読書感想文(44)新井素子『チグリスとユーフラテス 上』

はじめに

こんにちは、笛の人です。
読んでくださってありがとうございます。

今回読んだ本は友人のオススメです。
昨晩教えてもらったので、今日早速本屋で買って読みました。

1冊のページ数が多く、上下巻あるのでボリュームはたっぷりです。
その分内容も濃く、読書会などでじっくり議論したい本です。

テーマが多様な上に深いので、どこから切り込んでいこうか迷いますが、ともかく感想を書いていこうと思います。

感想

まず、既に書きましたが、内容がとても濃かったです。頭をフル回転させながら一気に読んだので疲れました笑。
でもとても面白かったです。まだ下巻が残っているので、これからどうなるのか続きが気になります。

さて、上巻を読み終えてザッと考えたテーマを挙げてみると、以下のような感じです。

・人生の意味
・出生の価値、不妊
・人口爆発・減少
・遺伝
・家系、血統
・他の星への移住
・機械化、合理化
・運命
・孤独

今思いついて書いているので、まだまだあると思います。これらに嫉妬や残酷さなど様々なものを織り交ぜた上で、推理小説のような謎を明らかにしていくような構成です。正直すごすぎて、作品そのものの感想の前に作者に対して敬服せざるを得ません。
好きな作家に新井素子さんを挙げる人が時々いたので気になってはいたのですが、作品は今回初めて読みました。まだこの作品は折り返し地点なわけですが、他の作品にもとても興味が湧いてきました。また近いうちに読みたいと思います。

ここで、ぱらぱらと読み返してみて何を書こうか迷っていたのですが、とにかくいくつか気になったところについて書いてみます。

「そんな莫迦な!だって、子供って、一個人の所有物じゃなくて、社会全体の宝じゃないですか!それに、理想的な人生って、子供を産む為にある筈なのに……子供を産めるだけの資質をもった人が、仕事なんかしちゃったせいで、あたら、妊娠の機会を逃しちゃったり、胎児に万一のことがあったりしたら……」

読んだことがない方は、最初はいい事言ってるなぁと思っていたはずなのに、途中から「んんん??それは聞き捨てならないぞ?」と思うのではないでしょうか。
まあ詳しくは読んでいただくとして、とにかく現代とは状況も常識も違うのですね。特に常識が違うというのは、意識して読みました。
このセリフに反感を覚える人も、「そんな莫迦な!妊娠中だっていうのに、夫が終日妻の側についていられない、そんなこと、許されるんですか!」というセリフには賛同する人も多いのではないでしょうか。これも同じ人物のセリフです。
この部分だけで、かなり深い議論ができると思うのですが、これもこの本の中で、ほんの一部分なのです。

あとはこの作品では「特権階級」というのも一つのキーワードです。
特権階級の資格はその時代によるのですが、それはまさに現実でも同じではないでしょうか?
例えばお金持ち、美男美女、家系、恋人がいるかどうか、学力、などなど、現代には様々なステータスがあると思います。
この作品の中でのステータスは、現代の価値観からすると現実的なものではありません。それでも登場人物はこのステータスに異常なほど執着します。
一歩引いてみて、自分たちはどうだろうか、と見つめ直してみると、先程挙げたようなステータスに塗れた現代を私達は生きています。恐らく1000年後の人達は我々の歴史を知った時、「なんでそんな事にこだわっていたんだろう?」と思う人も少なくないはずです。現に、例えば既に主君の為に命を捧げる価値観や頭に帽子や冠を被っていないと恥ずかしい価値観は殆ど無いのではないでしょうか。
世間体なんて言葉もありますが、これらを自分がどう捉えて、どう受け入れて、どう生きていくのか。そんな事を考えるきっかけをくれる作品でもあります。

何度も書いている気がしますが、これはほんの一部なのです。上手くこの作品の魅力を伝えられている自信はありませんが、是非色んな人に読んでみてほしいなと思います。
先に挙げたような様々なテーマのうち、最も根幹となるのは人生の意味なのかなと思いますが、これはまだ下巻が本命のような気がするので、次のnoteで書こうかなと思っています。

おわりに

『マチネの終わりに』の時に長く書き過ぎた反省を踏まえて、上巻はこのくらいで留めておこうかと思います笑。
本音を言うと、早く続きが読みたいのです笑。
下巻もまた感想を書くつもりですが、その後にもう一度改めて章毎に感想をまとめ直してもいいなと思っています。

というわけで、最後まで読んでくださってありがとうございました!

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