締まられるか否かを中心にお話ししました。
今後の法律改正で変わってくる可能性がありますので、将来的にも約束されたものではないと考えて下さい。
社会情勢で違法じゃなくても出来ないことが多くなっていますので、それらも考えて適切な方法でゲームを楽しんで行ければいいなと感じています。

サポートしてくださると私もあなたも幸せになれる。そんな気がしています。