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解説するびとろ 第4回 J1・J2第2節②

今日もやってきました解説するびとろのコーナーです。今日は3月7日に開催されたJ1・J2第2節の2シーンを見ていきます。

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判定△VAR○ 松原健選手のハンドとオンフィールドレビューのタイミング

主審 今村義朗さん VAR 佐藤隆治さん AVAR 相樂亨さん

上の動画は当該シーンにジャンプするようになっています。

まず、流れを簡易的に示してから、なぜこのような流れになったか深く解説します。

①松原健選手の手にボールが当たる

②その時点では今村さんはノーハンドと判定

③直後にGKオビパウエルオビンナ選手がキャッチ

④キャッチ時点ではVARのチェックが完了していない

⑤プレーが流れている間にVARがチェックし、①がハンドの反則であり、「はっきりとした明白な間違い」があったとして、オンフィールドレビュー(OFR)相当だと判断(8より前のいずれかのタイミングで今村さんにレビューを勧める)

⑥広島ジュニオールサントス選手のタックルが横浜FM岩田智輝選手に入る

⑦今村さんはノーファウルの判定

⑧直後に横浜FMにボールが転がり、「中立」のタイミングになったため、プレーを停止し、OFRを開始

スライド4

横浜FM27松原健選手のプレーに関しては、「手や腕の位置が肩の位置以上の高さにある」状態で腕にボールが当たっているためハンドの反則をとるのは極めて妥当です。この位置でボールが当たった場合はほぼ無条件にハンドとなります。

ですので、今村さんはこのシーンVARの介入を受けずにハンドを取りたいシーンでした。

しかし、手に当たったか脇に当たったかが分からなかったためノーハンドと判断し、プレーを継続させるのは妥当な判断かと思います。

そして、GKオビパウエルオビンナ選手がキャッチしますが、そのシーンで止めるよう言っているような声をTwitter上で見ましたが、それは妥当ではないと考えます。まずVARのチェックは5秒では完了しませんし、今村主審はノーファウルと判断しています。ノーファウルと判断した以上継続するのが妥当です。

そして、横浜FMの攻撃が始まったため監視します。

そして、広島ジュニオールサントス選手が岩田選手にスライディングタックルをしますが、それに関してもノーファウルを判定しています。ボールに先にコンタクトしたためノーファウルに見えやすい判定シーンですが、ボールに触れた後そのままの勢いで足裏が脛付近にヒットしているため、警告とするのが妥当だったと感じます。

ただ、このシーン一発退場になる様なシーンではないため、VARが介入すべき事象ではないとは考えます。

そして、ボールの状況とエリアが中立になったタイミングで、今村さんはプレーを停止しますが、これはそれ以前にVARからオンフィールドレビューを勧める声掛けがあったからでしょう。このタイミングでの停止は妥当だと考えます。

VARルームからの声掛けのタイミングが適切だったかは議論の余地はあるかと思います。音声を聞いていないので分からない部分もありますが、仮に(仮定で話すのはあまり適切ではないですが)プレーが流れている中で声掛けがあると、⑥の判定の精度に影響があったように感じます

人は複数のことに100%集中することはできません。そのため、VARからOFRを勧めるという非常に大きな判断を聞かされると、監視への集中度は下がってしまいます。その声掛けのタイミングは今後ブラッシュアップの余地はあったかもしれません

判定に関しては妥当で、大きなチャンスとなる攻撃とも言い難いため松原選手への警告は不要ですし、VARは有効に使われたと感じます

岩田選手の早期回復を祈ります。

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判定・警告◎対応△ 久保田和音選手の警告は適切であったか?

主審 上原直人さん

質問箱でいただいたシーンとなっております。質問者様ありがとうございます!

2:50秒ごろのシーンです。DAZNでは18:17のシーンになります。

群馬16久保田和音選手が相模原陣内深い位置のタッチライン際でホールディングをした後のFKのシーンです。相模原2夛田凌輔選手がFKの際に近づいてきた久保田選手にボールをわざとぶつけています。

そして、その行為を見た上原さんは久保田選手に対し、警告を提示します。

Jリーグデータサイトの警告理由を確認すると「遅延行為」で警告が出されています。妥当な判断といえると考えます。

念のため、競技規則の「プレーの再開を遅らせる」警告についての項を見てみましょう。

プレーの再開を遅らせる
主審は、次のようにプレーの再開を遅らせる競技者を警告しなければならない:
◦ スローインを行おうとしたが、急に味方競技者の1人にスローインを任せる。
◦ 交代が行われるとき、競技のフィールドから離れることを遅らせる。
◦ 過度に再開を遅らせる。
◦ 主審がプレーを停止したのち、ボールを遠くへけったりボールを手で持ち去ったり、意図的にボールに触れて対立を引き起こす。
◦ 再び行わせるため、間違った場所からフリーキックを行う。
(サッカー競技規則20/21 P.111)

この項には具体的にはないですが、プレーの再開を遅らせることで警告を出すのは適切です。それは、競技規則の第14条フリーキックの項に以下のように記載されています。

フリーキックを行うとき、相手競技者が規定の距離よりボールの近くにいる場合、アドバンテージが適用できる場合を除いてキックは再び行われる。ただし、競技者がフリーキックをすばやく行って、ボールから9.15m(10 ヤード)離れていない相手競技者がボールをインターセプトした場合、主審はプレーを続けさせる。しかしながら、相手競技者が意図的にフリーキックを妨害した場合、その競技者はプレーの再開を遅らせたことで警告されなければならない。
(サッカー競技規則20/21 P.121 太線は筆者)

以上のように、「意図的に」フリーキックを妨害した場合警告となります。

久保田選手は一度FKの位置から離れたにもかかわらず、再度近づいたことから、「意図的に」フリーキックを妨害したと捉えられると考えます。そのため警告は妥当です。

フリーキックを再開するのは行うチームに認められた権利ですので、わざと当てたとしてもそれが相手をケガさせるような程度(無謀な、過剰な力で)でない限り、その行為は警告の有無に関係ないと考えます。

競技規則にある警告理由の一つである「ドロップボール、コーナーキック、フリーキック、またはスローインでプレーが再開されるときに規定の距離を守らない」に関しては、近づいて距離を最終的に守らなかったときに適用すると考えます。例えば、FKの壁がキック前に近づくことです。

一方、問題点があったとすれば、「FKの再開を直接見えていない可能性」「リスペクトした態度で話そうとしたキャプテン大前元紀選手を受け流そうとしたこと」です。

1点目については次の争点に意識が行く中仕方ない部分もありますが、上原さんは間接視野でしか見えていなかった可能性は高いです。再開時にはいろいろ起こりうるので、しっかりと監視しておく大切さを改めて感じました。

2点目については大きな問題だと思います。警告提示後不満そうな久保田選手を制し、キャプテンとして対話を試みた大前選手に対して、上原さんは受け流すような態度でした。時間帯が3分と非常に早かったこと及び相手がキャプテンでリスペクトした態度であったことを考えると丁寧に話しても良かったと思います。

ファウルについて説明する必要はもちろんありませんが、この場面は対話をした方がマネジメント上は良かったと思います。

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以上2シーンについてでした。ご意見等お待ちしています!

本日もお読みいただき、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

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